結論:餅だけ気をつけても、高齢者の窒息は防げません
高齢者の喉に詰まりやすい食べ物について、国の公的データから分かることは次の3点です。
以下、ランキングの根拠、食べ物ごとの注意点、もし詰まったときの対処まで順に解説します。
高齢者の窒息事故はどれくらい起きているのか
食べ物による窒息で亡くなる方の9割以上は65歳以上です。
| 項目 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| 「気道閉塞を生じた食物の誤えん」による死亡者数(令和6年) | 4,383人 | 厚生労働省「人口動態統計」(消費者庁 2025年12月公表資料) |
| うち65歳以上 | 3,992人(約91%) | 同上 |
| 65歳以上の「不慮の窒息」による死亡者数(令和5年) | 7,779人(うち食物の誤嚥4,215人) | 消費者庁 |
| 65歳以上の「誤嚥等の不慮の窒息」と「交通事故」の死亡者数(平成28年) | 窒息8,493人/交通事故3,061人 | 消費者庁(人口動態調査を集計) |
| 高齢者の「ものが詰まる等」事故のうち、自宅など住まいで起きた割合 | 91.1% | 消費者庁(東京消防庁 救急搬送データ、平成28年) |
高齢者にとって、食べ物による窒息は交通事故よりも身近な命の危険です。しかも9割以上が自宅で起きています。施設や病院の話ではなく、ふだんの食卓の話だということです。
年齢が上がるほど、事故も重症度も増える
東京消防庁管内で、食品が詰まって救急搬送された高齢者を人口10万人あたりで見ると、年齢とともに急増します。
| 年齢 | 人口10万人あたりの救急搬送者数(平成28年) |
|---|---|
| 65〜69歳 | 8.9人 |
| 70〜74歳 | 17.7人 |
| 75〜79歳 | 34.7人 |
| 80〜84歳 | 59.5人 |
| 85〜89歳 | 106.8人 |
| 90歳以上 | 191.4人 |
90歳以上は65〜69歳の約21倍です。入院が必要な「中等症」以上の割合も、65〜69歳の約36%から、90歳以上では約7割まで上がります。
高齢者が喉に詰まりやすい食べ物ランキング
「詰まりやすさ」には2つの見方があります。1回食べたときの危険度と、実際に起きている事故の件数です。両方を見ることで、何にどう気をつければよいかがはっきりします。
【ランキング①】一口あたりの窒息事故頻度(食品安全委員会)
| 順位 | 食品(群) | 一口あたり窒息事故頻度(1億口あたり) |
|---|---|---|
| 1位 | 餅 | 6.8〜7.6 |
| 2位 | ミニカップゼリー | 2.3〜5.9 |
| 3位 | 飴類 | 1.0〜2.7 |
| 4位 | パン | 0.11〜0.25 |
| 5位 | 肉類 | 0.074〜0.15 |
| 6位 | 魚介類 | 0.055〜0.11 |
| 7位 | 果実類 | 0.053〜0.11 |
| 8位 | 米飯類 | 0.046〜0.093 |
【ランキング②】救急搬送が多い食べ物(東京消防庁・65歳以上)
次に、実際に救急車で運ばれた高齢者の原因を見ます。消費者庁が東京消防庁の救急搬送データ(平成28年、65歳以上)を集計した結果です。
| 順位 | 原因となった食品 | 搬送者数 |
|---|---|---|
| 1位 | おかゆ類 | 110人 |
| 2位 | 餅 | 88人 |
| 3位 | ご飯 | 79人 |
| 4位 | 肉 | 76人 |
※このほか、食品であることは分かるが種類が特定できない「食物」が424人あります。
重症化しやすい食べ物と、高齢者でだけ事故が起きている食べ物
内閣府消費者委員会の資料(2010年)では、東京消防庁の救急搬送事例のうち原因食品が特定できた2,414件を分析しています。ここから、次の2点が分かります。
若い人ならまず詰まらせない、やわらかい食べ物ばかりです。これらの事故は、食べ物の危険性よりも、かむ力や飲み込む力の低下という「食べる人の側」の変化によって起きていると考えられます。
一方、こんにゃく入りゼリー、里芋、パン、餅、こんにゃく、団子、ゼリーなどは、60歳未満でも事故が起きています。食べ物そのものに詰まりやすい性質があるグループです。
3つのデータを重ねた総合ランキングTOP10
上の3つのデータ(一口あたりの危険度・搬送件数・重症化のしやすさ)と、実際に喉から取り出された食品の例をもとに、家庭で優先して気をつけたい順に整理しました。
| 順位 | 食べ物 | 詰まりやすい理由 | 家庭でできる対策 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 餅 | 一口あたりの危険度が突出して高い。冷めると硬くなり、のどに貼りつく。重症化しやすい | 小さく切る。先に汁物を飲む。食べ慣れない正月は特に見守る |
| 2位 | ご飯・おかゆ | 1回の危険度は低いが毎日食べるため件数が最多級。口の中でまとまりにくいとばらけて残る | 一口を少なく。水分と交互に。おかゆは水っぽすぎないものに |
| 3位 | パン | 一口あたりの危険度で4位。唾液を吸ってのどに貼りつく | 牛乳やスープに浸す。小さくちぎる。耳は外す |
| 4位 | 肉 | かみ切りにくく、かたまりのまま飲み込みやすい。ささみが喉から摘出された例もある | 薄切り・ひき肉をあんでとじる。筋を切る。煮込んでやわらかく |
| 5位 | ミニカップゼリー・こんにゃく入りゼリー | 吸い込んで食べる形状。弾力があり、気道にぴったりはまると取れにくい | 高齢者には避けるか、カップから出してスプーンで小さくして食べる |
| 6位 | 団子・寿司 | 餅と同じく粘りがあり、搬送された人の4割以上が重症以上 | 団子は小さく切る。寿司は一口で食べずに分ける |
| 7位 | 飴 | 丸くつるっとしていて、なめている途中に吸い込みやすい | 横になって食べない。会話しながら食べない |
| 8位 | 魚介類(はんぺん・ちくわ・いか・たこ) | 弾力があり、かみ切れないまま飲み込む。ほぼ丸ごとのはんぺんが摘出された例もある | 薄く切る。いか・たこは細かく刻むより避けるほうが無難な場合も |
| 9位 | 果物(ぶどう・りんご・柿など) | 丸いもの、硬いもの、皮が残るもの | ぶどうは皮と種を取り半分に。りんごは薄切りか煮る |
| 10位 | 豆腐・プリン・ヨーグルト・カステラ・そうめん・油揚げ・干し柿 | 70歳以上でだけ事故が起きている。やわらかくても、かむ力と飲み込む力が落ちると詰まる | 「やわらかいから安心」と思わず、一口量と見守りを徹底する |
高齢者が喉に詰まりやすい食べ物の5つの共通点
ランキングの食べ物を性質で分けると、次の5タイプに整理できます。知らない食べ物でも、このどれかに当てはまれば注意が必要です。
| タイプ | 代表的な食べ物 | 危険な理由 |
|---|---|---|
| 粘る・貼りつく | 餅、団子、パン、焼きのり、おはぎ | のどや口の粘膜に貼りつき、はがれにくい |
| 弾力があってかみ切れない | こんにゃく、こんにゃくゼリー、肉、いか、たこ、はんぺん、かまぼこ | かたまりのまま飲み込んでしまう |
| 丸くてつるっとしている | 飴、ぶどう、ミニトマト、豆、うずらの卵、里芋 | かむ前にのどへ滑り込む |
| ぱさぱさ・ばらける | カステラ、ゆで卵の黄身、焼き魚、ひき肉のそぼろ、きざみ食 | 口の中でまとまらず、のどに残る |
| 水分と固形が分かれる | 汁物の具、高野豆腐、すいか、みかん | 水分だけ先にのどへ流れ、固形物が遅れて入る |
「窒息」と「誤嚥(ごえん)」は似ていますが別の事故です。窒息は食べ物で気道がふさがり息ができなくなること、誤嚥は食べ物や水分が気管に入ってしまうことです。誤嚥はむせや、後日の誤嚥性肺炎につながります。上の表の「ばらける」「水分と固形が分かれる」タイプは、窒息だけでなく誤嚥の原因にもなります。
なぜ高齢になると喉に詰まりやすくなるのか
消費者庁の資料では、窒息事故を起こした高齢者の喉から取り出された食品は、ほとんどかまれていないことが分かったとされています。加齢によって、口とのどに次のような変化が起きるためです。
1. かむ力が落ちる
2. 唾液が減る
3. 舌の力とのどの感覚が落ちる
4. のどの「ふた」が閉まりきらず、咳の力も弱くなる
食べ物ではなく「食べる人」の要因が大きい
特に注意したい人のチェックリスト
次の項目に当てはまる数が多いほど、窒息のリスクは高くなります。
- 食事中や食後にむせることが増えた
- 食事に30分以上かかるようになった
- 食後に声がガラガラする、痰がからむ
- 奥歯が少ない、入れ歯が合っていない
- 口が乾きやすい
- 認知症がある、または物忘れが増えた
- 脳梗塞など脳の病気をしたことがある
- 急いで食べる、一口が大きい
- 一人で食事をすることが多い
- 原因のはっきりしない発熱をくり返す
むせや食後の声の変化、原因不明の発熱が続く場合は、飲み込む力が落ちているサインかもしれません。かかりつけ医や歯科医に相談してください。
高齢者が喉に詰まらせないための食べ方7つ
1. 食べる前に、お茶や汁物でのどを潤す
2. 調理の段階で小さく切っておく
3. 一口の量を減らす
4. よくかみ、飲み込んでから次を口に入れる
5. 食べることに集中する
6. 姿勢を整える
7. 周りの人が見守る
食べ物別の安全な出し方
| 食べ物 | 出し方の工夫 |
|---|---|
| 餅 | 1cm角程度に小さく切る。雑煮なら汁と一緒に。冷めると硬くなるので温かいうちに少しずつ |
| ご飯 | やわらかめに炊く。一口を少なく。汁物と交互に |
| おかゆ | 水分と米粒が分離しないよう、とろみのあるものに |
| パン | 耳を外し、牛乳やスープに浸す。フレンチトーストやパン粥にする |
| 肉 | 薄切りや、ひき肉を使った料理に。あんでとじる。煮込んでやわらかく |
| 魚 | 焼き魚はほぐして、あんかけにする。煮魚のほうがまとまりやすい |
| こんにゃく | 高齢者向けには避けるか、薄く小さく切る |
| ゼリー | こんにゃく入りの製品は避ける。カップから吸い込ませず、スプーンで少しずつ |
| ぶどう・ミニトマト | 皮をむき、半分〜4分の1に切る |
| りんご・柿 | 薄切りにするか、煮てやわらかくする |
| 汁物の具 | 具を小さくし、汁にとろみをつける |
やわらかい食事にも落とし穴があります
「やわらかくすれば安心」とは限りません。
飲み込む力に不安がある方は、やわらかさだけでなく「口の中でまとまるか」「のどを通りやすいか」まで考えて作られた食事を選ぶことが大切です。
もし喉に詰まってしまったら
窒息のサインを見逃さない
すぐに119番、同時に異物を取り除く
腹部突き上げ法
- 本人の後ろに回り、腰のあたりに腕を回します。
- 片方の手でへその位置を確認します。
- もう片方の手で握りこぶしを作り、親指側をへその少し上、みぞおちより十分下に当てます。
- へそを確認した手でこぶしを握り、すばやく手前上方に向かって突き上げます。
杉山 制空可能であれば腹部突き上げ法を優先し、効果がなければもう一方を試します。妊婦には腹部突き上げ法は行いません。


意識がなくなったら
取れたあとも受診を
応急手当は、いざというときに体が動くかどうかがすべてです。お住まいの地域の消防本部では救命講習が開かれていますので、ご家族で一度受講しておくと安心です。
宝塚市・西宮市で食事や飲み込みの不安を相談できる先
飲み込む力が落ちてきた、一人暮らしの親の食事が心配、という場合は、まず地域包括支援センターに相談してください。介護サービスや配食サービス、歯科や医療機関への橋渡しをしてくれる公的な相談窓口です。
| 市 | 相談窓口 |
|---|---|
| 宝塚市 | 地域包括支援センター(市内7か所) |
| 西宮市 | 高齢者あんしん窓口(地域包括支援センター) |
すでにケアマネジャーがついている方は、担当のケアマネジャーに「最近むせることが増えた」「食事に時間がかかる」と具体的に伝えるのが近道です。
ニコニコキッチン宝塚西宮店の取り組み
ニコニコキッチン宝塚西宮店は、宝塚市・西宮市で高齢者向けのお弁当をお届けしている配食サービスです。「弁当ではなく、安心と安全を届ける」を理念にしています。
飲み込む力に合わせた食事を、1個から


手渡しで、食事の様子にも目を配ります


利用しやすい仕組み
お問い合わせ:0797-72-2535(ニコニコキッチン宝塚西宮店)


【高齢者が喉に詰まりやすい食べ物】よくある質問
Q1. 高齢の親に、もう餅は食べさせないほうがいいですか?
一律に禁止する必要はありません。餅は一口あたりの危険度が最も高い食品ですが、小さく切る、先に汁物を飲む、少しずつよくかむ、そばで見守る、という条件をそろえればリスクは下げられます。ただし、むせが多い方、認知症で食べるペースの調整が難しい方、一人で食事をする方は、餅を控えるか、介護用の餅風食品に置き換えることも検討してください。
Q2. おかゆは安全な食べ物ではないのですか?
おかゆは一口あたりの危険度は低い食べ物です。それでも搬送件数が多いのは、飲み込む力が落ちた方ほどおかゆを食べる機会が多く、毎日何口も口にするためです。水分と米粒が分かれたさらさらのおかゆは、水分が先にのどへ流れてむせることがあります。とろみのある状態にし、一口を少なくしてください。
Q3. ゼリーは飲み込みやすいと聞きました。窒息ランキングに入っているのはなぜですか?
ランキングに入っているのは、主にカップから吸い込んで食べるミニカップゼリーや、こんにゃく入りのゼリーです。介護用に硬さや付着性を調整した嚥下調整用ゼリーとは性質が違います。お菓子のゼリーを高齢者に出す場合は、カップから吸わせず、スプーンで小さくして食べてもらってください。
Q4. 喉に詰まったとき、水を飲ませれば流れますか?
水を飲ませて流し込むのはおすすめできません。息ができない状態では水も飲めず、かえって気道に入るおそれがあります。すぐに119番通報し、腹部突き上げ法や背部叩打法で異物を取り除いてください。
Q5. 詰まったものが取れて本人も元気そうです。病院に行かなくても大丈夫ですか?
腹部突き上げ法を行った場合は、内臓を傷めている可能性があるため受診してください。また、食べ物の一部が気管に入っていると、数日たってから誤嚥性肺炎を起こすことがあります。発熱、咳、痰、元気がないなどの変化があれば、早めに受診してください。
《総括》高齢者が喉に詰まりやすい食べ物
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