春の訪れとともに始まる花粉症の季節・・・。
『花粉症は高齢者は少ない』『そもそも高齢者は花粉症にならない』という話を信じて、将来の自分は花粉症から解放されると期待している方も多いのではないでしょうか?
しかし、この「常識」は本当に正しいのでしょうか?
最新の調査によりますと、70歳以上の花粉症有病率は20年前と比較して約4倍に増加しており、60代以上で初めて発症する人も全体の約3割を占めています。
実際に、私が関係する介護の現場やディサービスなどでは、花粉症の症状にお悩みの高齢者の方々は多く存在します。
これまで『花粉症』にかかる高齢者は「少ない」と言われてきましたが、確かに若年層より有病率は低いのは事実ですが、高齢者の花粉症は年々増えているのも事実です。
増えているのに現在も「高齢者は花粉症にならない」と聞くのはなぜでしょう?
その背景には診断基準の変化や免疫老化のメカニズム、さらにはアレルギー発症理論の進化があります。
本記事では、高齢者の花粉症の実態と特徴、そして効果的な対策まで、最新の医学的知見に基づいてわかりやすく解説します。
『花粉症』高齢者は少ない?高齢者の花粉症の実態
高齢者の『花粉症』有病率データ
年齢層別の花粉症有病率
「高齢者は花粉症にならない」という通説がありますが、実際のデータはどうなのでしょうか。
調査によると、実は60代以上の花粉症有病率は決して低くはありません。
60歳以上でも約40%の人がスギ花粉症と推定されているという東京都の調査結果もあります。
年齢層別で見ると、20代から50代までの成人が45~48%程度であるのに対し、60~69歳では36.9%、70歳以上でも20.5%と、若年層より低いものの、決して「少ない」とは言えない数値です。
つまり、高齢者でも5人に1人以上が花粉症に悩まされているという実態があります。
これは「高齢者は花粉症にならない」という通説とは異なる結果であり、高齢者の花粉症問題が見過ごされてきた可能性を示唆しています。
有病率の経年変化
特筆すべきは、高齢者の『花粉症』有病率の増加率が顕著である点です。
70歳以上の有病率は20年前と比較して約4倍に増加しており、これは5~9歳の子どもの増加率と同等の高さです。
東京都の約10年間の調査でも、60歳以上の増加率は3.0倍と高く、若年層の増加率を上回っています。
この増加傾向は、加齢による花粉症の自然寛解を上回るペースで新規発症が起きていることを示唆しています。
また、花粉症の認知度向上により、以前は別の疾患と診断されていた症状が花粉症として正しく診断されるようになったことも一因と考えられます。
高齢者の花粉症有病率の増加は、今後の医療や介護の現場でも重要な課題となる可能性があります。

『花粉症』高齢者発症の実態
60代以上での発症率
「高齢になってから花粉症を発症することはない」という誤解がありますが、
実際には60代以上で初めて花粉症を発症する人は少なくありません。
ユーグレナ社が実施した60歳以上の花粉症患者300人を対象とした調査では、「何歳から花粉症になったか」という質問に対して、「60代以上で発症した」という人が最多で29.3%を占めました。
つまり、約3割の高齢者が60歳を過ぎてから花粉症を発症していることになります。
これは「30代で発症」(19.7%)、「40代で発症」(17.3%)、「20代で発症」(15.7%)よりも高い割合であり、高齢発症が決して珍しくないことを示しています。
このデータは、「高齢者は花粉症にならない」という通説が誤りであることを明確に示しています。
『花粉症』高齢者発症の特徴
高齢になってから発症する花粉症には、いくつかの特徴があります。
まず、症状が若年層と比較して比較的軽い傾向があります。
これは加齢に伴う免疫系の変化によるものと考えられています。
また、高齢発症の花粉症は自然寛解する確率も若年発症に比べて高いという研究結果もあります。
特に50歳以降に発症した男性では自然寛解率が高い傾向にあります。しかし、高齢者の場合、花粉症の症状が他の疾患と混同されやすく、適切な診断や治療が遅れるリスクもあります。
例えば、鼻水や目のかゆみといった症状を単なる加齢現象と誤解してしまうケースも少なくありません。そのため、高齢者が花粉の飛散時期に一致して症状が現れる場合は、花粉症の可能性を考慮して専門医に相談することが重要です。
高齢者の花粉症は「少ない」ではなく「ならない」に至った経緯
『花粉症』への診断基準の歴史的変化
過去の診断基準
高齢者の花粉症は「少ない」ではなく「ならない」に至った経緯としては、診断基準の歴史的変化があります。
10年以上前までは、アレルギー反応が若い層に比べて弱いとされる65歳以上の方に鼻水やくしゃみなどの花粉症と同じ症状が現れた場合、「花粉症」ではなく「血管運動性鼻炎」と診断するのが一般的でした。
血管運動性鼻炎とは、寒暖差などに由来する自律神経の異常によって、鼻炎の症状を示す病気で、いわゆる寒暖差アレルギーとも呼ばれています。
つまり、同じ症状であっても、若年層では「花粉症」、高齢者では「血管運動性鼻炎」と異なる診断名がつけられていたのです。
このような診断基準の違いが、「高齢者は花粉症にならない」という誤った認識を生み出す一因となっていました。
現在の診断基準
現在は診断基準が変わり、抗原が花粉だと特定できれば年齢に関わらず「花粉症」と診断されるようになりました。
具体的には、症状の発現時期が花粉の飛散時期と一致していること、血液検査でスギ花粉などに対する特異的IgE抗体が検出されること、などの客観的な指標に基づいて診断が行われます。
この診断基準の変更により、以前は「血管運動性鼻炎」と診断されていた高齢者の症状の多くが「花粉症」として正しく診断されるようになりました。
また、花粉症という疾患の認知度が上がったことで、症状がある人が積極的に診療を受けるケースも増えています。このような診断基準の変更と疾患認知度の向上が、高齢者の花粉症有病率の統計上の増加にも寄与していると考えられるのです。
通説が広まった背景
医学的認識の変遷
「花粉症は高齢者は少ない」「高齢者は花粉症にならない」という通説が広まった背景には、過去の医学的認識の限界がありました。
かつては、花粉症を発症しやすい年齢は、幼児と高齢層を除く年齢層という傾向が見られると考えられており、これは、免疫系の発達が未熟な幼児期と、免疫系が衰える高齢期には、アレルギー反応が起こりにくいという理論に基づいていました。
また、花粉症の原因となるスギの植林が盛んになったのは戦後であり、高齢者が若い頃にはスギ花粉の飛散量が現在ほど多くなかったという環境要因も関係していたのです。
さらに、花粉症の研究自体が比較的新しい分野であり、高齢者の花粉症に関する詳細な研究データが不足していたことも、この通説が科学的に検証されないまま広まったのが一因と言えるでしょう。
社会的要因
「花粉症は高齢者は少ない」「高齢者は花粉症にならない」という通説が広まった社会的要因としては、高齢者自身が症状を花粉症と認識せず、単なる風邪や加齢による症状として捉えていたことが挙げられます。
昔は花粉症という疾患自体の認知度が低く、鼻水やくしゃみといった症状を季節の変わり目の体調不良と解釈する傾向がありました。
高齢者は若年層に比べて新しい医学情報へのアクセスが限られていることも、適切な診断や治療を受ける機会を減らしていた可能性があります。
さらに、「年をとれば体の不調は当たり前」という諦めの気持ちから、症状があっても医療機関を受診しないケースも少なくありませんでした。
このような社会的要因が、高齢者の花粉症が「少ない」または「存在しない」という誤った認識を強化していたと考えられます。

高齢者の花粉症症状の特徴
『花粉症』症状の重症度
年齢層別の症状比較
花粉症の症状の重症度は年齢層によって異なる傾向があります。
ロート製薬株式会社が2017年に行った調査によると、20代の花粉症患者では「軽症」が30.1%、「中等症」が49.3%、「重症・最重症」が16.4%だったのに対し、60代以上では「軽症」が61.1%、「中等症」が31.9%、「重症・最重症」が6.9%という結果でした。
このデータから明らかなように、若い世代ほど症状を重く感じている人が多く、高齢者では症状が軽い傾向があることがわかります。
これは単に主観的な感覚の違いではなく、実際に免疫反応の強さが年齢によって異なることを示唆しています。
若年層では免疫系が活発に働くため、アレルゲンに対する反応も強く現れる一方、高齢者では免疫系の機能が低下することで、アレルギー反応も弱まる傾向があるのです。
軽症化の傾向
花粉症の症状は年齢を重ねるにつれて軽くなる傾向があります。
同じロート製薬の調査では、「年齢を重ねるにつれて症状が楽になってきたと感じる」と回答した人は全体で19.6%でしたが、60代以上では26.4%と高い割合でした。
これは加齢に伴う免疫系の変化によるものと考えられています。
年齢を重ねることで免疫系が衰え、花粉の抗原を「異物」と認識する能力が弱まることで、アレルギー反応が起きにくくなるのです。
具体的には、マスト細胞からのヒスタミン放出が減少したり、IgE抗体の産生が低下したりすることで、くしゃみや鼻水、目のかゆみといった典型的な花粉症の症状が軽減します。
ただし、個人差も大きく、高齢になっても重症の花粉症に悩まされる方もいますので、一概に「高齢者は症状が軽い」と断言はできません。
『花粉症』症状の長期化と年齢の関係
40代でピークを迎える症状の長期化
花粉症の症状の長期化については、年齢によって異なる傾向が見られます。
調査によると、40代で花粉症の症状の長期化がピークを迎え、約半数(47.0%)が「初めて発症した際と比べて症状が長くなった」と回答しています。
これは40代という年齢が、免疫系がまだ活発に機能している一方で、長年の花粉暴露による感作が進んでいる時期であることが関係していると考えられます。
また、40代は仕事や家庭でのストレスが多い時期でもあり、ストレスによる免疫バランスの乱れが症状の長期化に影響している可能性もあります。
この年代は花粉症の治療を自己判断で中断したり、対症療法に頼りがちだったりする傾向があり、それが症状の長期化につながっている可能性も指摘されています。
50代以降の症状変化
50代以降は、他の年代と比較して花粉症症状の長期化が落ち着く傾向にあります。
これは加齢による免疫応答の変化を反映していると考えられます。
具体的には、加齢に伴いTh2細胞の機能が低下することで、アレルギー反応が弱まり、症状の長期化も抑えられると考えられています。
50代以降は定年退職などによりライフスタイルが変化し、ストレスが減少することも症状の安定化に寄与している可能性があります。
なかには、長年の花粉症経験から適切な対処法を身につけている方も多く、早めの対策や適切な治療を受けることで症状をコントロールできるようになっているケースも少なくありません。
ただし、個人差も大きく、50代以降でも症状が長期化する方もいますので、一人ひとりの状況に合わせた対応が必要です。
高齢者の花粉症対策
高齢者向け花粉症対策の基本
生活習慣の改善
高齢者の花粉症対策として、まず基本となるのは生活習慣の改善です。
質の良い睡眠を十分にとり、バランスよく食事をして、ストレスを溜めないということが基礎となります。
睡眠時間は、シニアの場合はできれば良質な睡眠を8時間はとることが推奨されています。時間的に不規則な生活やアルコール飲料は免疫機能を低下させるので控えるのがおすすめです。
食事面では、乳酸菌をとれるヨーグルト、抗ヒスタミン作用が期待できるDHA・EPAが豊富なサバなどの青身の魚、免疫バランスを整える効果があるパラミロンという食物繊維の一種を含むユーグレナ、ビタミンC、食物繊維、免疫ビタミンとも呼ばれるLPS(リポポリサッカライド)を含むレンコンやゴボウ、ポリフェノールを含むチョコレート、クエン酸を含む梅干しなどが推奨されています。
また、適度な運動はストレス解消にもつながり、習慣にすることが大切です。特に無酸素運動である筋力トレーニングなどよりも、ヨガやストレッチといった有酸素運動がおすすめとされています。
『花粉症対策』高齢者特有の注意点
薬の副作用に関する注意
高齢者が花粉症の薬を使用する際には、副作用に特に注意が必要です。
抗ヒスタミン薬は花粉症の治療によく用いられますが、第一世代の抗ヒスタミン薬は眠気や口の渇き、排尿障害などの副作用が強く、特に高齢者では転倒リスクの増加や認知機能への影響が懸念されます。
そのため、高齢者には副作用の少ない第二世代の抗ヒスタミン薬が推奨されています。
また、高齢者は複数の疾患を持っていることが多く、様々な薬を服用していることが少なくありません。花粉症の薬を追加することで薬の相互作用が起こる可能性があるため、必ず医師や薬剤師に現在服用している薬について相談することが重要です。
さらに、高齢者は腎機能や肝機能が低下していることが多いため、薬の代謝や排泄に影響が出やすく、通常量でも副作用が強く出ることがあります。そのため、高齢者では薬の用量調整が必要になることもあります。
『花粉症』併存疾患との関係
高齢者の花粉症対策を考える上で、併存疾患との関係も重要です。
特に花粉症と口腔問題は切り離せない関係にあります。
花粉症になると、鼻トラブルによって鼻での呼吸が難しくなり、口で呼吸するようになります。
口呼吸では気道に直接空気が入るため、細菌やウイルスが体内に入りやすくなるのです。
口呼吸が増えると口腔内が乾燥しやすくなるため、唾液の自浄作用や殺菌作用が低下します。唾液の分泌が減ると、歯周病のリスクもアップします。
歯周病になると、抵抗力が弱い高齢者は歯周病菌を排除できず、心疾患や脳卒中のリスクを高めたり糖尿病を悪化させたりなど、さまざまな全身疾患になるリスクが高まるのです。
そのため、花粉症の季節には特に口腔ケアに注意し、こまめな水分補給を心がけることが重要です。
高齢者は体内の水分量が減っており、口の渇きを感じにくくなっているため、食事以外にも水分補給の時間を作っておくと安心です。
『花粉症は高齢者は少ない』『高齢者は花粉症にならない』総括
『花粉症は高齢者は少ない』『高齢者は花粉症にならない』という通説は誤りであることが明らかになりました。
実際には、60歳以上でも約40%の人がスギ花粉症と推定されており、70歳以上の有病率も20.5%と決して少なくありません。
さらに、60代以上で初めて花粉症を発症する人も約3割存在し、高齢発症が珍しくないことがわかっています。
この通説が広まった背景には、診断基準の歴史的変化があります。
以前は65歳以上の方に花粉症と同じ症状が現れた場合、「花粉症」ではなく「血管運動性鼻炎」と診断するのが一般的でしたが、現在は抗原が花粉だと特定できれば年齢に関わらず「花粉症」と診断されるようになりました。
高齢者の花粉症の特徴として、若年層と比較して症状が軽い傾向があります。
これは加齢による免疫系の変化、特にTh2細胞の機能低下やIgE抗体レベルの低下に関連していると考えられます。
高齢者の花粉症対策としては、質の良い睡眠、バランスの良い食事、適度な運動などの生活習慣の改善が基本となります。
花粉症は正しい対策や免疫バランスを整える努力で症状を軽減できる可能性がある病気です。
高齢者も適切な対策を行うことで、花粉症の症状を軽減し、快適な生活を送ることができるでしょう。