高齢者がエアコンを「寒い」と感じるのは、わがままでも気のせいでもなく、加齢による体の変化が原因です。そして、寒いからといってエアコンを消してしまうと、室内熱中症のリスクが一気に高まります。
結論から言うと、対策のポイントは次の3つです。
杉山 制空この記事では、高齢の親がエアコンを嫌がる理由と、寒がらせずに熱中症を防ぐ具体的な方法を解説します。
なぜ高齢者はエアコンを「寒い」と感じるのか
加齢で温度を感じるセンサーが鈍くなる
人は皮膚にある温度センサーで暑さ・寒さを感じ取りますが、この感覚は加齢とともに鈍くなります。環境省の「高齢者のための熱中症対策」でも、加齢により暑さやのどの渇きに対する感覚が鈍くなることが指摘されています。



つまり高齢者は、「実際の室温」と「本人が感じる温度」にズレが生じやすい状態です。室温が28℃を超えていても暑いと感じず、逆にエアコンの風がわずかに当たるだけで「寒い」と強く感じることがあるということです。
筋肉量が減り、体が熱を作りにくい
体温の多くは筋肉で作られます。高齢になると筋肉量が減るため、若い人と同じ室温でも体の中で作られる熱が少なく、冷えを感じやすくなります。特に痩せ型の方や、食が細くなってタンパク質が不足している方は、この傾向が顕著です。
血流の低下で手足の先から冷える
加齢により血管の柔軟性が落ち、手足の末端まで血液が届きにくくなります。エアコンの冷気は床にたまるため、椅子に座って過ごす時間が長い高齢者は、足元から冷えを感じやすいのです。「体は平気だけど足が寒い」という訴えは、この仕組みによるものです。
「寒いから消す」が命に関わる理由
熱中症搬送者の約6割が高齢者
総務省消防庁の発表によると、2025年5月から9月の全国の熱中症による救急搬送者は10万人を超えて過去最多となり、そのうち65歳以上の高齢者が約57%を占めました。
参考:総務省消防庁 熱中症情報
高齢者の熱中症は「室内・夜間」で起こる
熱中症は炎天下の屋外だけで起こるものではありません。高齢者の場合、むしろ自宅の室内で発症するケースが多く、夜間の睡眠中に脱水が進んで朝方に倒れる例も少なくありません。



「寒いから」と夕方にエアコンを切り、閉め切った部屋で朝まで過ごす。この行動パターンが、夜間熱中症の典型的な入り口となっています・・・。
暑さに気づけないまま脱水が進む
前述のとおり、高齢者は暑さとのどの渇きの両方を感じにくくなっています。本人は「暑くない」「のどは渇いていない」と本気で思っているため、周囲が室温と水分補給を客観的に管理する必要があります。本人の感覚だけに任せない、というのが高齢者の熱中症対策の大原則です。
高齢者に寒がらせないエアコンの使い方
設定温度は26〜28℃、消すのではなく上げる
高齢者が「寒い」と言ったとき、選択肢は「消す」ではなく「設定温度を1〜2℃上げる」です。室温28℃前後・湿度60%以下を目安に保てば、熱中症リスクを抑えながら寒さも感じにくくなります。
風向きは水平または上向きにする
冷気は自然に下へ降りるため、風向きを水平か上向きに設定すれば、直接風が体に当たらず部屋全体が緩やかに冷えます。「エアコンの風が嫌い」という高齢者の多くは、実は冷たい風が肌に当たる感覚を嫌っています。風向きの調整だけで「寒い」という訴えが減るケースは非常に多いです。
除湿(ドライ)運転を活用する
同じ室温でも、湿度が下がると体感温度は下がり、汗が蒸発しやすくなって熱がこもりにくくなります。「冷房は寒いけど除湿なら大丈夫」という高齢者は多いため、冷房を嫌がる場合はまず除湿運転から試してみてください。



私も基本は除湿運転です・・・安全環境維持のための方法ですね
扇風機・サーキュレーターで冷気を循環させる
冷気が床にたまると、足元だけ冷えて上半身は暑いという不快な状態になります。サーキュレーターを天井に向けて回し、空気をかき混ぜることで、設定温度を下げなくても部屋全体が均一に涼しくなります。結果として設定温度を高めに保てるため、寒がりの高齢者との相性が良い方法です。


就寝時はタイマーで切らず、つけたままにする
「寝るときは体に悪いから切る」という考えは、猛暑の夜には逆効果です。夜間も室温が28℃を下回らない熱帯夜では、エアコンを朝までつけたままにするのが安全です。寒さが心配なら、設定温度を28℃にし、長袖のパジャマと薄手の掛け布団で調整してください。
服装と身の回りの冷え対策
エアコン側の調整と合わせて、体を温める工夫を組み合わせると、「涼しい部屋で寒くない」状態を作れます。例えば、以下の4つの方法です


「エアコンを消す」以外の寒さ対策の選択肢を、本人の手の届く場所に用意しておくことがポイントです。
水分補給とセットで考える
エアコンで室温を管理しても、水分が足りなければ脱水は進みます。高齢者はのどの渇きを感じにくいため、「渇いたら飲む」ではなく「時間を決めて飲む」が基本です。
食事量が減っている高齢者は、食事から摂れるはずの水分と塩分も不足しがちです。1日3食しっかり食べること自体が、熱中症対策の土台になります。
離れて暮らす親の「エアコン問題」への対処法
電話で「エアコンつけてる?」と聞いても解決しない



離れて暮らす親に電話で確認しても、「つけてるよ」「暑くないから大丈夫」という返事が返ってくるのが普通です。本人に暑さの自覚がない以上、口頭確認には限界があります。
室温が「見える」仕組みを作る
- スマートリモコンや見守りセンサーで、離れた場所から室温を確認する
- エアコンを遠隔操作できる機種なら、家族がスマホから冷房を入れる
- 温湿度計を電話口で読み上げてもらう習慣をつける(機器が苦手な親向け)



「暑い?」ではなく「温度計は何度?」と聞く。これだけで会話が主観から客観に変わります。
毎日誰かが顔を見る体制を作る



猛暑の時期に最も心強いのは、毎日誰かが本人の顔を見て様子を確認してくれる体制です。宝塚市・西宮市エリアで高齢者向け配食サービスを行うニコニコキッチン宝塚西宮店では、お弁当を毎日手渡しでお届けし、その際に顔色や室内の様子を確認しています。「部屋が異様に暑い」「顔色がおかしい」といった変化があれば、ご家族やケアマネジャーへ連絡する安否確認の役割も担っています。


高齢者とエアコン【よくある質問】
親がどうしてもエアコンを消してしまいます。どうすればいいですか?
まず「寒い」の原因を特定してください。風が直接当たっているなら風向き変更、足元の冷えなら靴下とひざ掛け、設定温度が低すぎるなら28℃への引き上げで解決することが多いです。それでも消す場合は、遠隔操作できるスマートリモコンの導入や、リモコンの設定温度に下限ロックをかけられる機種への買い替えも検討してください。
扇風機だけで乗り切るのは危険ですか?
室温が28℃を大きく超える日は危険です。扇風機は空気を動かすだけで室温を下げないため、猛暑日には熱風をかき混ぜることになります。高齢者は汗をかく機能も低下しているため、扇風機の風による冷却効果も若い人ほど得られません。真夏はエアコンとの併用が前提です。
電気代を気にしてエアコンを使いたがりません
熱中症で救急搬送・入院となった場合の医療費や体力低下のリスクと比べれば、夏場の電気代は必要な出費です。最新のエアコンはこまめにオンオフするより、つけたままの方が消費電力を抑えられる場合が多いことも伝えてください。また、電気・ガス料金への政府補助が実施されている期間は、その分負担が軽くなることも説得材料になります。
《総括》高齢者がエアコンを「寒い」と感じる理由と対策
高齢者がエアコンを寒いと感じるのは、温度感覚の鈍化・筋肉量の減少・血流低下という加齢に伴う体の変化が原因です。だからこそ「寒いなら消す」ではなく、次の対策で「涼しくて寒くない部屋」を作ることが重要です。
- 設定温度26〜28℃・風向き水平・除湿運転で調整する
- 靴下・ひざ掛け・カーディガンで足元と体を温める
- 時間を決めた水分補給を習慣にする
- 離れて暮らす家族は室温の見える化と毎日の見守り体制を整える
本人の「暑くない」「寒い」という感覚だけに任せず、室温計の数字と周囲の見守りで、この夏を安全に乗り切りましょう。






