【2026年】米価格暴落はいつ?「3月・6月・9月」に下がる理由

米価格暴落はいつ

「米が買えない」から一転、「米が余っている」へ・・・。

2024年夏の令和の米騒動から1年半、日本の米市場は再び激変の時を迎えています。

パニック的な買い溜めで5,002円まで高騰した米は、豊作による供給回復で過剰在庫329万トンという逆の問題に直面しています 。それでもスーパーの店頭では4,400円超の高値が続く理由は、流通段階での「価格の目詰まり」です 。

しかし、この矛盾はまもなく解消されます。

米穀関係者の大多数が価格下落を予測し、見通し指数は27という暴落シグナルを示しているのです 。

本記事では、2026年に訪れる「3月・6月・9月」3つの価格下落タイミングと、最終的に3,300円時代へ回帰するシナリオを、最新の市場データとともに完全解説します 。

今こそ、待つべきか買うべきか、正しい判断をしましょう。

目次

米価格暴落の最新状況:2026年1月時点の市場動向

店頭価格と市場予測の矛盾

過去最高値4,416円の衝撃

2026年1月8日、全国のスーパーマーケットにおける米5kgの平均小売価格は4,416円を記録しました。

これは前週の4,337円からさらに79円上昇し、データ集計開始以来の過去最高値を更新したことになります。わずか2年前の2024年1月には2,150円程度で購入できていた米が、2倍以上の価格になったという事実は、多くの消費者に衝撃を与えています。特に主婦層や年金生活者など、米を主食とする家庭では月間の食費が数千円単位で増加しており、家計を直撃する深刻な問題となっています。この価格水準は、バブル期を含めた過去の統計と比較しても異常な高さであり、「令和の米騒動」の深刻さを物語っています 。

価格見通し指数27が示す下落シグナル

一方で、米穀安定供給確保支援機構が同日発表した「向こう3ヶ月の価格見通し指数」は27という数値を記録しました。

この指数は、米の流通に関わる事業者へのアンケート調査に基づいており、50が価格据え置きの目安、それを下回ると価格下落を予想する事業者が多いことを意味します。27という数値は2021年9月以来の低水準であり、3ヶ月連続で50を下回っています。つまり、業界関係者の大多数が「今後米価格は下がる」と予測しているのです。店頭では史上最高値を更新している一方で、流通のプロたちは価格下落を見込んでいるという、この矛盾した状況が2026年初頭の米市場の特徴と言えます。この乖離は、流通段階での在庫状況と小売価格への反映タイムラグによって生じています 。​

米価格暴落はいつ?3つの下落タイミング予測

2026年3月:決算期の価格調整

企業の在庫処分による3,780円への下落

2026年3月は、米価格が本格的に下落する最初のタイミングとして注目されています。

3月は多くの企業の決算期に当たり、卸売業者や商社は在庫を現金化する必要性が高まります。高値で仕入れた米在庫を決算書に計上することは、財務上のリスクとなるため、多少の損失を覚悟してでも販売を進める動きが強まるのです。

農業経済の専門家による分析では、5kgのコシヒカリで3,780円程度まで下がる可能性が指摘されています。これは現在の4,416円から約636円、率にして14%の下落を意味します。ただし、この価格でも2023年の正常水準である2,000円と比べると約1.9倍の高値であり、完全な正常化には至りません。決算期の価格調整は一時的な現象である可能性もあり、4月以降の推移を注視する必要があります 。​

卸業者の資金繰り事情

卸売業者が3月に在庫処分を急ぐ背景には、深刻な資金繰り問題があります。

2024年後半から2025年にかけて、多くの業者は「令和の米騒動」の経験から、次の不足に備えて高値でも大量の新米を仕入れました。しかし、令和7年産米は予想に反して豊作となり、需要も高値により減退したため、仕入れた在庫が滞留する事態となっています。米の仕入れには多額の運転資金が必要であり、在庫が長期化すれば金利負担も増大します。特に中小の卸業者にとっては、決算期までに在庫を減らして資金を回収することが、次年度の事業継続に直結する重要課題となっています。このため、利益を削ってでも販売価格を引き下げ、販売数量を確保する動きが3月に集中すると予測されています 。​

2026年6月:夏場の本格調整

在庫過剰解消の最終段階

6月は、過剰在庫の解消が最終段階に入る時期として位置づけられています。

3月の決算期に一定の在庫調整が進んでも、329万トンという膨大な在庫を短期間で消化することは困難です。6月は新米の収穫まで約4ヶ月という時期であり、流通業者にとっては「旧米在庫を一掃する最後のチャンス」となります。この時期を逃すと、9月以降の新米シーズンに旧米在庫を抱えたまま突入することになり、商品価値の低下と さらなる値下げを余儀なくされます。気温が上昇する夏場は米の品質劣化リスクも高まるため、業者は保管コストと品質管理の観点からも在庫削減を急ぎます。一部の専門家は、6月には5kg価格が3,000円台後半まで下落する可能性を指摘しており、消費者にとっては本格的な値下がりを実感できる時期となる見通しです 。​​

流通段階での価格転嫁メカニズム

卸売価格の下落が小売価格に反映されるまでには、一定のタイムラグが存在します。

これは流通段階が複層構造になっているためです。まず産地や農協から卸売業者への価格が下がり、次に卸売業者から小売業者への価格が下がり、最終的にスーパーなどの店頭価格に反映されます。各段階で既存の契約価格や在庫コスト、利益率の調整が必要となるため、川上の価格変動が川下に伝わるまでには数週間から数ヶ月を要します。2026年1月時点で卸売業者の見通し指数が大幅に下落しているにもかかわらず、店頭価格が高止まりしているのは、まさにこのタイムラグのためです。6月頃までには、このタイムラグが解消され、卸売段階での価格下落が消費者にも実感できる形で店頭価格に現れてくると予想されます 。​

2026年9月:新米供給で3,300円時代へ

令和8年産米の供給開始インパクト

2026年9月から10月にかけては、令和8年産の新米が市場に供給され始める時期です。

この新米供給が、米価格の本格的な下落をもたらす最大の要因となります。

専門家の予測では、5kg価格が3,300円程度まで下がる可能性が指摘されています。これは現在の4,416円から約1,116円、率にして25%の大幅な下落を意味します。新米は品質面での優位性があり、消費者の購買意欲を刺激します。また、流通業者も新米の仕入れを優先するため、旧在庫の処分がさらに進みます。ただし、3,300円という価格も、2023年の正常水準2,000円と比べると1.65倍の高値であり、完全な価格正常化には至りません。それでも、5,000円を超えた時期と比べれば、消費者にとっては大幅な負担軽減となり、「買いやすい価格」への回帰として歓迎されるでしょう 。

下落のタイミング予想価格帯 (5kg)下落の主な要因
2026年3月3,780円前後企業の決算期に伴う現金化。在庫放出が加速 ​
2026年6月3,000円台後半夏場の在庫一掃。新米登場を前に旧米を処分 ​
2026年9月〜10月3,300円前後令和8年産新米の供給開始による本格下落

減産調整の動きと産地の戦略

興味深いことに、2026年産米については主要産地が減産や横ばいの生産目標を設定しています。 共同通信の調査によると、2025年産生産量上位10道県のすべてが、2026年産では増産ではなく減産または横ばいを選択しました。 これは過剰在庫による価格暴落を懸念した予防的な措置です。 産地や農協は、2026年秋の新米供給時に価格が暴落すれば、農家の経営が深刻な打撃を受けることを危惧しています。 玄米60kg当たり3万円を下回ると、肥料代や農機具代などのコストを賄えず、赤字経営に陥る農家が続出します。 このため、供給量をあえて抑制することで、価格を「適正水準」に維持しようという戦略です。 ただし、この減産調整が功を奏するかどうかは、消費動向や政府の政策、天候条件など多くの要因に左右されるため、不確実性が高い状況です 。​

米価格推移グラフで見る2024-2026年の全記録

2024年前半:安定期(2,000円台)

コロナ後の正常化局面

2024年1月から7月までの期間は、米価格が2,150円から2,450円という比較的安定した水準で推移していました。 この時期は、コロナ禍からの経済正常化が進み、外食産業も回復基調にあった時期です。

令和5年産米は作況指数105の豊作であり、量的には十分な供給がある状況でした。

消費者物価指数全体が上昇傾向にある中でも、米は相対的に価格安定が保たれており、家計の主食として重要な役割を果たしていました。 この時期の価格は、過去10年間の平均的な水準とほぼ同じであり、生産者にとっても採算が取れる適正価格帯でした。 スーパーマーケットの特売では1,980円程度で販売されることもあり、消費者は特段の負担感なく米を購入できていました。 この「平穏な日常」が、わずか数ヶ月後に激変することを、当時はほとんど誰も予想していませんでした 。

需給バランスの崩壊前夜

しかし、この見かけ上の安定期には、すでに需給バランス崩壊の予兆が潜んでいました。2024年春頃から、農業関係者の間では令和5年産米の品質問題が指摘され始めていました。前年の猛暑により、表面的には豊作でも、実際に流通できる品質の米は想定より少ないという懸念です。

また、政府の備蓄米在庫が通常より少ない水準にあり、不測の事態への対応余力が乏しいことも一部では認識されていました。さらに、2024年夏の天候不順も懸念材料でした。7月時点での気象予報では、再び高温傾向が予想されており、令和6年産米にも影響が出る可能性が指摘されていました。このような複合的な不安要素が市場関係者の間で共有され始め、一部の先見性のある業者は早期の在庫確保に動き始めていました。8月以降の価格急騰は、こうした「崩壊前夜」の緊張が一気に顕在化した結果だったのです 。​

2024年8月~2025年:急騰期

わずか2ヶ月で1,000円上昇の衝撃

2024年8月、米価格は突如として急上昇を始めました。

7月末に2,450円だった5kg価格は、8月に2,550円、9月には2,900円へと跳ね上がり、わずか2ヶ月で1,000円以上、率にして約41%もの上昇を記録しました。この急騰の引き金となったのは、8月初旬の複数メディアによる「米不足」報道でした。令和5年産米の品質問題と、令和6年産米の作柄不安が重なり、「今年は米が足りない」という警告が一斉に報じられました。これを受けて消費者の買い溜め行動が始まり、店頭から米が消える事態が全国各地で発生しました。需要の急増を受けて、産地での買い付け競争が激化し、玄米の相対取引価格が急騰しました。この川上価格の上昇が、数週間のタイムラグを経て小売価格に反映され、消費者は月を追うごとに値上がりする米価格に直面することになりました 。​

2025年11月の史上最高値5,002円

価格上昇は2025年を通じて継続し、11月には5,002円という史上最高値に到達しました。

この価格は、2024年1月の2,150円と比較すると、わずか22ヶ月で2.3倍以上に跳ね上がったことを意味します。5,000円超という価格水準は、多くの消費者にとって「米は高級品」という認識をもたらしました。実際、10kgの大袋では10,000円を超えるケースも珍しくなく、購入をためらう消費者が急増しました。この時期、SNS上では「#米が買えない」「#米高騰」といったハッシュタグがトレンド入りし、社会問題として大きな注目を集めました。興味深いのは、この最高値を記録した2025年11月時点で、すでに令和7年産米は豊作であり、供給不足は解消に向かっていた点です。しかし、流通段階での価格硬直性と、高値で仕入れた在庫を抱える業者の存在により、需給改善が価格に反映されるまでに大きなタイムラグが生じていました 。​

【米価格】2026年以降:調整期への移行

段階的価格下落のロードマップ

2026年1月現在の4,416円から、専門家が予測する段階的な価格下落のロードマップは以下の通りです。

第一段階として、2026年3月の決算期に3,780円程度への下落が予想されています。これは約14%の下落率です。第二段階として、6月の在庫調整最終期には3,000円台後半まで下がる可能性があります。そして第三段階として、9月から10月の新米供給開始時には3,300円程度まで下落すると見通されています。

このロードマップが実現すれば、年末には最高値5,002円から約34%下落することになり、消費者にとっては大幅な負担軽減となります。

杉山 制空

ただし、この予測には不確実性も伴います。天候不順による令和8年産米の不作、国際情勢の変化による輸入米コストの上昇、消費者の買い溜め再燃など、様々な要因により予測が外れる可能性もあります 。​

​2027年の価格正常化シナリオ

2027年に向けては、さらなる価格正常化が期待されています。

理想的なシナリオでは、2027年秋には5kg価格が2,500円程度まで下落し、2023年以前の正常水準に近づくと予想する専門家もいます。 このシナリオが実現する条件として、①令和8年・9年産米が2年連続で豊作となること、②消費者のコメ離れが収まり需要が回復すること、③政府が適切な需給調整と備蓄管理を行うこと、④気候変動による極端な天候が発生しないこと、などが挙げられます。

特に重要なのは、農家の生産意欲を維持しながら、消費者にとって買いやすい価格を実現するという、難しいバランスの達成です。 あまりに価格が下がりすぎれば、農家が米作りを諦めて離農が進み、中長期的には供給不安が再燃します。 逆に高止まりすれば、コメ離れが加速し、日本の食文化の根幹が揺らぎます。2027年に向けた価格正常化の道のりは、単なる市場メカニズムだけでなく、政策的な調整が不可欠な課題となっています 。​

米価格高騰の真因:なぜここまで上がったのか

2023年猛暑による生育不良

品質低下と収量減少の実態

2023年夏の記録的猛暑は、米の生育に深刻な影響を及ぼしました。

高温により稲の開花・受粉期に障害が発生し、籾の充実不良や白未熟粒の増加といった品質低下が全国的に広がりました。 特に西日本を中心に、一等米比率が大幅に低下し、二等米や規格外米の割合が増加しました。 農林水産省のデータによると、令和5年産米の作況指数は全国平均で105と豊作基調でしたが、品質面では過去10年で最悪レベルとなりました。 品質低下は単に見た目や食味の問題だけでなく、精米時の歩留まり率の低下にもつながりました。 通常は玄米100kgから約90kgの精米が得られますが、品質が悪いと85kg程度まで低下します。 つまり、同じ量の精米を得るために、より多くの玄米が必要となり、実質的な供給不足を招いたのです 。​

低価格米・加工用米の激減

猛暑の影響は、特に低価格帯の米と加工用米の供給に深刻な打撃を与えました。

品質が低下した米は、通常は低価格米として外食産業や中食産業に販売されるか、加工原料用として米菓や日本酒の原料に回されます。

杉山 制空

しかし、2023年産米では規格外となるレベルの品質劣化が広範囲で発生し、これらの用途にも使えない米が大量に発生しました。

結果として、外食チェーンや弁当製造業者が必要とする業務用米が大幅に不足する事態となりました。これらの事業者は代替品として、本来は家庭用として販売される予定だった中価格帯の米を買い求めざるを得なくなり、市場全体の需給を圧迫しました。また、加工用米の不足は米菓メーカーや酒造メーカーにも影響を及ぼし、一部では製品価格の値上げや生産調整を余儀なくされたのです。

需給ギャップの発生メカニズム

減反政策の長期的影響

米価格高騰の構造的要因として、長年続いた減反政策の影響を無視できません。

減反政策は1970年代から2018年まで約半世紀にわたって実施され、米の作付面積を制限してきました。この政策により、日本の米生産能力は大幅に縮小し、生産者の高齢化と後継者不足も相まって、供給力の構造的な脆弱性が生じていました。減反廃止後も、農家は長期的な需要減少トレンドを前提に作付けを控える傾向が続きました。このため、2023年のような突発的な品質低下や需要増加に対して、供給を機動的に増やす柔軟性が失われていたのです。さらに、減反政策期には転作奨励金により多くの水田が他作物や非農地に転換されており、短期間で米生産に復帰することも困難な状況となっています。こうした長期的な政策の影響が、現在の米不足と価格高騰の背景にあります 。

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インバウンド需要3.1万トン増の誤算

政府の需給予測が外れた要因の一つに、インバウンド需要の急増があります。

農林水産省の試算によると、2023年7月から2024年にかけてのインバウンドでの米需要は、従来想定よりも3.1万トン増加しました。コロナ禍からの回復により訪日外国人観光客が急増し、ホテルや飲食店での米消費が想定を大きく上回ったのです。ただし、政府はこの3.1万トンという数字について、米の年間総需要約670万トンと比べれば約0.5%に過ぎず、需給全体に与える影響は小さいとしています。

杉山 制空

しかし、タイトな需給バランスの中では、わずか0.5%の誤差でも市場心理に大きな影響を与えます。「米が足りない」という報道が広がると、消費者の買い溜め行動を誘発し、実際の需給ギャップ以上に市場が逼迫するという悪循環が生じました 。

【米価格】買い控えと買い溜めの悪循環

消費者心理が生んだパニック需要

2024年夏以降、メディアで「米不足」が大きく報じられると、消費者の間でパニック的な買い溜め行動が広がりました。

通常は月に一度5kgを購入していた家庭が、一度に10kgや20kgを購入するようになり、需要が実際の消費量を大きく上回りました。 特に高齢者世帯では、「米が手に入らなくなる」という不安から、通常の数ヶ月分を一度に購入するケースが目立ちました。 この買い溜めにより、店頭から米が消える事態が各地で発生し、それがさらに不安を煽るという悪循環に陥りました。 オイルショック時のトイレットペーパー騒動と同様の現象が、2024年の米市場で再現されたのです。 興味深いのは、実際の消費量自体は減少していた点です。 高値により外食や中食でのコメ利用が減り、家庭でもパンや麺類への代替が進んでいましたが、将来不安から在庫だけが積み上がるという矛盾した状況が生まれました 。

流通在庫の偏在問題

買い溜めによる需要の急増は、流通在庫の偏在という新たな問題を生みました。

本来、米の流通システムは産地→卸売業者→小売業者→消費者という段階的な在庫分散により、安定供給を実現しています。 しかし、パニック需要により、在庫が消費者の家庭に一気に移動してしまい、小売店や卸売業者の在庫が枯渇する一方で、家庭内には数ヶ月分の在庫が眠るという歪な状況が生じました。 この偏在により、実際には十分な供給量があるにもかかわらず、流通段階での品薄感が継続しました。 さらに、消費者が大量購入した米を家庭で適切に保管できず、品質劣化や虫害により廃棄せざるを得ないケースも増加しました。 2025年以降、買い溜めした在庫を消費する段階に入ると、今度は新規購入が減少し、小売段階での販売数量が前年比90.8%まで落ち込むという反動が生じています 。​

政府の対応と今後の米価格安定化政策

備蓄米59万トン放出の効果と限界

タイミングの遅れが生んだ混乱

政府は2025年春から、政府備蓄米59万トンを市場に放出する措置を実施しました。

これは米不足と価格高騰に対応するための緊急措置でしたが、その効果は限定的でした。最大の問題は、タイミングの遅れです。米価格が急騰し始めたのは2024年8月でしたが、政府が備蓄米放出を決定したのは2025年2月、実際に店頭に並び始めたのは3月下旬以降でした。つまり、価格高騰から約8ヶ月間、市場は放置されたことになります。この間に消費者の買い溜めと価格高騰の悪循環が定着してしまい、備蓄米が出回った時点では、すでに民間在庫も積み上がり始めていました。

杉山 制空

また、59万トンという量は、年間需要約670万トンの約9%に相当しますが、これを一度に放出するのではなく、数ヶ月にわたって段階的に放出したため、市場へのインパクトは分散され、価格抑制効果は薄れました 。​

需給把握体制の構造的問題

備蓄米放出のタイミングが遅れた背景には、政府の需給把握体制に構造的な問題があります。

農業経済の専門家は、「日本政府が生産量と消費者の需要量を確実に把握していなかったことが一番の原因」と指摘しています。現行の統計システムでは、作況指数や生産量は比較的正確に把握できますが、品質面での問題や、実際の流通可能量、消費者の在庫状況などはリアルタイムで把握することが困難です。2023年産米の場合、作況指数105という数字だけ見れば豊作でしたが、実際には品質問題により流通可能な米は想定より大幅に少なかったのです。また、消費者の買い溜め行動により、家庭内在庫が急増していたにもかかわらず、これを把握する仕組みがありませんでした。結果として、「紙の上では足りているはずなのに、実際には不足している」という事態が生じ、政策判断が後手に回りました。この教訓から、POSデータやビッグデータを活用したリアルタイム需給把握システムの構築が急務となっています 。​​

2026年産米の減産誘導

上位10道県の生産調整方針

2026年産米に向けて、主要産地は一斉に減産または生産横ばいの方針を打ち出しています。

共同通信の調査によると、2025年産生産量上位10道県すべてが、2026年産では増産ではなく、減産または横ばいの生産目安を設定しました。具体的には、新潟県、北海道、秋田県などの主要産地が、前年比でマイナスまたは据え置きの数値を設定しています。この背景には、令和7年産米の豊作により過剰在庫が発生し、価格暴落が懸念されていることがあります。産地や農協の立場からすれば、せっかく豊作になっても価格が暴落すれば農家の収入は減少し、むしろ不作だった方が高値で売れて収入が増えるという皮肉な状況になります。このため、「あえて作りすぎない」という戦略的な生産調整に踏み切ったのです 。​

暴落防止と適正価格のジレンマ

減産誘導は価格暴落を防ぐ効果がある一方で、新たなジレンマも生み出します。

供給を絞りすぎれば、再び価格が高騰し、消費者の負担が増大します。 2024年の米騒動の教訓を忘れて、再び供給不足に陥るリスクもあります。 また、気候変動の影響で、実際の収穫量は作付計画通りにならないことも多々あります。 豊作を見込んで減産したのに、実際には不作になってしまえば、深刻な供給不足に陥ります。

政府と産地は、「暴落を防ぎつつ、不足も起こさない」という極めて難しいバランスを取る必要があります。

杉山 制空

理想的には、消費者が買いやすく、かつ農家が再生産可能な「適正価格」での安定供給ですが、その水準を見極めることは容易ではありません。 JA新潟中央会の伊藤会長は「暴落を防ぎ適正価格への着地を目指す」と述べていますが、何が適正価格かについては、立場によって見解が分かれるのが実情です 。​

おにぎりプロジェクトと消費喚起策

おにぎりプロジェクト

コメ離れ対策の実効性

農林水産省は2025年12月、「おにぎりプロジェクト」を立ち上げました。

これは、価格高騰により進行したコメ離れに歯止めをかけ、米の消費を喚起するための施策です。具体的には、コンビニエンスストアや外食チェーンと連携して、おにぎりの新商品開発や販促キャンペーンを展開します。また、SNSを活用した「おにぎりの魅力」発信や、学校給食でのご飯食推進なども含まれています。おにぎりに着目したのは、手軽に食べられ、若年層にも親しみやすいからです。

杉山 制空

しかし、この施策の実効性には疑問の声もあります。根本的な問題は価格であり、米が高い限り、いくら宣伝しても消費拡大には限界があるという指摘です。また、予算規模も限られており、民間企業の大規模な広告キャンペーンと比べると、訴求力に欠けるという見方もあります 。

​長期的な需要構造改革の必要性

おにぎりプロジェクトのような短期的キャンペーンだけでなく、長期的な需要構造改革が必要だという意見が専門家の間では主流です。

日本人の米消費量は、1962年のピーク時(1人当たり年間118kg)から、2023年には約50kgまで減少しており、半世紀にわたる長期トレンドです。この背景には、食生活の欧米化、パンや麺類の普及、外食・中食の増加、単身世帯の増加など、社会構造の変化があります。

こうした構造的要因に対しては、一時的なキャンペーンでは効果が限定的です。必要なのは、①米を使った新しい食文化の創造(米粉パン、ライスミルクなど)、②簡便性の向上(パックご飯、冷凍ご飯の普及)、③健康価値の訴求(低GI、食物繊維など)、④若年層への食育、⑤輸出拡大による需要創造など、多面的で長期的なアプローチです。米価格の安定化と並行して、こうした需要構造改革を進めることが、日本の米産業の持続可能性を高める鍵となります 。​

《総括》米価格暴落はいつ?2026年内に3300円になる

2026年1月現在、日本の米市場は「店頭での最高値更新」と「業界予測の価格下落」という、ねじれた状況にあります。5kg当たり4,416円という過去最高値が続く一方で、米穀安定供給確保支援機構の価格見通し指数は27と、3ヶ月連続で下落シグナルを示しています。

米価格暴落のタイミングは、2026年に3回訪れると予測されています。

第一に3月の決算期で3,780円程度への下落、第二に6月の在庫調整期で3,000円台後半、そして第三に9月の新米供給開始で3,300円程度まで下がる見通しです。これが実現すれば、最高値5,002円から約34%の大幅下落となります。

価格高騰の真因は、2023年の猛暑による品質低下、長年の減反政策の影響、インバウンド需要の誤算、そして消費者のパニック的買い溜めが複合的に作用した結果です。

わずか2年間で価格が2倍以上に跳ね上がるという異常事態は、需給把握の不備と政策対応の遅れが招いた「人災」の側面も否定できません。

消費者にとって価格下落は歓迎すべきことですが、農家にとっては経営を脅かす深刻な問題です。

玄米60kg当たり3万円を割り込めば、多くの農家が採算割れとなり、離農が加速する恐れがあります。また、高値で仕入れた在庫を抱える流通業者も、評価損と保管コストの二重苦に直面しています。

政府は備蓄米59万トンを放出しましたが、タイミングの遅れにより効果は限定的でした。

2026年産米では主要産地が減産方針を打ち出し、暴落防止を図っていますが、供給不足の再来を招かないよう、慎重なバランスが求められます。

今後の焦点は、「適正価格」での安定供給をいかに実現するかです。

消費者が買いやすく、農家が再生産可能で、流通業者も適正な利潤を確保できる価格水準は、おそらく5kg当たり2,500円から3,000円の範囲でしょう。

2027年に向けて、この水準への軟着陸を実現することが、日本の食料安全保障と農業の持続可能性にとって極めて重要な課題となっています。


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