包括支援センターの4つの役割とは?仕事内容と相談の流れを解説

地域包括センターの役割

「包括支援センターって、具体的に何をしてくれる場所なの?」という疑問をお持ちではありませんか。

この記事では、高齢者とその家族を支える「地域包括支援センター」の役割について、分かりやすく解説します。

地域包括センターが担う4つの核心的な業務、日常的な仕事内容、ケアマネジャーとの明確な違い、そして実際に相談する際の具体的な流れまで、知りたい情報を網羅しました。

杉山 制空

私たち、配食サービスとしても、地域包括支援センターとの連携は、なくてはならないものです。

最後まで読んでいただければ、あなたの悩みを解決する糸口がきっと見つかるはずです。

目次

地域包括支援センターの役割と目的

地域包括支援センターは、高齢者が要介護状態になることを防ぎ、住み慣れた地域で自分らしい生活を最期まで続けられるように支援することを目的とした「地域の総合相談窓口」です。

高齢者の暮らしに関する悩みは、単に身体的な問題だけでなく、経済的な不安、社会的な孤立、権利の問題など多岐にわたります。これらの複雑な課題に対して、保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)といった専門職がチームとして連携し、一人ひとりの状況に合わせた包括的なサポートを提供します。介護保険サービスだけでなく、地域のさまざまな社会資源や制度を結びつけ、高齢者の自立した生活を多角的に支えるハブ機能としての役割を担っています。

【地域包括支援センター】設置主体と運営体制

地域包括支援センターの設置主体は、原則として各市区町村です。

市区町村が直接運営する「直営型」のほか、社会福祉法人や医療法人、NPO法人などに運営を委託する「委託型」があります。

全国の各中学校区に1か所程度の割合で設置されており、住民が身近な場所で相談しやすい体制が整えられています。センターには、保健医療分野の専門家である「保健師(または経験豊富な看護師)」、福祉分野の専門家である「社会福祉士」、介護分野の専門家である「主任介護支援専門員」の3職種が必ず配置されています。

この3職種がそれぞれの専門性を活かしながら連携する「チームアプローチ」により、複雑化・多様化する高齢者のニーズに的確に対応できる運営体制が構築されています。

 包括支援センターの4つの主な役割(仕事内容)

地域包括支援センターは以下の4つの重要な役割を担い、高齢者の生活を多角的に支援しています。

1. 総合相談・支援業務

総合相談・支援業務は、高齢者本人やその家族、地域住民からの医療・介護・福祉・生活全般に関するあらゆる相談を一つの窓口で受け付ける「ワンストップサービス」の機能です。

相談内容は多岐にわたり、「介護費用の負担が心配」「認知症のような症状が出ているが病院に行くのを嫌がる」「最近、親の物忘れがひどくなった」といった具体的な悩みから、「将来の介護が不安」という漠然とした心配事まで幅広く対応します。

専門職員が相談内容を丁寧に聞き取り、課題を整理した上で、適切な制度やサービス、専門機関を紹介し、必要に応じて関係機関との連絡調整を行います。要介護認定の申請手続きのサポートや代行も重要な業務の一つです。

2. 介護予防ケアマネジメント

介護予防ケアマネジメントは、要支援1・2の認定を受けた高齢者や、今後支援や介護が必要となる可能性のある高齢者を対象に、介護状態の悪化を防ぎ、自立した生活を維持・向上させるための支援を行う業務です。

具体的には、高齢者の歩行状態などの移動能力、社会参加の状況、心身の健康管理、日常生活の状態について詳細に把握・分析し、個々の状況に応じた「介護予防ケアプラン」を作成します。そして「運動器機能向上」「栄養改善」「口腔機能向上」「認知症予防」「閉じこもり予防」「うつ予防」などの介護予防サービスへの参加を促し、定期的に効果を評価しながら支援を継続します。

3. 権利擁護

権利擁護業務は、高齢者が安心して地域で生活するために、その権利と尊厳を守る専門的な支援を行う業務です。

主な内容として、高齢者虐待の防止と早期発見・対応、悪質な詐欺や消費者被害の相談対応、成年後見制度の活用支援があります。

高齢者虐待については、身体的虐待、介護・世話の放棄(ネグレクト)、心理的虐待、性的虐待、経済的虐待の5つの類型があり、地域包括支援センターはこれらの兆候を早期に発見し、警察や福祉機関と連携して迅速に対応します。また、認知症などにより判断能力が低下した高齢者を経済的搾取や詐欺から守るため、成年後見制度の利用支援も重要な役割です。

4. 包括的・継続的ケアマネジメント支援

包括的・継続的ケアマネジメント支援は、地域のケアマネジャー(介護支援専門員)を専門的に支援し、地域全体のケアマネジメントの質を向上させる業務です。

具体的には、ケアマネジャーからの個別相談への対応、困難事例に対する指導・助言、地域ケア会議の開催を通じた自立支援型ケアマネジメントの推進を行います。

また、医療機関、介護サービス事業所、民生委員など多職種が連携する地域のネットワークづくりを推進し、高齢者にとって暮らしやすい地域環境の整備を支援します。いわば「ケアマネジャーのための相談窓口」として機能し、地域全体の支援体制を強化する司令塔の役割を担っています。

【地域包括支援センター】専門職によるチームアプローチ

これらの4つの役割を効果的に実践するため、地域包括支援センターには保健師(または経験豊富な看護師)、社会福祉士、主任介護支援専門員の3職種が必ず配置されています。各専門職がそれぞれの専門性を活かしながら連携する「チームアプローチ」により、複雑化・多様化する高齢者のニーズに的確に対応しています。

地域包括支援センターは65歳以上の方やその家族であれば誰でも無料で相談できる公的な機関です。

お住まいの地域を担当するセンターに直接出向いたり、電話で相談したりすることで、専門職による包括的な支援を受けることができます。

地域包括支援センターは、高齢者とその家族にとって身近で頼りになる総合相談窓口です。介護に関する知識がなくても、専門職が親身に相談に乗り、適切な支援へと導いてくれます。将来への不安や現在の困りごとがあれば、一人で抱え込まず、まずはお住まいの地域のセンターに気軽に相談してみることをお勧めします。

包括支援センターとケアマネジャーの違い

役割と対象者の違い

地域包括支援センターとケアマネジャーは、どちらも高齢者の介護を支える専門家ですが、その役割と主な対象者には明確な違いがあります。

地域包括支援センターは、その地域に住むすべての高齢者(65歳以上)を対象とし、介護予防から権利擁護、総合相談まで幅広く対応する「地域」の拠点です。一方、ケアマネジャー(居宅介護支援事業所に所属)は、主に要介護1以上の認定を受けた方を対象とし、その方が適切な介護サービスを利用できるよう「個別」のケアプランを作成し、サービス事業者との調整を行う専門職です。

つまり、包括支援センターが「広く浅く」地域全体を支えるのに対し、ケアマネジャーは「狭く深く」個別の利用者を支える役割と言えます。

連携の重要性

役割が異なる両者ですが、高齢者を支えるという共通の目標を持っており、密接な連携が不可欠です。

例えば、包括支援センターに「最近、親の足腰が弱ってきた」と相談があった場合、センターが初期対応を行い、要介護認定の申請を支援します。そして、要介護認定が出た後は、地域のケアマネジャーに引き継ぎ、具体的なケアプラン作成を依頼します。また、ケアマネジャーが担当する利用者について、虐待が疑われるケースや複雑な家族関係の問題に直面した場合、ケアマネジャーは包括支援センターに相談し、権利擁護の専門家である社会福祉士などと連携して対応します。このように、両者がそれぞれの専門性を活かして協力することで、切れ目のない支援が実現するのです。

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地域包括支援センターの相談の流れ

地域包括支援センターへの相談は、来所または電話で受け付けており、無料で利用できます。受付後は担当職員が相談内容を聞き取り、専門家による訪問面談を経て、必要なサービスや事業所を紹介する流れになっています。

1. 来所または電話での相談

高齢者本人の住所を管轄する地域包括支援センターへ来所、または電話で相談をします。

受付担当者が相談を聞き、今後どのような支援が必要なのかを具体的に助言し、専門家につなげてくれます。管轄の地域包括支援センターがわからない場合は、市町村の介護保険担当窓口に問い合わせると確認できます。

離れて暮らす親について家族が相談したい場合は、支援対象者となる親が住んでいる場所の地域包括支援センターに問い合わせる必要があります。

電話での相談も可能で、まずは一度該当の地域包括支援センターに問い合わせてみるといいでしょう。

専門家による訪問・面談

受付担当者から、地域包括支援センターに配置されている各専門家へ情報が引き継がれ、保健師・看護師・主任介護支援専門員・社会福祉士などの専門家が自宅を訪問し本人と面談を行います。介護サービスの利用を希望している場合は、担当のケアマネジャーも同席します。​​

3.問題の把握と評価

高齢者が直面する問題を具体的に把握し、その背景や原因を評価します。健康面の問題であれば医療機関との連携を通じて詳細な健康状態を確認し、経済的な問題であれば収入や支出の状況を詳しく調査します。

必要なサービス・事業所の紹介

困りごとを解決するために必要なサービスや事業所を紹介します。上記の評価をもとに、高齢者のニーズに合った支援サービスが提案され、介護が必要な場合には訪問介護やデイサービスの利用、経済的支援が必要な場合には生活保護や経済的援助制度の利用などが相談者やそのご家族に提案されます。

※サービス利用のための申請や手続きのサポートや代行なども行ってくれます。​

フォローアップ

支援サービスが提供された後も定期的なフォローアップを実施し、必要に応じて支援内容を見直します。介護サービスの利用状況や健康状態の変化を定期的にチェックし、必要に応じて追加支援を行います。

地域包括支援センターへの相談時のポイント

介護に関する相談を初めてする場合「どのようなことを伝えてサポートを受ければいいのかわからない」ということもあります。

そのような場合であっても、職員が相談者の置かれている状況に応じて丁寧に聞き取りをしてくれるため、まずはお住まいの地域の地域包括支援センターへ相談するのが良いでしょう。相談をするだけでも心が楽になったり解決策が浮かんだりすることもありますから・・・。

【総括】地域包括支援センターの役割とは?

地域包括支援センターは、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けるための「総合相談窓口」です。

その役割は、単に介護サービスの紹介にとどまりません。介護が必要になる前の「介護予防ケアマネジメント」、日々の困りごとに対応する「総合相談」、詐欺や虐待から身を守る「権利擁護」、そして地域のケアの質を高める「包括的・継続的ケアマネジメント支援」という4つの柱で、高齢者の生活を多角的に支えています。

専門職がチームで対応するため、複雑な問題にも的確な支援が期待できます。高齢の家族に心配事がある、自分自身の将来が不安、そんな時は一人で抱え込まず、まずはお住まいの地域の包括支援センターに相談することが、解決への第一歩となるでしょう。

相談は無料で、電話一本から始めることができます。介護に関する知識がなくても心配ありません。高齢社会において、その役割はますます重要になっており、いざという時に頼れる場所として覚えておくことが大切です。

ケアマネジャーが個別のプランナーだとすれば、包括支援センターは地域全体のプロデューサーのような存在です。

両者が連携することで、質の高い支援体制が築かれています。悩みがあれば、まずは最寄りの地域包括支援センターに連絡してみましょう。

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