暑熱順化(しょねつじゅんか)は、6月・7月に始められなかった方でも、8月から取り組んで問題ありません。体が暑さに慣れるまでにかかる期間は数日から2週間程度とされており、夏の途中からでも効果は得られるためです。
杉山 制空ただし高齢者の場合、猛暑日の日中に屋外で汗をかこうとするのは危険です。入浴と室内での軽い運動を中心に、無理のない範囲で進めるのが安全であり重要です。
暑熱順化とは|体の中で起きる4つの変化
1. 汗をかき始めるタイミングが早くなる
暑さに慣れていない体は、体温がかなり上がってからでないと汗が出ません。順化が進むと、より低い体温の段階で汗をかき始めるため、体温の上昇を早い段階で抑えられるようになります。
2. 汗の量が増える
同じ体温でも出る汗の量が増えます。汗は蒸発するときに気化熱として体の熱を奪うため、汗をかきやすい体ほど熱を逃がしやすくなります。
3. 汗の塩分濃度が下がる
汗腺の働きが良くなり、汗が出ていく前に塩分(ナトリウム)を再吸収できるようになります。順化した体の汗はナトリウム濃度が30〜40%ほど低いとされ、ミネラルの喪失が減ります。塩分が失われにくくなることで、こむら返り(熱けいれん)などの症状も起こりにくくなります。またサラサラした汗になるため、蒸発しやすく体を冷やす効率も上がります。
4. 皮膚の血流が増える
皮膚の血管が広がり、体の表面から空気中へ熱を逃がしやすくなります。循環血液量も増えるため、血圧の低下やめまいも起こりにくくなります。
高齢者こそ暑熱順化が必要な3つの理由
熱中症で救急搬送される方のうち、65歳以上の高齢者が占める割合は例年およそ6割です。2025年(令和7年)の全国の搬送者は10万人を超え、そのうち65歳以上は約5万7,000人と全体の57.1%を占めました。発生場所として最も多いのは屋外ではなく「住居」で、全体の約38%にのぼります。
高齢者が熱中症になりやすいのには、加齢による体の変化が関係しています。


暑さを感じにくくなる
皮膚の温度センサーの感度が下がり、室温が高くても「暑い」と自覚しにくくなります。本人は快適だと感じていても、室温が33℃を超えているというケースは珍しくありません。
のどの渇きを感じにくくなる
口渇感が鈍くなるため、体が水分を必要としていても飲もうと思わなくなります。加えて、高齢者は体内の水分量が若い頃より少なく、脱水が進みやすい状態にあります。
汗をかく力そのものが落ちる
汗腺の数と働きが低下し、発汗が始まるまでの時間も遅くなります。つまり「暑さに気づきにくく、気づいても水分を摂らず、汗による体温調節も効きにくい」という状態になりやすいのです。
だからこそ、症状が出てから対応するのではなく、汗をかける体をあらかじめ作っておくことが大切になるのです。
夏の途中から「暑熱順化のやり直し」が必要になるタイミング
- 猛暑が続き、1週間以上ほとんど外に出ていないとき
- 雨や曇りで涼しい日が数日続いた後、再び気温が急上昇するとき
- 入院・入所やショートステイから自宅に戻ったとき
- お盆に涼しい場所へ帰省したり、旅行から戻ったりしたとき
- 9月の残暑がぶり返したとき
特に、涼しい日が続いた直後に気温が急上昇する日は、熱中症の搬送者が急増しやすいタイミングです。天気予報で数日先の気温上昇がわかったら、その前から準備を始めておくと安心です。
高齢者が安全にできる暑熱順化の方法5つ
1. 入浴(最も安全で続けやすい方法)
湯船に浸かって軽く汗ばむ習慣が、高齢者にとって最も取り組みやすい方法です。シャワーだけで済ませている方は、まず湯船に浸かる日を増やすところから始めてください。
- 湯温は39〜40℃程度のぬるめにする
- 10〜15分を目安にする(のぼせる前に上がる)
- 息苦しさを感じる場合は、みぞおちまでの半身浴にする
- 入浴の前後にコップ1杯ずつ水分を摂る
- 週に4〜5日を目安に続ける



熱すぎるお湯や長すぎる入浴は、かえって血圧の急変や入浴中の熱中症につながります。「じんわり汗ばむ」程度で十分です。
2. 室内での軽い運動
エアコンをつけたまま、あるいは風通しを確保したうえで、次のような運動を行います。
- ラジオ体操(1回3分程度)
- 椅子に座ったままの足踏み、脚上げ
- ストレッチ、スクワット、かかと上げ
- 家の中の階段や段差の上り下り



「ややきつい」と感じる強度で1回15〜30分、週に5日程度が目安とされていますが、高齢者の場合はまず「5分から」で構いません。会話ができる程度の強さを守ってください。
3. 朝夕の涼しい時間帯の散歩
屋外で体を動かす場合は、日中を避けて早朝や夕方以降にします。1回20〜30分程度のウォーキングから始め、帽子と飲み物を必ず持参してください。熱中症警戒アラートが出ている日は、屋外での運動は中止しましょう。



ニコニコキッチン宝塚西宮店のご利用者様の多くが、朝のウオーキングで暑熱純化を整えています。1日30分、週5回は歩いているそうです。
4. 家事で汗ばむ
掃除機がけ、洗濯物干し、庭の水やりなど、日常の家事も立派な暑さ慣らしになります。運動の時間を別に取らなくても、家事の合間に軽く汗をかければ十分です。
5. エアコンは使いながらで構わない
「エアコンを使うと暑熱順化できない」と考えて冷房を我慢する方がいますが、これは危険です。室温が28℃を超えないように冷房を使いつつ、入浴や運動の時間に汗をかく、という組み合わせで問題ありません。冷房を我慢することは暑熱順化ではなく、熱中症のリスクを高めるだけです。


高齢者の暑熱順化でやってはいけないこと
- 猛暑日の日中に屋外で運動する
- 「汗をかくため」に冷房を切って室内で我慢する
- 水分を摂らずに入浴・運動する
- 体調が優れない日に無理に続ける
- 熱中症警戒アラート・特別警戒アラートが出ている日に屋外で行う
- 心臓病、高血圧、糖尿病、腎臓病などの持病がある方が自己判断で運動量を増やす
持病がある方や、利尿薬・降圧薬を服用中の方は、運動や入浴の内容について事前に主治医へ相談してください。水分摂取量に制限が出ている場合もあります。
暑熱順化と合わせて行いたい水分・塩分・食事のとり方
汗をかく習慣をつくると、当然ながら失われる水分も増えます。暑さ慣らしと水分補給はセットで考えてください。
水分は1日1.2〜1.5Lを目安にこまめに
のどが渇いてからでは遅いため、時間を決めて飲む習慣が有効です。起床時、朝食時、10時、昼食時、15時、夕食時、入浴前後、就寝前と、コップ1杯ずつを積み重ねると自然に目標量に届きます。カフェインを含まない麦茶やほうじ茶が飲みやすい選択肢です。


大量に汗をかいた日は塩分も補う
普段の食事がとれていれば、水やお茶で十分です。ただし大量に発汗した日や、食欲が落ちて食事量が減っている日は、経口補水液や塩分を含む飲料が役立ちます。スポーツドリンクと経口補水液の使い分けについては熱中症にポカリはだめ?で解説しています。


食事が最大の水分・塩分源
見落とされがちですが、1日に摂る水分の3割前後は食事から得ています。夏に食欲が落ちて食事量が減ると、水分も塩分もタンパク質も同時に不足し、脱水と低栄養が重なって熱中症のリスクが一気に高まります。
【高齢者の暑熱順化】よくある質問
Q. 何日くらいで効果が出ますか。
個人差はありますが、数日から2週間程度とされています。高齢者や持病のある方はより時間がかかる傾向があるため、2週間を目安に考えてください。
Q. サウナでも暑熱順化できますか。
発汗という点では効果がありますが、高齢者には心臓や血圧への負担が大きく、脱水も進みやすいため積極的にはおすすめしません。湯船での入浴で十分です。
Q. 要介護で外出も入浴も難しい場合はどうすればよいですか。
無理に暑熱順化を目指すよりも、室温管理と水分・食事の確保を優先してください。エアコンで室温28℃以下を保ち、決まった時間に水分を摂り、食事量を落とさないことが最優先の対策になります。
Q. 汗をあまりかかない体質でも意味はありますか。
あります。皮膚血流の増加や循環血液量の増加といった変化は、発汗量が少ない方にも起こります。
Q. 一度やめたらまた最初からやり直しですか。
完全にゼロに戻るわけではありませんが、数日離れると効果は薄れます。夏の間は途切れさせず、習慣として続けるのが理想です。
食事から体を守るという選択肢
暑さに強い体をつくるうえで、毎日の食事は運動や入浴と同じくらい重要です。しかし夏場は、買い物に出るだけで体力を消耗し、火を使う調理を避けたくなり、結果として食事が簡素になりがちです。



配達は手渡しを基本としており、お届けの際にお元気かどうかの確認も行っています。夏場は特に、室内で体調を崩された方の早期発見につながるケースもあります。ご家族が離れて暮らしている場合の見守りとしてもご利用いただけます。無料試食も承っておりますので、まずはお気軽にご相談ください。


《総括》高齢者の暑熱順化
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