デイサービスの倒産理由と今後の行方|2026年1〜9月に過去最多47件の背景と生き残る条件

デイサービス倒産
杉山 制空

デイサービス(通所介護)の倒産が、2026年に入って過去最多のペースで増えています。「近所のデイが急に閉まった」「今使っているところは大丈夫なのか」という不安の声も増えました。

この記事では、倒産理由を数字で分解したうえで、今後の業界がどう動くのか、そして利用者・家族と事業者がそれぞれ何を準備すべきかを整理します。

結論:デイサービスの倒産理由と今後の見通し

2026年1〜9月の倒産は47件で、同期間として調査開始以来の最多。すでに2025年の年間件数(45件)を上回っており、年間では60件台も視野に入っています。倒産原因の約8割は売上不振です。

コストの中身が変わった。燃料費は暫定税率の廃止で下がりましたが、入れ替わるように人件費が確定的に上がり、電気・ガス代の補助も2026年9月使用分でいったん切れました。「削れない経費」の中身が燃料から人件費・光熱費へ移っています。

今後は「業界の消滅」ではなく「再編」。全国約4万5,000カ所に対し47件は約0.1%です。ただし2027年度改定の議論では、共同送迎や同一建物減算の作り替え、延長加算の廃止など、小規模事業所の収支に直接効く見直しが並んでいます。

※本記事の数値は2026年11月2日時点で公表されているデータに基づきます。

目次

データで見る現状|2026年のデイサービスの倒産件数

東京商工リサーチの調査によると、2026年1〜9月のデイサービス事業者(通所・短期入所介護事業、負債1,000万円以上)の倒産は47件で、前年同期の35件から34.2%増えました。1〜9月としては調査開始以来の最多です。

注目すべきは、9月時点ですでに2025年の年間件数(45件)を超えているという点です。年間では60件台も視野に入るとされており、過去最多は大手フランチャイズチェーンが破綻した2022年の69件です。

項目件数・数値
2026年1〜9月のデイサービス倒産47件(前年同期35件、+34.2%)
原因「売上不振」37件(構成比78.7%)
原因「既往のシワ寄せ」(赤字累積)5件(同10.6%)
「人手不足」関連11件(前年同期3件)
「物価高」関連2件(前年同期1件)
2025年の年間件数(参考)45件
過去最多(2022年)69件

「人手不足」「物価高」は主因とは別枠の集計のため、合計は47件を超えます。

介護業界全体と、訪問介護との明暗

介護業界全体(老人福祉・介護事業)の2026年1〜9月の倒産は136件で、前年同期と同数。過去最多タイのペースです。年間では2024年172件、2025年176件と2年連続で過去最多を更新してきました。

一方、これまで増加が続いていた訪問介護は潮目が変わりました。2026年1〜9月は64件で前年同期比11.1%減。2025年まで3年連続で過去最多を更新してきた流れが止まりました。ただし依然として過去2番目の高水準で、楽観はできない状況です。

杉山 制空

賃上げ支援が先行して届いた訪問介護が減少に転じ、デイサービスが増え続けている・・・この対比は、支援の有無がそのまま倒産件数に表れることを示しています。

倒産の数倍が「静かに」退場している

倒産に至らず自主的に事業をたたむ「休廃業・解散」にも目を向ける必要があります。介護事業者の休廃業・解散は2025年に653件(前年比6.6%増)で、4年連続の過去最多。うち通所・短期入所は95件で前年から35.7%増、訪問介護は465件で最多でした。

倒産45件に対し休廃業・解散95件ですから、市場から消えた事業所の実数は倒産統計の約3倍ということになります。

決算データは「4割弱」まで改善している

ここで一つ、ねじれた事実を押さえておく必要があります。

厚生労働省の令和7年度介護事業経営概況調査(2025年11月26日公表)によると、通所介護の収支差率と赤字割合は次の通りです。

区分令和5年度決算令和6年度決算赤字割合(令和6年度)
通所介護6.5%6.2%37.4%
地域密着型通所介護5.8%6.3%37.2%
全サービス平均4.7%4.7%37.5%

なお福祉医療機構(WAM)の2023年度調査では、通所介護全体43.9%、通常規模型45.7%、地域密着型43.2%、大規模型約27%という数字が出ています。調査主体と対象が異なるため幅がありますが、4〜5事業所に2事業所が赤字という水準はどちらも共通しています。

なぜ「赤字は減ったのに倒産は増える」のか

決算上は赤字割合が4割弱に改善しているのに、倒産は過去最多ペース。矛盾するようですが、理由は3つあります。

データが古い 概況調査が見ているのは令和6年度(2024年度)決算です。2025年から2026年にかけての人件費上昇も、電気・ガス補助の切れ目も、まだ入っていません。

倒産は「平均」では起きない 収支差率6.2%は全体の平均値です。倒産するのは平均の事業所ではなく、稼働率が6割台に落ち込んだ下位層です。平均が改善しても、下位層の脱落は止まりません。

2026年6月に人件費が確定的に上がった 後述する処遇改善加算の拡充で、賃上げは「やるかどうか」ではなく「やる前提」になりました。加算を取り切れなかった事業所は、原資だけが先に出ていきます。

デイサービスが倒産する5つの理由

売上不振(37件・全体の78.7%)

倒産原因の約8割が売上不振です。前年同期(1〜5月時点で66.6%)よりも構成比が上がっており、「選ばれないこと」が倒産の最大要因として純化してきていると読めます。

デイサービスは「ただ預かる場所」から、機能訓練特化型、認知症対応型、入浴特化型、お泊まりデイなどへ多様化しました。その結果、特色のない事業所はケアマネジャーからも利用者からも選ばれにくくなっています。

コスト構造の変化|燃料は下がり、人件費と光熱費が上がった

ここは2026年に入って状況が大きく動いた部分です。

燃料費はむしろ軽くなった ガソリンの暫定税率は2025年12月31日に廃止され、1リットルあたり25.1円(53.8円→28.7円)下がりました。軽油も2026年4月1日に廃止され、1リットルあたり17.1円(32.1円→15.0円)下がっています。2026年10月下旬のレギュラーガソリン全国平均は1リットル170.1円です。

送迎車を多数動かすデイサービスにとっては、数少ない追い風です。送迎コストの話を2024〜2025年の感覚のまま語るのは、もう実態に合いません。

電気・ガスは端境期にある 一方、光熱費の支援は切れ目に入っています。2026年夏の電気・ガス補助は9月使用分で終了し、10〜12月使用分には補助がありません。再開は2026年12月から2027年2月の使用分で、電気代の値引きは12月が1kWhあたり1円、2027年1月・2月が4.5円とされています(2026年10月29日に高市首相が表明)。

入浴と空調で電気・ガス・水道を大量に使うデイサービスにとって、この秋は補助のない時期に暖房需要が立ち上がる、最も苦しい局面にあたります。

杉山 制空

介護報酬は公定価格 そして根本的な問題として、コストが上がっても値上げで転嫁できません。ここが一般の飲食・小売業との決定的な違いなんですよね

人件費の高騰と人材流出

2026年1〜9月の「人手不足」関連倒産は11件で、前年同期の3件から約3.7倍に増えました。内訳は人件費高騰7件(前年同期1件)、後継者難2件、求人難1件、従業員退職1件です。

人件費高騰が7件と大半を占めている点が重要です。採用できないことよりも、払えなくなっていることが倒産に直結する局面に入っています。

杉山 制空

他産業との賃金格差に加え、賃上げ支援が先に届いた訪問介護へ人材が流れる動きもあり、採用競争は激しさを増しています。

稼働率の低下

WAMの調査では、黒字事業所の平均稼働率が73.7%であるのに対し、赤字事業所は63.9%にとどまります。この約10ポイントの差が、そのまま損益の分かれ目です。

杉山 制空

空き枠が埋まらなければ、送迎も職員配置も同じだけかかるのに売上だけが落ちます。稼働率は、経営が傾く最も早い兆候として表れます。

資金繰りとコロナ融資の返済(既往のシワ寄せ)

介護報酬は、サービス提供から入金までに約2か月のタイムラグがあります。物価が上がる局面では、高くなった食材費や人件費の支払いが先に来て、それに見合う収入は2か月後にしか入りません。帳簿上は黒字でも現金が尽きる「黒字倒産」が起きやすい構造です。

杉山 制空

さらに、2021〜2023年の補助金や実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)で延命していた事業所は、支援終了と返済開始が重なりました。原因別の「既往のシワ寄せ」は、この積み残しが表面化したものです。

なぜ小規模事業所ばかりが倒れるのか

2025年の介護事業者の倒産176件のうち、従業員10人未満が142件(構成比80.6%)を占めました。小規模への集中は一貫した傾向です。理由は3つあります。

1人の退職の重みが違う 職員4人の事業所で1人辞めれば、戦力の25%が一度に失われます。残った職員の負担が増え、それがまた次の退職を呼ぶ「連鎖退職」が起きると、小規模事業所には持ちこたえる体力がありません。

事務作業の負担が相対的に重い BCP(業務継続計画)の策定義務化、LIFEへのデータ提出、複雑化する加算要件。これらは事業所の規模にかかわらず同じ量が求められます。専任の事務職員を置けない事業所ほど、管理者が現場と事務を兼務して疲弊します。

スケールメリットが働かない 1〜2店舗の運営では、請求業務も採用も研修も、すべて割高になります。WAM調査で大規模型の赤字割合が約27%にとどまるのは、この差が積み上がった結果です。

2026年6月の処遇改善加算では、ケアプランデータ連携システムへの加入や生産性向上推進体制加算の取得が上乗せ区分の条件に入りました。事務余力のある事業所ほど加算を取れる構造になっており、規模の差が収入の差に直結し始めています。

現場で感じること|「挨拶が返ってこない事業所」

当店(ニコニコキッチン宝塚西宮店)の近くにあったデイサービスも、先ごろ事業を終えました。数字を見る前から、実は感じていたことがあります。職員さんに余裕がなくなっていた、ということです。

配達や送迎ですれ違ったとき、挨拶がきちんと返ってこない。目が合わない。誰もが足早で、こちらに一瞬も向ける余白がない。これは職員さん個人の資質の問題ではありません。人が減り、一人あたりの持ち場が増え、記録も加算の書類も溜まっている——その結果として、最初に削られるのが「人に向ける数秒」なのだと思います。

挨拶は、経営指標の中で最も早く、そして誰の目にも見える形で表れる先行指標なのかもしれません。稼働率も収支も、外からは見えません。けれど職員さんの表情と挨拶は、玄関先で分かります。

この観察は数字で裏づけられるものではありませんが、構造とは矛盾しません。人が抜ける→残った職員の負担が増える→表情と余裕が失われる→ケアの質と雰囲気が落ちる→ケアマネジャーの紹介が細る→稼働率が下がる→さらに人件費が払えなくなる。この循環のどこかに入ってしまうと、小規模事業所は自力で抜け出しにくくなります。

倒産原因の約8割が売上不振であることを思えば、この循環は統計の裏側そのものです。逆に言えば、職員に挨拶や雑談の余裕が残っている事業所は、少なくともこの循環の外側にいる可能性が高いということです。実際にそう感じている事業所の例は、第5章の最後で挙げます。

今後どうなるのか|2026年6月改定と2027年度改定

2026年6月の臨時改定は「処遇改善加算のみ」

2026年度は、通常3年に1度の改定サイクルを前倒しする形で臨時改定が行われました。改定率は全体で+2.03%。内訳は介護職員等の処遇改善分が+1.95%、食費の基準費用額の引き上げ分が+0.09%です。

処遇改善分は2026年6月、食費の基準費用額は2026年8月の施行です。主な内容は次の通りです。

  • 対象を介護職員から「介護従事者」へ広げ、月1.0万円(3.3%)の賃上げを想定
  • 生産性向上や協働化に取り組む事業者の介護職員には、加算Ⅰ・Ⅱの加算率への上乗せとして月0.7万円(2.4%)を追加
  • 訪問看護(加算率1.8%)、訪問リハビリテーション(同1.5%)、居宅介護支援・介護予防支援(同2.1%)を新たに対象へ追加
  • 食費の基準費用額は日額1,445円から1,545円へ

基本報酬の引き上げは行われていません。 つまり、賃金は上がるが、光熱費や食材費の高騰分を埋める手当てはないということです。人件費だけが確定的に増えるため、稼働率の低い事業所にとっては、むしろ収支が厳しくなる可能性もあります。

2027年度改定|通所介護の具体的な論点が出そろった

次の定期改定は2027年度です。2026年10月14日の第270回社会保障審議会介護給付費分科会で、通所介護の見直し案が具体的に示されました。抽象的な「大規模化の流れ」ではなく、収支に直接効く項目が並んでいます。

送迎まわりの大幅な見直し

  • 他法人・他事業所と連携した「共同送迎」の取り扱いを明確化する案
  • 児童の通園・通学や地域の買い物支援との同乗など、対象範囲を広げる案(責任関係の明確化が前提)
  • 利用者宅へ迎えに行った後の突発的なキャンセルを、例外的に送迎減算の対象外とする案
  • 送迎時の居宅内介助(乗降介助、状態確認、家族への引き継ぎ等)の評価方法

共同送迎が制度上はっきり認められれば、「共同化」が送迎という最もコストの重い部分で実現できます。小規模事業所にとっては数少ない前向きな材料です。

入浴介助の評価見直し

  • 水道光熱費の高騰や人材確保を背景とした加算単価の見直し
  • 中山間地域などで訪問入浴の事業者がいない場合に限り、入浴目的の短時間利用を例外的に認める案

減算・加算の整理

  • 算定率の低い12時間以上の延長加算を廃止する方向
  • 同一建物減算について、現行の減算方式に代えて、事業所規模・送迎コスト・利用日数を反映した報酬区分を設ける案
  • 地域密着型通所介護の中重度者ケア体制加算について、小規模事業所で看護職員等の確保が難しい実態を踏まえた人員配置要件の見直し案

サービス区分そのものの議論

  • 認知症対応型通所介護と通所介護の統合には反対意見があり、結論は出ていない
  • 経営の大規模化・協働化、サービスの集約化・広域化といった提供体制全体の構造改革

制度改正の側で決まったこと

報酬改定と並行して、介護保険制度そのものの見直しも進んでいます。社会保障審議会介護保険部会は2025年12月25日に「介護保険制度の見直しに関する意見」を取りまとめました。デイサービスに関係が深いのは次の点です。

  • 要介護1・2の訪問介護・通所介護を総合事業へ移行する案は、反対論が根強く結論が持ち越された
  • 中重度者や医療ケアが必要な人を受け入れる有料老人ホームを事前の「登録制」の対象とし、人員・設備・運営基準を新設
  • 入居契約で特定サービスの利用を条件とすることや、家賃の不当な割引を禁止(いわゆる「囲い込み」規制)
  • 人口減少地域では、ICT活用や賃上げを条件に人員配置基準を緩和する新類型を導入
  • 民間が撤退した場合に、市町村が主体となってサービスを確保する仕組みを創設

最後の項目は、利用者・家族にとって重要です。事業者の撤退が相次いでも、地域からサービスが消えないための受け皿づくりが制度側で始まっているということです。

「許容された淘汰」という現実

国は高齢者人口のピークを見据えており、非効率な事業所の退場をある程度許容していると考えられます。限られた介護人材を、より効率的に運営できる事業所へ移す方が、制度全体としては合理的だからです。

その意味で、現在起きているのは景気変動による一時的な倒産ではなく、制度に導かれた構造的な再編です。

ただし「デイサービスがなくなる」わけではない

2026年4月審査分の時点で、全国のデイサービスは約4万5,000カ所(通所介護24,526、地域密着型通所介護18,130、認知症対応型通所介護3,077)あります。年間60件台という倒産件数は、その約0.1%です。

在宅で暮らす高齢者を支えるインフラとしての需要は、むしろ増えていきます。減っているのは「デイサービスという業態」ではなく、「開設すれば利用者が集まった時代」の方です。

生き残るデイサービスに共通する5つの条件

明確な強みがある

「この利用者ならここ」とケアマネジャーに想起される理由が必要です。理学療法士・作業療法士によるリハビリ特化、認知症ケア、医療依存度の高い方の受け入れ、食事の質、外出支援など、一点でも突き抜けた特徴が指名につながります。倒産原因の約8割が売上不振である以上、ここが最大の防波堤です。

加算を取りこぼさない

個別機能訓練加算、入浴介助加算、LIFE関連加算、そして2026年6月改定で拡充された処遇改善加算の上乗せ区分。2027年度改定では入浴介助加算の単価見直しや延長加算の廃止が検討されているため、改定のたびの棚卸しが欠かせません。

稼働率を月次で管理する

黒字事業所の平均は73.7%です。稼働率70%を損益分岐のラインとして設定し、空き枠を週単位で把握して営業に動く体制が求められます。

保険外収益をつくる

報酬改定に左右されない収入源です。送迎時の見守りや送り出し支援の有料化、健康食品や運動器具の販売、自費サービスの設定などが挙げられます。

共同化でコストを下げる

完全なM&Aを選ばなくても、近隣事業者と請求業務や事務を共同化することで、間接コストを圧縮できます。2027年度改定で共同送迎の取り扱いが明確化されれば、最も重い送迎コストの共同化という選択肢も現実味を帯びます。

実例|西宮市「ふくふく庵甲東園」さんの場合

倒れる事業所の話ばかりでは、片側しか見えません。当店が実際にお取引をしている、伸びている事業所の例を挙げます。

ニコニコキッチン宝塚西宮店は、西宮市甲東園のデイサービス「ふくふく庵甲東園」(株式会社フォレストケアサービス)さんへ、ご利用者様の日々のお弁当をお届けしています。

毎日お伺いしている立場から見て、この記事で挙げた条件がきれいに揃っている事業所です。

多拠点展開でスケールメリットを確保している フォレストケアサービスは、ふくふく庵デイサービスセンター、ガーデン、テラス、甲東園、木川、御崎と6つのデイサービスを展開し、加えて居宅介護支援事業所「ケアプランフォレスト」も運営しています。第3章で触れた「1店舗・2店舗の脆弱性」とは、正反対の構えです。1人の退職が事業所全体を揺るがすことがなく、事務や採用の負担も分散できます。2026年6月改定で事務余力が加算額を左右するようになったことを考えると、この差はさらに効いてきます。

赤字割合の高い区分で結果を出している 甲東園は定員25名の通常規模デイサービスです。通所介護の赤字割合は、厚労省調査で37.4%、WAM調査の通常規模型では45.7%。調査によって幅はありますが、いずれにせよ楽な区分ではありません。そこで複数拠点を維持できているという事実そのものが、運営力の証明と言えます。

コンセプトが明確 「体を動かして楽しんで元気になろう」「いつまでもお家で元気に暮らせるように」を掲げ、棒体操・ストレッチ体操・リハビリ体操・音楽体操・歩行訓練といった機能訓練を軸に据えています。同時に、季節のクラフト、音楽の集い、外食、花見といった行事も並走させています。機能訓練と楽しさの両立は、まさに第5章冒頭の「明確な強み」そのものです。

外部委託で得意分野に集中している 食事を専門の配食事業者に委託するのも、一つの経営判断です。厨房設備の維持費、調理職員の人件費と採用リスク、食材の仕入れ変動——第2章で挙げたコスト要因の一部を外部化し、その分の人員と時間を機能訓練やレクリエーションに振り向けられます。共同化・外部化によるコスト構造の見直しは、こういう形でも実現できます。

杉山 制空

そして何より、お伺いするたびに職員の皆さんから明るい挨拶が返ってきます。前節で「挨拶は最も早く外から見える先行指標」と書きましたが、その逆もまた真だと感じています。

※当店はふくふく庵甲東園さまへお弁当をお届けしている取引先です。上記のうち、事業所数・定員・運営方針については同社公式サイトに掲載されている情報を参照しています。

利用者・家族が今から備えておくこと

通っているデイサービスの「予兆」を見る

倒産や廃止は、ある日突然に見えて、実は手前に兆候が出ていることが多いものです。

  • 職員に挨拶や声かけの余裕がなくなった(送迎時に会話が減った、目が合わない、常に急いでいる)
  • 送迎車の便数やコースが減った
  • 職員の入れ替わりが激しく、顔ぶれが安定しない
  • 行事やレクリエーションが目に見えて縮小した
  • 入浴が中止になる日が増えた
  • 営業日や営業時間が短縮された
  • 管理者が不在がちで、連絡がつきにくい

複数が同時に起きている場合は、担当のケアマネジャーに率直に相談してください。

とくに最初の一つは、ご家族が送迎の見送りやお迎えの数分で確認できる、いちばん手軽な指標です。半年前は世間話ができていたのに、今は事務的なやり取りだけになった——その変化は、たいてい現場で何かが起きています。

デイサービスを選ぶときの視点

新しく選ぶ場合は、料金や送迎範囲だけでなく「続けられるデイサービスか」も見る時代になりました。運営法人の規模、開設からの年数、職員の定着状況、加算の取得状況(重要事項説明書で確認できます)が判断材料になります。

廃止になった場合のルール

デイサービスが事業を廃止・休止する場合、原則として廃止日の1か月前までに自治体へ届け出る必要があり、利用者が引き続きサービスを受けられるよう、代わりのデイサービスの紹介など必要な便宜を図る義務があります。

ただし、破産による突然の停止では、この手順が十分に踏まれないこともあります。連絡が取れなくなった場合は、担当ケアマネジャー、または市区町村の介護保険担当課・地域包括支援センターに速やかに相談してください。前払いした利用料や預り金がある場合は、返還の可否を含めて相談先で確認が必要です。

通所が止まったときの食事の確保

デイサービスが止まって家族が最初に困るのは、多くの場合「昼食」です。週に数回の通所で昼食と入浴を確保していた方ほど、代わりのデイサービスが決まるまでの数週間が空白になります。

つなぎとして使いやすいのは配食サービスです。介護保険の給付対象外のため要介護認定を待たずに始められ、支給限度額を消費しません。手渡しで届けるタイプであれば、食事の確保と同時に安否確認の役割も果たします。

宝塚市・西宮市にお住まいの場合、まずは担当ケアマネジャーか、お住まいの地域を担当する地域包括支援センター(西宮市は高齢者あんしん窓口)にご相談ください。

デイサービスの倒産理由【よくある質問】

Q. 2026年のデイサービス倒産は、結局何件になりそうですか。

1〜9月で47件に達しており、年間では60件台が視野に入るとされています。過去最多は2022年の69件です。2025年の年間45件は9月時点ですでに超えています。

Q. デイサービスは今後、減っていくのですか。

事業所数は緩やかな減少傾向にありますが、需要そのものは在宅介護の広がりとともに続きます。減るのは「特色のない事業所」で、専門性を持つ事業所や大規模法人への集約が進むと見られています。制度側でも、民間が撤退した地域で市町村がサービスを確保する仕組みの創設が示されています。

Q. 2026年6月の報酬引き上げで経営は改善しますか。

+2.03%の改定は処遇改善加算の拡充と食費の基準費用額引き上げが中心で、基本報酬は据え置きです。職員の賃金は上がりますが、光熱費を補うものではありません。上乗せ区分にはケアプランデータ連携システムへの加入などが条件として入っており、事務体制の差がそのまま収入の差になります。

Q. 利用しているデイサービスが倒産したらどうなりますか。

サービスは停止しますが、介護保険の利用資格が失われるわけではありません。担当ケアマネジャーがケアプランを変更し、代わりの事業所を調整します。まずはケアマネジャーへ、連絡が取れなければ市区町村の介護保険担当課へ相談してください。

Q. 小規模より大手を選んだほうが安全ですか。

倒産件数だけを見れば小規模事業所に集中しています(2025年は10人未満が80.6%)。ただし小規模には少人数で目が届く、なじみの関係を作りやすいという強みがあります。規模そのものより、稼働率が保たれているか、職員が定着しているかを見るほうが実態に近い判断ができます。

Q. 職員さんの雰囲気で、経営状態は分かるものですか。

断定はできませんが、有力な手がかりにはなります。人手が減ると、記録や送迎に追われて挨拶や雑談に割ける時間から先に失われていきます。稼働率や収支は外から見えませんが、職員の表情と余裕は玄関先で分かります。ただし、一時的な繁忙や欠勤による場合もあるため、数か月にわたって続いているかどうかで判断してください。

Q. 家族としてできる備えはありますか。

担当ケアマネジャーと日頃から連絡を取り、代替候補の事業所を1〜2か所把握しておくことです。加えて、通所が止まった期間の食事をどう確保するかを決めておくと、いざというときに慌てずに済みます。

《総括》デイサービスの倒産理由と今後の行方

デイサービスの倒産は、2026年1〜9月で47件。同期間として過去最多であり、9月の時点で2025年の年間件数を上回りました。原因の約8割は売上不振で、「選ばれないこと」が倒産に直結する構図が鮮明になっています。

コストの中身は年内に入れ替わりました。燃料費は暫定税率の廃止で軽くなった一方、処遇改善加算の拡充で人件費が確定的に上がり、電気・ガスの補助も端境期に入っています。決算データ上の赤字割合は4割弱まで改善していますが、それは2024年度の平均値であり、倒産が起きている下位層の実態とは別物です。

2027年度改定では、共同送迎の明確化、送迎減算の緩和、同一建物減算の報酬区分化、延長加算の廃止といった、収支に直接効く見直しが議論されています。単なる「大規模化への誘導」ではなく、対応すれば得になる項目と、放置すれば損になる項目が同時に並んでいる改定です。

事業者は差別化と加算取得、稼働率管理で「選ばれる理由」を作ること。利用者と家族は、通っているデイサービスの変化に目を配り、止まったときの相談先と食事の確保先をあらかじめ決めておくこと。この二つが、変化の時期を乗り切るための現実的な備えになります。

杉山 制空

そして、その「変化」を見つけるいちばん確かな入口は、統計ではなく玄関先にあります。職員さんが挨拶を返す余裕を持っているか。地域で高齢者の暮らしに関わっていると、この一点がどれだけ多くを語るかを、たびたび思い知らされることになるでしょう・・・。

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