将来への備えはしたいけれど、税金のことは難しくてよく分からない…。
そんなあなたにこそ知ってほしいのが「ステルス増税」です。
戦闘機のようにレーダーに映らず忍び寄るこの増税は、私たちの知らない間に着々と進んでいます。
この記事では、ステルス増税の仕組みや、2025年以降に予定されている具体的な負担増の内容を、どこよりも分かりやすく解説します。
所得税や社会保険料、子育て支援金など、身近なテーマを取り上げ、あなたの疑問を解消します。
ステルス増税とは?気づかぬうちに負担が増える仕組み
ステルス増税の基本的な意味【わかりやすく解説】
ステルス増税とは、まるでレーダーに映らないステルス戦闘機のように、国民に気づかれにくい形で実質的な税負担を増やしていく手法のことです。
政府は、消費税のような直接的で分かりやすい増税を行うと、国民からの強い反発を受けることを恐れています。そのため、社会保険料の料率を少しずつ引き上げたり、各種控除(税金の計算時に収入から差し引けるもの)の額を縮小したり、これまで非課税だったものに課税したりするなど、目立たない方法を組み合わせて、じわじわと負担を増やしていくのです。
多くの人は個々の改正に気づきにくいため、「なんだかよく分からないけど手取りが減った」と感じることはあっても、明確な増税として認識しづらいのが特徴です。
なぜステルス増税が行われるのか?その背景
ステルス増税が行われる主な理由は、政府が増税に対する国民の反発を避けたいからです。
少子高齢化が進む日本では、社会保障費が増大し、国の財政は厳しい状況にあります。また、近年では防衛費の増額なども課題となっています。これらの財源を確保するためには増税が必要になる場面が多いのですが、直接的な増税は選挙での支持率低下に直結しかねません。
そこで、国民が気づきにくい「ステルス」な方法で、社会保険料の引き上げや税制の細かな変更を通じて、実質的な負担増を図ろうとするのです。
財務省や与党の税制調査会などが、国民感情を考慮しながら巧妙に制度設計を行っていると指摘されています。
【ステルス増税とは】進行中&予定されているステルス増税リスト
2025年以降に注意すべき増税項目【いつから何が?】
2025年以降、私たちの負担増につながる可能性のある制度変更が目白押しです。
特に社会保険料関連の負担増が予定されています。
まず、後期高齢者医療保険料(75歳以上)の上限額引き上げです。段階的に引き上げられており、2025年(令和7年)には年80万円まで上がります。これは主に年収が高い高齢者に影響します。
また、国民健康保険料の上限額も引き上げられる見込みです。
さらに、少子化対策の財源として、2026年4月からは「子ども・子育て支援金」が公的医療保険料に上乗せして徴収される予定です。

この他にも、国民年金の納付期間延長(60歳から65歳へ)や、介護保険料の負担増(2割負担対象者の拡大)なども検討されており、社会保険料負担は今後も増える可能性が高いです。

岸田政権下で検討・実施された増税策(一覧表)
岸田政権下では、「増税メガネ」と揶揄されるほど、多くの負担増策が検討・実施されてきました。以下に主なものをまとめます。
項目 | 内容・状況 | |
---|---|---|
所得税 | 定額減税(一時的)実施後、防衛費増額の財源として増税時期を検討中 | |
復興特別所得税 | 防衛費財源のため、徴収期間を14~20年延長する方向で議論中 | |
法人税 | 防衛費財源のため、付加税方式で4.0~4.5%の負担増(2025年度以降予定) | |
たばこ税 | 防衛費財源として増税(時期検討中)、健康増進目的でも増税傾向 | |
森林環境税 | 2024年度から住民税に年1,000円上乗せで徴収開始 | |
生前贈与加算期間延長 | 相続税対策としての生前贈与について、加算期間を死亡前3年から7年に延長(施行済み) | |
子ども・子育て支援金 | 少子化対策財源として、公的医療保険料に上乗せ徴収(2026年4月開始予定)。「実質負担なし」との説明に批判も。年収に応じ月数百円~千数百円の負担増。 | |
後期高齢者医療保険料 | 75歳以上の保険料上限額を段階的に引き上げ(2025年に80万円へ)1。出産育児一時金の財源一部負担も。 | |
国民健康保険料 | 保険料上限額の引き上げ | |
国民年金保険料 | 納付期間を現行の60歳までから65歳までに5年間延長することを検討中 | |
介護保険料 | 利用料の2割負担対象者を拡大する方向で検討中 | |
退職金課税の見直し | 勤続年数に応じた控除額(退職所得控除)の優遇を見直し、勤続20年超部分の控除額引き下げなどを検討中 | |
通勤手当課税 | 現在月15万円まで非課税の通勤手当を課税対象とすることを検討中(社会保険料はすでに課税対象) | |
配偶者控除・扶養控除 | 控除の縮小・廃止を検討中。「年収の壁」問題解消なども理由に挙げられる。児童手当拡充との関連も。 | |
生命保険料控除 | 控除の縮小・廃止を検討中。投資との類似性を指摘。 | |
各種贈与特例の廃止・縮小 | 結婚・子育て資金(2025年3月末終了予定)、教育資金(2026年3月末終了予定)の一括贈与非課税措置の廃止・縮小。 | |
インボイス制度導入 | 実質的に免税事業者への課税強化につながると指摘されている(2023年10月導入) |
※上記は検討中のものも含まれ、今後の動向によって変更される可能性があります。
特に注目!社会保険料と子育て支援金の行方
上がり続ける社会保険料、今後の見通しは?
社会保険料は、税金と並んで私たちの大きな負担となっていますが、今後も上昇傾向が続くと予想されます。
特に注目すべきは、高齢化に伴う医療費や介護費の増大に対応するための負担増です。
具体的には、後期高齢者医療保険料や介護保険料の負担増が検討・実施されています。
75歳以上の医療費窓口負担が一部引き上げられたことに加え、保険料の上限額も段階的に引き上げられています。また、出産育児一時金の財源の一部を高齢者も負担する仕組みも導入されます。
介護保険料についても、現役世代だけでなく、高齢者の自己負担割合(1割から2割へ)の対象者を広げる方向で検討が進んでいます。
さらに、国民年金の納付期間を65歳まで延長する案も議論されており、これが実現すれば生涯の保険料負担は約100万円増加する計算になります。
少子高齢化が進む限り、社会保険料の負担増圧力は今後も続くと考えられます。
「子育て支援金」は実質的な増税?仕組みと影響
岸田政権が「異次元の少子化対策」の財源として打ち出した「子ども・子育て支援金」は、実質的な増税ではないかとの批判を集めています。
この制度は、2026年4月から公的医療保険料(健康保険料など)に上乗せする形で、全国民・全世帯から徴収される予定です。
政府は「歳出改革と賃上げにより実質的な負担は生じない」と説明していますが、徴収される側からすれば、新たな負担が増えることに変わりはありません。
こども家庭庁の試算によれば、年収600万円の人で月1,000円、年収1,000万円の人で月1,650円程度の負担が見込まれています。
集められたお金は児童手当の拡充などに使われるため、子育て世帯にとっては恩恵がある一方で、独身者や子供がいない世帯、子育てが終わった世帯にとっては、負担だけが増える形となります。このことから、「独身税」や「ステルス増税」の典型例だと指摘されているのです。
サラリーマンも他人事じゃない!所得関連のステルス増税
退職金課税の見直し議論【退職金が減る?】
長年勤め上げたご褒美ともいえる退職金ですが、これに対する税制優遇が見直される可能性が出てきています。
現在の制度では、勤続年数が長いほど税負担が軽くなる「退職所得控除」という仕組みがあります。
勤続20年までは年40万円、20年を超えると年70万円が控除されるため、長期間同じ会社に勤めた人ほど有利になっています。
しかし政府は、この制度が転職などを妨げる「雇用の流動化」を阻害する要因になっているとして、見直しを検討しています。
具体的な案としては、勤続20年超の部分の控除額を年70万円から年40万円に引き下げる、あるいは控除自体を縮小・廃止するといったものが議論されています。
これが実現すれば、特に長年勤めて退職金を受け取る予定のサラリーマンにとっては、手取り額が大きく減少する可能性があり、将来設計にも影響を与えかねません。

通勤手当も課税対象に?サラリーマンへの影響
毎日会社に通うためにかかせない通勤手当ですが、これも課税対象になるかもしれません。
現在、電車やバスなどの公共交通機関を利用する場合、月15万円までの通勤手当は所得税がかからない非課税扱いとなっています。しかし、政府内ではこの通勤手当を給与の一部とみなし、課税対象とする案が検討されています。
もしこれが実現すれば、通勤手当の分だけ課税対象となる所得が増え、所得税や住民税の負担が増加することになります。

ステルス増税への対策はある?
個人でできる節税対策の基本
ステルス増税はじわじわと進むため、完全に避けることは難しいのが現実です。
税理士の永井氏も「これは不可避」と述べており、収入がある限り何らかの形で課税されるため、基本的な対策としては「おとなしく受け入れる」しかないという厳しい見解もあります。
しかし、諦める前に、個人でできる範囲の節税対策を知っておくことは重要です。
例えば、iDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISA(少額投資非課税制度)といった国の制度を活用すれば、掛金が所得控除の対象になったり、運用益が非課税になったりするメリットがあります。
また、生命保険料控除や医療費控除など、利用できる控除は漏れなく申請することも大切です。
ただし、生命保険料控除なども将来的には見直される可能性が指摘されているため、制度の変更には常に注意を払う必要があります。
根本的な対策は難しいものの、利用可能な制度を最大限活用し、少しでも手元に残るお金を増やす努力は続けたいところです。
制度変更に関する情報収集の重要性
ステルス増税は「気づかれにくい」ことが特徴であるため、どのような制度変更が議論され、いつから実施されるのか、常にアンテナを張って情報を収集することが非常に重要です。
政府や与党の税制調査会での議論、税制改正大綱の発表、関連法案の国会審議などをニュースや専門サイトでチェックする習慣をつけましょう。
社会保険料率の変更、各種控除額の見直し、非課税枠の縮小・廃止などは、私たちの手取り収入に直接影響します。
例えば、「子ども・子育て支援金」のように、当初の説明と実際の負担感が異なるケースもあります。
制度の内容を正しく理解し、自分の家計にどのような影響があるのかを試算してみることが大切です。情報収集を怠らず、変化に早めに気づき、家計の見直しや必要な対策を検討できるように備えておきましょう。
【ステルス増税】よくある質問(Q&A)
Q1: ステルス増税とは、具体的にどういう意味ですか?分かりやすく教えてください。
A1: ステルス増税とは、消費税率の引き上げのように明確で分かりやすい増税ではなく、国民が気づきにくいような、じわじわとした方法で実質的な税金や社会保険料の負担を増やしていくことを指します。例えば、社会保険料の料率を少しずつ上げたり、税金の計算で収入から差し引ける控除額(給与所得控除、配偶者控除、生命保険料控除など)を減らしたり、これまで税金がかからなかったもの(通勤手当など)に新たに税金をかけたりするようなやり方です。一つ一つの変更は小さくても、積み重なることで家計への負担はじわじわと増えていきます1。政府が国民の反発を避けるために行うことが多いと言われています。
Q2: 岸田政権で導入された、または検討されているステルス増税にはどんなものがありますか?一覧で知りたいです。
A2: 岸田政権下では多くの負担増策が指摘されています。主なものとしては、①復興特別所得税の徴収期間延長、②森林環境税(年1,000円)の新設、③「子ども・子育て支援金」の創設(医療保険料に上乗せ、2026年開始)、④後期高齢者医療保険料の上限額引き上げ、⑤国民年金保険料の納付期間延長(65歳まで)の検討、⑥退職金への課税強化(控除見直し)の検討、⑦通勤手当への課税化の検討、⑧配偶者控除や扶養控除、生命保険料控除の見直し検討、⑨生前贈与の相続税加算期間延長(3年→7年)などが挙げられます。これらは検討中のものも含まれますが、着実に負担増につながる項目が増えています。
Q3: 2025年以降、私たちの税金や社会保険料負担はどうなりますか?特に注意すべき点は?
A3: 2025年以降も、税金や社会保険料の負担は増加する傾向にあると考えられます。特に注意すべきは社会保険料関連です。2025年には後期高齢者医療保険料の上限額がさらに引き上げられます(年80万円)。また、国民健康保険料の上限額も引き上げられる見込みです。2026年4月からは「子ども・子育て支援金」の徴収が始まります。国民年金の納付期間延長(65歳まで)や介護保険料の負担増(2割負担対象者の拡大)も引き続き検討課題です。所得税についても、防衛費増額の財源として増税時期が検討されています。退職金課税や通勤手当課税の見直しも実現すれば大きな影響があります。全体として、じわじわと負担が増えていく可能性が高いので、家計の見直しや情報収集がより重要になります。
【総括】ステルス増税とは?国民が出来る事
日本のステルス増税は着実に進行しており、国民の実質的な負担は確実に増加しています。
政府は国民の反感を避けるため、目立たない形で増税を進める傾向にありますが、その実態を把握し、自身の経済状況への影響を正確に理解することが重要です。
今後も増税の流れは継続すると予想され、特に社会保険料の増加、独身税の導入、退職金増税、通勤手当の課税化など、日常生活に直結する分野での増税に注意が必要です。
