麦茶は肝臓に悪い?噂の出どころ4つと、高齢者が本当に注意すべきポイント

麦茶は肝臓に悪い
杉山 制空

「麦茶は肝臓に悪いらしい」という話を見聞きして、毎日飲んでいるだけに不安になった方もいらっしゃるのではないでしょうか・・・特に健康診断で肝機能の数値を指摘された方や、ご高齢のご家族に麦茶を用意しているご家庭では、気になるところだと思います。

先に結論をお伝えします。

通常の飲み方で麦茶が肝臓を傷めるという医学的根拠は、現時点で確認されていません

噂の出どころは「カビ毒」「アクリルアミド」「お茶のサプリによる肝障害との混同」「利尿作用の俗説」という4つの誤解にほぼ集約されます

高齢者が麦茶で気をつけるべきは肝臓ではなく、飲みすぎによる塩分バランスの崩れ・体の冷え・作り置きの傷みです

以下で、それぞれ詳しく解説します。

目次

麦茶が肝臓に悪いと言えない理由

麦茶の原料は、焙煎した大麦と水だけです。カフェイン、アルコール、糖分、添加物のいずれも基本的に含まれていません。

肝臓に負担がかかる代表的な要因は、アルコール、一部の医薬品、過剰な糖質・脂質、ウイルス性肝炎などです。麦茶にはこれらに当たる成分がありません。大麦そのものに肝細胞を傷つける毒性成分があるという報告も見当たりません。

つまり、「麦茶を飲むと肝臓が悪くなる」という因果関係を示した研究や公的機関の注意喚起は存在しない、というのが現在の状況です。

「麦茶が肝臓に悪い」と言われる4つの理由と、本当のところ

理由1:カビ毒(マイコトキシン)への不安

大麦を含む穀物には、保管状態が悪いとカビが生え、カビ毒が発生することがあります。カビ毒の中には肝臓に影響するものも知られているため、「大麦が原料の麦茶も危ないのでは」という連想が生まれたと考えられます。

ただし、日本で流通する食品用の穀物にはカビ毒の基準値が設けられ、メーカーによる検査も行われています。市販の麦茶パックを正しく保管して飲む限り、通常は問題になりません。

家庭側で気をつけたいのは次の2点です。

  • 麦茶パックは開封後に湿気らせない(密閉して冷暗所または冷蔵庫で保管)
  • 見た目や匂いに異常があるパックは使わない

理由2:アクリルアミドが含まれること

これは事実に基づいた話です。アクリルアミドは、食材を120℃以上で加熱したときにできる物質で、農林水産省も焙煎したコーヒー豆やほうじ茶葉、麦茶用の煎り麦に含まれると説明しています。国際的には発がん性の可能性が検討されている物質です。

ただし、量の感覚が大切です。農林水産省の調査では、茶葉の状態での含有量に比べ、実際に飲む浸出液に含まれる量は大幅に少なくなります。麦茶の浸出液から検出された量は1グラムあたり数ナノグラム程度で、缶飲料を数本飲んでスナック菓子100gと同程度、という水準です。

アクリルアミド

肝臓への直接的な毒性が問題になっているわけでもありません。気になる方は、次の点を意識すれば十分です。

  • 麦茶を必要以上に濃く作らない(濃くするほど溶け出す量は増えます)
  • パックの分量表示どおりに作る

理由3:お茶のサプリメントによる肝障害との混同

海外では、緑茶抽出物を高濃度に濃縮したサプリメントで肝機能障害が報告された例があり、注意喚起も行われてきました。この情報が「お茶は肝臓に悪い」という形で単純化されて広まり、麦茶にまで及んだ可能性があります。

これはあくまで「濃縮された成分を錠剤で大量に摂った場合」の話であり、普通にお茶を飲むこととは別です。さらに麦茶にはそのカテキン類自体がほとんど含まれていません。

濃縮したサプリメント

理由4:「利尿作用が内臓に負担をかける」という俗説

麦茶にはカリウムが含まれ、軽い利尿作用があります。ここから「内臓に負担がかかる」と説明されることがありますが、利尿を担うのは腎臓であり、肝臓の話ではありません。またカフェインを含まないため、緑茶やコーヒーより水分補給には向いています。

飲み物と肝臓への負担の比較

飲み物肝臓への負担補足
アルコール飲料大きい分解の大半を肝臓が担う
加糖飲料・清涼飲料水中〜大果糖の摂りすぎは脂肪肝と関連が指摘される
高濃度カテキンのサプリ報告あり濃縮された成分を大量摂取した場合
緑茶・コーヒー(飲料)小さい適量ならむしろ良い報告もある
麦茶ほぼ問題なしノンカフェイン・無糖・無アルコール

むしろ肝臓にプラスに働く場面もあります

麦茶は「悪くない」だけでなく、置き換えの飲み物として役立つ場面があります。

1つめは、甘い飲み物の代わりになること。 脂肪肝の背景として、糖分の多い清涼飲料水の習慣的な摂取が指摘されています。ジュースやスポーツドリンクを日常的に飲んでいる方が無糖の麦茶に切り替えれば、その分の糖分をまるごと減らせます。

2つめは、ノンカフェインで水分補給に使いやすいこと。 夜間でも飲みやすく、脱水を避けやすくなります。

3つめは、ポリフェノールを含むこと。 麦茶にはカテコールやゲンチシン酸といったポリフェノールが含まれ、抗酸化作用が報告されています。また焙煎で生じる香り成分アルキルピラジンについて、飲用後に血液の流動性が高まったとする報告もあります。ただしこちらは被験者数の少ない研究段階の報告で、「麦茶を飲めば血液がサラサラになる」と断定できる段階ではない点は正しく押さえておきましょう。

高齢者が麦茶で本当に注意したい5つのこと

肝臓よりも、実際に高齢のご家族で問題になりやすいのは次の点です。

1. 飲みすぎによる低ナトリウム血症(水中毒) 汗をかくと水分と一緒にナトリウムも失われます。麦茶だけを大量に飲むと血液中のナトリウム濃度が薄まり、頭痛、吐き気、ふらつき、意識のもうろうといった症状が出ることがあります。大量に汗をかいた後は、経口補水液や食事からの塩分も合わせてください。

2. 冷たい麦茶による食欲低下 冷蔵庫から出したての麦茶を食前に大量に飲むと、胃が冷えて食事量が落ちます。夏場の低栄養につながるため、食事の前後は常温がおすすめです。

3. 作り置きの傷み 煮出した麦茶は無糖でも細菌が増えます。粗熱をとったら速やかに冷蔵し、2〜3日以内に飲み切ってください。常温で一晩放置した麦茶は処分しましょう。夏場の食中毒は高齢者ほど重症化します。

作り置き麦茶

4. 夜間頻尿とその反動 利尿作用で夜中にトイレに起きるのを嫌い、水分自体を控えてしまう方がいます。これは脱水の入口です。夕方以降は量を調整し、日中にしっかり飲む形に組み替えてください。

5. 腎機能が低下している場合のカリウム 腎臓の病気で医師からカリウム制限を受けている方は、麦茶に限らず飲み物の種類と量を主治医に確認してください。

あわせて読みたい
麦茶の飲み過ぎにデメリットはある?高齢者が注意したい5つのポイント 麦茶はノンカフェインで体にやさしく、夏の水分補給の定番です。ただし「体に良いから」と一度に大量に飲むと、体の冷え・水中毒(低ナトリウム血症)・胃腸の不調・頻...

肝機能の数値が気になっている方へ

健康診断でAST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPなどを指摘された場合、原因として多いのは飲酒習慣、肥満や脂肪肝、服用中の薬、ウイルス性肝炎などです。麦茶をやめても数値は変わりません。

次のような場合は、自己判断せず医療機関に相談してください。

  • 肝機能の数値の指摘が続いている
  • 体のだるさが長く続く
  • 白目や皮膚が黄色っぽい
  • 尿の色が濃い茶色になった
  • 食欲不振や体重減少がある
杉山 制空

服薬中の方は、飲み物の種類よりも薬との飲み合わせのほうが重要です。かかりつけ医や薬剤師に確認しましょう。

【麦茶は肝臓に悪い?】よくある質問

Q. 麦茶を毎日飲んでも肝臓に問題はありませんか。

常識的な量であれば問題ありません。1日1〜1.5リットル程度を目安に、食事や他の飲み物と合わせて調整してください。

Q. 濃い麦茶は体に悪いですか。

極端に濃くすると、焙煎由来の成分が溶け出す量も増えます。パック記載の分量どおりに作るのが無難です。

Q. ペットボトルと煮出し、どちらが安全ですか。

どちらも安全性に大きな差はありません。ペットボトルは開封後の管理、煮出しは冷蔵保存と早めの飲み切りがポイントです。

Q. 肝臓の薬を飲んでいますが、麦茶で飲んでもよいですか。

薬は原則として水またはぬるま湯で服用してください。これは麦茶が有害だからではなく、薬全般の基本ルールです。

Q. 肝臓によい飲み物はありますか。

特定の飲み物で肝臓が良くなるという確かな根拠はありません。まずは飲酒を控え、糖分の多い飲料を無糖の飲み物に置き換えることが現実的です。

《総括》麦茶は肝臓に悪くない

「麦茶は肝臓に悪い」という噂に、医学的な裏づけはありません。カビ毒やアクリルアミドといった断片的な情報が独り歩きし、緑茶サプリの肝障害の話と混ざって広まったものと考えられます。

杉山 制空

麦茶はノンカフェインで糖分を含まず、夏の水分補給に適した飲み物です。肝臓を心配して飲むのをやめるより、飲みすぎ・冷やしすぎ・作り置きの傷みという現実的な3点に気を配りながら、日々の水分補給に活用していただければと思います・・・ということで、今年の夏も美味しい麦茶をたくさん飲んで乗り切りましょう!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次