【卵の値上がり2025】卵価格高騰の理由!その裏にある構造的な問題とは

卵

スーパーで卵を手に取り、ため息をつく人が増えています・・・。

かつては「安価で栄養価の高い食材」として知られた卵が、今では1パック300円を超えることも珍しくありません。

2025年2月現在、この価格高騰に終わりは見えず、消費者の家計を圧迫し続けています。しかし、この価格上昇には、単なる物価上昇以上の深刻な問題が隠されています。

杉山誠空
養鶏農家の激減(45万戸から1,800戸へ)、劣悪な飼育環境、アニマルウェルフェアの問題など、日本の養鶏業界が抱える構造的な課題が、ついに表面化してきたのです。

本記事では、卵価格高騰の真相と、その背後にある構造的問題に迫ります。

卵価格高騰の理由、直接的要因

飼料価格の上昇

現在の卵価格高騰の最大の要因は、飼料価格の急激な上昇です。

特にウクライナ戦争の影響により、飼料価格は2.5倍以上に跳ね上がっています。

杉山誠空
鶏の餌となる穀物の多くを輸入に依存している日本では、国際情勢の影響を直接受けやすい構造となっています。さらに、円安の進行により輸入コストが増加し、生産者の経営を圧迫しています。代替飼料の開発も進められていますが、品質と価格の面で既存の飼料に代わるものは見つかっていません。

鳥インフルエンザによる供給減少

近年、鳥インフルエンザの発生が相次ぎ、大規模農場での殺処分が生産量減少に拍車をかけています。

鳥インフルエンザは、一度発生すると、周辺農場を含めた広範囲での予防的殺処分が必要となり、その影響は長期化します。また、新たな鶏の導入から卵の生産開始までには一定期間が必要なため、供給の回復には時間がかかってしまいます。

猛暑による鶏の生産能力低下

ニワトリは暑さに弱く、猛暑が続くと「夏バテ」を起こしやすくなります。その結果、以下のような影響が生じました。

産卵率の低下  :高温環境では鶏のストレスが増加し、卵を産む頻度が減少しました
卵のサイズ縮小 :猛暑の影響で鶏の体調が悪化し、産まれる卵のサイズが小型化しました
飼料摂取量の減少:暑さで鶏の食欲が落ち、必要な栄養を十分に摂取できなかったことも生産量減少の一因です

卵の価格高騰はなぜ続くのか

生産コストの上昇

電気代や燃料費の高騰は、鶏舎の維持管理コストを押し上げています。

温度管理が必要なウインドレス鶏舎では、光熱費の上昇が大きな負担となっています。また、人手不足による人件費の上昇も深刻で、これらのコスト増加を価格に転嫁せざるを得ない状況が続いています。

構造的問題の解決の難しさ

養鶏業界の構造的な問題として、農家数の激減(45万戸から1,800戸へ)があります。

大規模化と寡占化が進み、中小農家の廃業が続いています。

新規参入も困難で、業界全体の生産体制の改革が進みにくい状況です。これらの構造的な問題は短期間での解決が難しく、価格高騰の要因となり続けています。

卵

養鶏業界の現状

大規模化による寡占化

養鶏業界は、この50年間で劇的な変化を遂げています。

杉山誠空
1955年には45万戸あった養鶏農家が、現在ではわずか1,800戸にまで減少しました。この激減の背景には、大規模化による寡占化があります。中小規模の農家は、効率化や価格競争の中で淘汰され、大規模な経営体だけが生き残る構造となっています。この寡占化は、業界の多様性を失わせ、画一的な生産方式を強いる結果となっています。

経営難による農家の減少

現在の養鶏農家は深刻な経営難に直面しています。

特に飼料価格は、経営を圧迫しています。また、鶏舎の維持管理費用、人件費の上昇など、様々なコストが増加している一方で、消費者からの低価格志向は強く、適正な価格転嫁が困難な状況が続いています。

業界の持続可能性の課題

養鶏業界の持続可能性は重大な岐路に立っています。

杉山誠空
大規模化と効率化を追求する現在のビジネスモデルは、動物福祉の観点からも環境負荷の面からも限界に近づいています。新規参入の障壁は高く、後継者不足も深刻です。このまま現状が続けば、国内の卵生産基盤そのものが危うくなる可能性があります。

アニマルウェルフェアの問題

劣悪な飼育環境の実態

日本の養鶏場の98%が採用している現行のケージ飼育システムは、鶏の基本的な行動すら制限する極めて劣悪な環境です。

一羽あたりA4用紙程度のスペースしかない狭いケージでは、羽を広げることも、自然な姿勢で立つことも困難です。さらに、鶏の本能的な行動である砂浴びや止まり木にとまることもできません。これらの制限は、鶏のストレスを著しく高め、健康状態にも悪影響を及ぼしています。

養鶏場

海外との比較

EUでは既に従来型のケージ飼育が禁止され、最低限の快適性を確保した「エンリッチドケージ」や平飼いが標準となっています。

アメリカでも、アニマルウェルフェアを考慮した生産方式が広がり、そのための価格上昇(1パック約1,000円)を消費者が受け入れています。

杉山誠空
一方、日本では依然として旧来の過密飼育が主流であり、国際的な動物福祉の基準から大きく後れを取っています。

改善に向けた取り組みの現状

一部の先進的な生産者や企業は、アニマルウェルフェアに配慮した平飼いなどの新しい飼育方式を導入し始めています。

しかし、設備投資のコストや生産効率の低下による価格上昇が障壁となり、業界全体への普及は進んでいません。

消費者の低価格志向が根強い日本市場では、より人道的な飼育方式への移行には、消費者の理解と協力が不可欠です。

【卵の値上がり2025】消費者への影響と対応

【卵の価格高騰】家計への影響

卵価格の上昇は、一般家庭の食費に大きな影響を与えています。

従来200円前後だったパック卵が、300円を超える価格になることも珍しくなくなりました。

毎日の食事に欠かせない食材であるため、家計への負担は深刻です。

多くの家庭では代替品を探したり、使用量を減らしたりする工夫を始めていますが、タンパク質源としての重要性から、完全な代替は難しい状況です。

卵

【卵の価格高騰】飲食店への影響

飲食業界にとって、卵価格の高騰は経営を圧迫する大きな要因となっています。

杉山誠空
特に、卵かけご飯専門店や洋食店など、卵を主力食材とする店舗では、メニュー価格の見直しを余儀なくされています。しかし、価格転嫁が難しい市場環境の中、多くの店舗が経営の危機に直面しています。

価格上昇を受け入れる必要性

持続可能な卵生産のためには、適正な価格設定が不可欠です。

現在の価格上昇は、長年抑制されてきた構造的な問題が表面化した結果とも言えます。消費者には、安価な卵の背景にある問題を理解し、適正な価格での購入を検討する必要性が出てきています。

卵の価格高騰理由から得た二つの選択肢

日本の卵産業は重大な岐路に立っています。

45万戸から1,800戸への養鶏農家の激減、飼料価格の2.5倍以上の高騰、鳥インフルエンザの被害、そして劣悪な飼育環境など、複合的な問題が積み重なった結果が、現在の価格高騰として表面化しているのです。

この状況を単なる一時的な価格上昇として見るのは誤りです。

1パック200円台という価格は、動物福祉を無視し、農家の経営を圧迫することで実現してきた「歪んだ価格」だったのです。

解決策は明確です・・・消費者が適正な価格を受け入れ、アニマルウェルフェアに配慮した生産方式への転換を支持することです。これは単なる価格の問題ではなく、持続可能な畜産業の実現と、人と動物の共生という倫理的な選択の問題なのです。

私たちには二つの選択肢があります。

従来通りの低価格を求め続け、産業の崩壊と動物福祉の無視を容認するか、それとも適正な価格で持続可能な生産体制を支援するか。今、その決断が求められています。

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