「キャベツ1玉1,000円」というニュースが連日報道され、家計を預かる多くの人が頭を抱えています。
キャベツの高騰理由は、一般的には「天候不良が原因」と説明されていますが、実はそれだけではないのです・・・。
なぜ農家は、簡単な灌水作業だけで防げたはずの不作を「放置」してしまったのか・・・その背景には、驚くべき農業の構造的な歪みが存在していました。
実は農家は長年、キャベツを消費者需要の2倍もの量を生産し、その半分を廃棄するという異常な状況を強いられてきたのです。
そして2025年、ついに限界を迎えた農家たちが、必要な管理作業さえも放棄するという事態に発展しています。
本記事では、キャベツの値段が高くなる衝撃の理由と、私たち消費者に突きつけられた選択について、詳しく解説していきます。
キャベツ高騰の本当の理由
天候不良の影響だけではない
2024年の異常気象は、確かにキャベツ生産に大きな打撃を与えました。
7-8月の記録的な猛暑により、定植したばかりの若苗の多くが枯死したのも事実です。さらに12月の少雨により、生育中のキャベツの生長も阻害されました。
しかし、これは表面的な理由に過ぎません。
実際には、適切な灌水設備があれば十分に対応可能な問題でした。にもかかわらず、多くの農家がこの基本的な対策を実施しなかったのです。なぜでしょう?
農家の生産意欲低下
問題の本質は、生産者の意欲が著しく低下していることにあります。
従来、キャベツ1玉の農家出荷価格はわずか5〜10円なのです。これは生産コストの10分の1にも満たない価格です。
このような採算性の悪化により、必要な設備投資や栽培管理が放棄される事態となりました。
隠れた構造的問題
さらに深刻なのが、キャベツ生産における構造的な歪みです。
農家は通常、市場の需要量の約2倍を生産することを求められています。これは天候不良や災害時のリスク対策として慣習化されてきましたが、その代償として生産量の約半分を廃棄せざるを得ません。
この廃棄コストは全て農家が負担し、さらには市場価格の暴落を引き起こす要因にもなっています。
【キャベツが高騰の理由】農家が直面している課題
生産コストと販売価格の矛盾
キャベツ生産における深刻な問題の一つは、生産コストと販売価格の著しい乖離です。
1玉のキャベツを生産するには、種苗費、肥料費、農薬費、水道光熱費など、最低でも100円以上のコストがかかります。しかし、市場での販売価格は1玉5〜10円という極端な安値が常態化しており、生産コストすら回収できない状況が続いています。
農家が持続可能な経営を行うための適正価格は1玉約350円と試算されていますが、市場価格との差が大きすぎる状況です。
キャベツの値段、今日
在庫リスクの負担
農家は消費者需要の約2倍の量を生産することを余儀なくされています。
これは天候不良や災害時のリスク対策として慣習化されてきましたが、結果として生産量の約半分を廃棄せざるを得ない状況を生んでいます。
この廃棄コストは全て農家が負担しており、さらに市場価格の暴落を引き起こす要因にもなっています。天候が良好な年は大量の廃棄を強いられ、その処分費用も農家の負担となっているのです。
農家における経営継続の困難さ
また、灌水設備など必要な設備投資も、収益性の低さから実施できない状況が続いています。
2024年の少雨時には、灌水設備があれば収量は確保できたにもかかわらず、赤字を増やすことを恐れて設備を使用しないという選択をする農家も出てきています。
このように、農家は経営継続の危機に直面しているのです。
キャベツ輸入の依存度と問題点
それでは、キャベツを海外から輸入すれば良いのでは?と思われるかもしれませんが、そのような簡単なことではないようです。
海外産キャベツの価格動向
中国からの輸入量は2024年から前年比1.7倍に増加しています。
しかし、予想に反して輸入価格は日本の農家の出荷価格よりも高くなっており、キロあたり650円という水準で推移しています。
品質と安全性の懸念
輸入キャベツには以下のような問題があります。
- 長距離輸送による品質劣化と鮮度低下のリスク
- 日本と異なる農薬規制下での栽培による安全性への不安
- 生産履歴の追跡が困難
- 問題発生時の対応の遅れ
これらの課題は、消費者の食の安全を脅かす可能性があります。
食料安全保障への影響
国内の生産基盤が弱体化する中、輸入依存度の上昇は新たな問題を引き起こしています。
- 国内生産能力の更なる低下
- 地政学的リスクによる供給不安
- 気候変動による世界的な生産量の不安定化
- 為替変動による価格変動リスク
このまま輸入依存を強めれば、将来的な食料安全保障に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
【キャベツ高騰の理由】今後の価格見通しと対策
キャベツの価格高騰について、今後の見通しと対策を説明します。
2025年の春には一時的に価格が落ち着く可能性があるものの、年間を通じて複数回の価格高騰が予想されています。
中長期的には、キャベツ1玉350円程度が標準価格として定着していく可能性が高く、これは農家が持続可能な経営を行うための適正価格とされています。
消費者ができる対応としては、まず家庭菜園の活用が挙げられます。
これまでは趣味の領域でしたが、キャベツ1玉が350円から1,000円という時代になり、家庭菜園が現実的な選択肢となってきました。
プランターでの小規模栽培から始めることで、無農薬野菜の自給自足が可能となり、中には副収入源として活用している例も出てきています。
日本政府による政策面では、農家への支援として、灌水設備などのインフラ整備支援や、適正価格での買い取り制度の確立が求められています。
さらに、在庫リスクの公平な分担など、流通システムの改革も必要です。
このように、キャベツ高騰問題の解決には、生産者、消費者、そして政策面からの総合的なアプローチが必要とされているのです。