「オレオレ詐欺」「還付金詐欺」…ニュースでよく耳にする特殊詐欺。
「自分は大丈夫」と思っていませんか?しかし、特殊詐欺の手口は年々巧妙化し、2025年現在では若者から高齢者まで誰もが被害に遭う可能性があります。
警察庁の最新データによると、特殊詐欺の被害額は依然として高水準で推移しており、その手口も多様化しています。
この記事では、「特殊詐欺と一般の詐欺はどう違うの?」「最近はどんな手口が流行っているの?」「どうすれば被害を防げるの?」といった疑問に、徹底的にお答えします。
特殊詐欺の10類型から最新の傾向、具体的な対策まで網羅的に解説。
さらに、なぜ特殊詐欺が増加し続けているのか、その背景にも迫ります。
この記事を読めば、あなたとあなたの大切な家族を詐欺の脅威から守るための知識が身につきます。安心して暮らせる毎日のために、ぜひ最後までお読みください。
一般的な詐欺と特殊詐欺の決定的な違い
一般的な詐欺と特殊詐欺の最も大きな違いは、犯行の手段と対面性の有無です。
一般的な詐欺は、特定の相手に対して、対面で言葉巧みにだますケースが多く見られます。例えば、訪問販売での悪質な契約や、投資話を持ちかけて直接金銭をだまし取るような場合です。
一方、特殊詐欺は、電話、ハガキ、メールといった通信手段を悪用し、被害者と顔を合わせることなく(非対面で)行われるのが基本です。
これにより、犯人は不特定多数の相手にアプローチすることが可能になります。
また、ターゲット層として、判断力が低下している場合がある高齢者が狙われやすい傾向もありますが、最近では若年層をターゲットにした手口も増えています。
さらに法的な分類でも違いがあり、前述の通り、特殊詐欺には詐欺罪だけでなく、恐喝罪や窃盗罪にあたる手口も含まれるという点が異なります。
現代社会に潜む「詐欺」の脅威
私たちの周りには、残念ながら人をだましてお金や財産を奪おうとする「詐欺」が数多く存在します。
ニュースで報道される事件は氷山の一角であり、実際にはもっと多くの被害が発生している可能性があり、「自分は大丈夫」と思っていても、巧妙な手口にかかれば誰でも被害者になり得るのが現代の詐欺の怖いところです。
手口は常に新しくなり、心理的な隙を巧みに突いてくるため、常に最新の情報を得て警戒心を持つことが重要になります。
詐欺とは何か?基本的な定義
詐欺とは、人を欺いて(だまして)勘違いさせ、その結果、財物を交付させたり、財産上不法の利益を得たり、他人にこれを得させたりする行為を指します。
日本の刑法第246条では、詐欺罪として「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する」と定められています。
また、財物だけでなく、例えば借金の支払いを免れるといった財産上の利益を得ることも詐欺罪の対象となります。
重要なのは、「欺罔行為(ぎもうこうい)」つまり、だます行為があり、それによって相手が錯誤に陥り、財産的な処分行為をしてしまう、という一連の流れがあることです。
なぜ詐欺被害はなくならないのか?
詐欺被害がなくならない背景には、いくつかの要因が考えられます。
一つは、犯行グループの手口が非常に巧妙化・組織化していることです。彼らはターゲットの心理を巧みに操り、冷静な判断をさせないように仕向けます。
また、インターネットやスマートフォンの普及により、非対面での接点が増え、犯人が身元を隠しやすくなったことも一因です。
さらに、社会全体の情報格差や、高齢化に伴う判断力の低下、孤立なども、詐欺師にとっては好都合な状況を生み出しています。そして、「自分だけは騙されない」という過信も、被害に遭うリスクを高める要因と言えるでしょう。
【特殊詐欺】とは?一般的な詐欺との違いを明確に
数ある詐欺の中でも、特に警察などが注意を呼びかけているのが【特殊詐欺】です。
この特殊詐欺は、一般的な詐欺とは少し異なる特徴を持っています。
ここでは、特殊詐欺の正確な定義と、一般的な詐欺との具体的な違いについて解説します。この違いを理解することが、対策を考える上での第一歩となります。
特殊詐欺の定義と特徴
特殊詐欺とは、犯人が電話やハガキ(封書)、メールなどを使って、親族や公共機関の職員などを名乗り、被害者を信じ込ませて現金やキャッシュカードをだまし取ったり、ATMを操作させて犯人の口座に送金させたりする犯罪のことです。
特徴的なのは、犯人と被害者が直接顔を合わせることなく(非対面で)、不特定多数の人をターゲットにする点です。
特殊詐欺の定義には、現金を脅し取る「恐喝」や、隙を見てキャッシュカードなどをすり替えて盗む「詐欺盗(窃盗)」も含まれることがあります。つまり、必ずしも刑法上の「詐欺罪」だけが該当するわけではない、広範な犯罪類型を指す言葉です。

特殊詐欺の代表的な10類型と巧妙な手口
特殊詐欺と一口に言っても、その手口は多岐にわたります。
警察庁では、特殊詐欺を10の類型に分類して注意を呼びかけています。
これらの手口を知っておくことは、被害を未然に防ぐために非常に重要です。
ここでは、それぞれの類型について、具体的な手口と、簡単な対策のポイントを解説していきます。自分や家族がどのような危険に晒されているのかを具体的にイメージし、いざという時に冷静に対応できるように備えましょう。
あなたの親族が狙われるかも?「オレオレ詐欺」「預貯金詐欺」
家族の絆や信頼を悪用する手口は、特殊詐欺の典型です。突然の電話で動揺させ、冷静な判断を奪おうとします。
①オレオレ詐欺の手口と対策
手口:息子や孫などの親族を名乗り、「会社のお金を使い込んだ」「事故を起こして示談金が必要だ」などと緊急性を装って電話をかけ、現金をだまし取る手口です。最近では、複数の犯人が上司や警察官役を演じるなど、劇場型と呼ばれる巧妙な手口も増えています。
対策:本人しか知らないはずの家族の情報を質問する(ペットの名前、昔のあだ名など)、一度電話を切って本人や他の家族に必ず確認する、事前に家族間で合言葉を決めておく、などが有効です。慌てず、まずは疑うことが重要です。
②預貯金詐欺の手口と対策
手口:警察官、銀行協会職員、役所の職員などを名乗り、「あなたの口座が犯罪に利用されている」「キャッシュカードの交換手続きが必要だ」「医療費の過払い金があり、古いカードなので引き取りに行く」などと言って、暗証番号を聞き出し、キャッシュカードや通帳をだまし取る(または脅し取る)手口です。犯人が自宅までカードを取りに来るケースもあります。
対策:電話で暗証番号を聞かれたら絶対に教えない、キャッシュカードや通帳を他人に渡さない、警察官や銀行員が暗証番号を聞いたりカードを預かったりすることは絶対にないと認識する、不審な電話はすぐに切り、警察や銀行に相談することが重要です。
身に覚えのない請求?「架空料金請求詐欺」「還付金詐欺」
突然の高額請求や、「お金が戻ってくる」という甘い言葉で巧みに誘導する手口です。焦らず、冷静に対応することが求められます。
③架空料金請求詐欺の手口と対策
手口:有料サイトの未払い料金や、過去の利用料金などを名目に、「支払わないと裁判になる」「法的措置を取る」などと書かれたメールやハガキ(封書)を送りつけ、金銭をだまし取る(または脅し取る)手口です。最近では、大手企業や公的機関を装ったSMS(ショートメッセージサービス)で偽サイトに誘導するケースも増えています。
対策:身に覚えのない請求には一切応じない、記載された連絡先には連絡しない、不安な場合は消費者ホットライン(188)や警察に相談する、などが基本です。心当たりがあっても、まずは正規の窓口に確認しましょう。
④還付金詐欺の手口と対策
手口:役所の職員などを名乗り、「医療費や税金、保険料などの還付金がある」「ATMで手続きができる」などと電話をかけ、被害者に携帯電話で指示をしながらATMを操作させ、実際には犯人の口座に送金させる手口です。犯人は「今日中に手続きが必要」などと急かし、冷静に考える時間を与えません。
対策:「ATMで還付金」は詐欺と疑う、役所や金融機関の職員がATMの操作を指示することは絶対にないことを知っておく、電話でATM操作を求められたらすぐに電話を切り、警察や役所に確認することが重要です。
甘い言葉に要注意!「融資保証金詐欺」「金融商品詐欺」
お金に困っている人の弱みにつけ込んだり、儲け話で誘惑したりする手口です。「うまい話には裏がある」と常に疑う心構えが必要です。
⑤融資保証金詐欺の手口と対策
手口:実際には融資をするつもりがないにもかかわらず、ダイレクトメールやウェブサイトで「低金利で即日融資」「審査なし」などと謳い、融資を申し込んできた人に対して「保証金が必要」「手数料を先に振り込んでほしい」などと言って金銭をだまし取る(または脅し取る)手口です。一度支払うと、さらに追加の支払いを要求されることもあります。
対策:正規の貸金業者か必ず確認する(登録番号などを金融庁のウェブサイトで検索)、融資を受ける前に保証金や手数料を要求された場合は詐欺を疑う、安易なうたい文句に飛びつかないことが重要です。
⑥金融商品詐欺の手口と対策
手口:実際には価値のない未公開株、社債、外国通貨、権利などについて、「必ず儲かる」「あなただけに特別に紹介する」などと嘘の情報を電話やパンフレットで伝え、購入代金として金銭をだまし取る(または脅し取る)手口です。複数の業者が登場し、劇場型でだまそうとすることもあります。「買取り業者を紹介するから先に購入してほしい」というパターンも典型的です。
対策:「必ず儲かる」という話は詐欺、知らない業者からの勧誘はきっぱり断る、パンフレットや電話番号が実在する会社のものか確認する、少しでも怪しいと感じたらすぐに相談窓口に連絡することが大切です。
興味を悪用する手口「ギャンブル詐欺」「交際あっせん詐欺」
人の好奇心や欲望を利用する古典的な手口も、特殊詐欺の一類型として存在します。安易な誘いには乗らないようにしましょう。
⑦ギャンブル詐欺の手口と対策
手口:「パチンコの打ち子募集」「競馬の必勝情報を提供する」などと雑誌広告やメールで誘い、応募してきた人に対して登録料、情報料、保証金などの名目で金銭をだまし取る(または脅し取る)手口です。高額な配当を約束するものの、実際には情報が提供されなかったり、虚偽の情報であったりします。
対策:「必ず勝てる」「確実に儲かる」といったギャンブル情報提供は詐欺と疑う、事前に金銭を要求する業者とは関わらない、魅力的な言葉に惑わされず、冷静に判断することが求められます。
8交際あっせん詐欺の手口と対策
手口:「女性を紹介します」「理想の相手が見つかる」などと雑誌やインターネットサイト、メールで広告し、紹介を申し込んできた人から会員登録料金や保証金、紹介料などの名目で金銭をだまし取る(または脅し取る)手口です。実際には異性が紹介されなかったり、サクラ(偽の会員)ばかりだったりするケースがほとんどです。
対策:安易な出会い系サイトや紹介サービスに注意する、事前に高額な料金を要求するものは避ける、運営会社の情報や口コミなどを確認し、信頼できるサービスか見極めることが重要です。
新たな脅威「その他の特殊詐欺」「キャッシュカード詐欺盗」
上記の類型に当てはまらない詐欺や、窃盗と組み合わさった巧妙な手口も存在します。常に新しい手口が登場する可能性を念頭に置きましょう。
⑨その他の特殊詐欺とは?
手口:上記で紹介した8つの類型(オレオレ詐欺、預貯金詐欺、架空料金請求詐欺、還付金詐欺、融資保証金詐欺、金融商品詐欺、ギャンブル詐欺、交際あっせん詐欺)のいずれにも当てはまらない特殊詐欺を指します。例えば、芸能人のマネージャーを名乗り、「タレントが問題を起こしたので解決金が必要」と金銭を要求するようなケースや、全く新しい手口の詐欺が含まれる可能性があります。
対策:これまでの類型に当てはまらなくても、電話やメールでお金を要求されたり、個人情報を聞かれたりした場合は、まず詐欺を疑うことが基本です。不審に思ったら、すぐに家族や警察に相談しましょう。
⑩キャッシュカード詐欺盗の手口と対策
手口:警察官や銀行協会、大手百貨店の職員などを名乗り、「あなたのキャッシュカードが不正利用されている」「古いカードなので交換が必要」などと電話をかけ、被害者宅を訪問します。そして、「カードを使えないように手続きをする」「封筒に入れて保管するように」などと言って、被害者が目を離した隙に偽のカードとすり替えて盗み取る手口です。これは詐欺罪ではなく窃盗罪に該当する場合があります。
対策:電話で「キャッシュカード」「暗証番号」という言葉が出たら詐欺を疑う、訪問してきた人物に安易にキャッシュカードを渡さない、目を離さない、暗証番号は絶対に教えない、不審な場合はインターホン越しに対応し、すぐに警察に通報することが重要です。
【最新情報】2025年 特殊詐欺の最近の傾向と注意点
特殊詐欺の手口は常に変化し、新たな傾向が生まれています。
ここでは、警察庁が発表した令和7年3月末時点の情報などを基に、2025年現在の特殊詐欺の最新トレンドと特に注意すべきポイントを解説します。
これらの情報を把握することで、より効果的な対策を講じることができます。
被害額の現状と主な手口
依然として特殊詐欺による被害は深刻な状況が続いています。最新のデータから、どのような手口が横行しているのか、被害の実態を見ていきましょう。
警察官等をかたる手口の増加
最近特に目立っているのが、警察官や検察官、金融機関の職員などをかたり、捜査名目や優先調査名目で現金やキャッシュカードをだまし取る手口です。
犯人は「あなたの口座が犯罪に利用されている」「資産を保全するために現金を預かる必要がある」などと言葉巧みに被害者を信用させようとします。
SNSのビデオ通話で偽の「逮捕状」や存在しない公的書類の画像を見せてくるなど、より巧妙化しているケースも確認されています。このような権威を悪用した手口には、特に警戒が必要です。
被害額の推移と現状
令和7年3月末時点の特殊詐欺全体の被害額は276.0億円に上り、そのうち警察官等をかたる手口が6割強(171.7億円)を占めています。
月別の被害額を見ても、令和7年1月の51.8億円、2月の54.4億円、3月の65.4億円と、継続して増加傾向にあり、依然として高水準で推移していることが分かります。
このことからも、特殊詐欺の脅威が依然として深刻であり、社会全体で対策を強化していく必要性が浮き彫りになっています。一人ひとりが「自分は大丈夫」と思わず、常に警戒心を持つことが求められます。
若年層もターゲットに!SNS型投資・ロマンス詐欺との関連
特殊詐欺は高齢者だけの問題ではありません。
最近では、スマートフォンやSNSを巧みに利用し、若年層をターゲットにした手口も急増しています。
携帯電話経由での若年層被害の急増
特殊詐欺の被害に遭う際の電話種別を見ると、携帯電話が約7割を占めています。
そして、この携帯電話経由の被害において、20~30歳代の若年層の被害が50.9%と半数以上を占めるほど急増しているのが現状です。これは、若年層が日常的に利用するSNSやマッチングアプリなどを通じて接触し、巧みに誘導する手口が増えていることを示唆しています。
高齢者だけでなく、若い世代も特殊詐欺のターゲットになっているという認識を持つことが重要です。
SNSを利用した新たな手口
SNSのDM(ダイレクトメッセージ)やマッチングアプリを通じて接触し、恋愛感情や投資への興味を悪用する「SNS型投資詐欺」や「SNS型ロマンス詐欺」が横行しています。
これらは広義の特殊詐欺の範疇に入り、警察官を名乗る特殊詐欺の手口と関連して、SNSのビデオ通話で偽の身分証や書類を見せるなど、より信じ込ませやすい手口が使われることがあります。安易にSNS上の儲け話に乗ったり、面識のない相手と金銭のやり取りをしたりすることは非常に危険です。
国際電話や偽装番号を使った巧妙な手口
犯行グループは、自身の足取りを消すため、また被害者を信用させるために、電話番号に関しても巧妙な手口を用いています。
国際電話番号の悪用
犯行に利用される電話番号には、警察署を偽装するような末尾「0110」といった番号が見られますが、その多くは国際電話番号であると警察庁は指摘しています。
見慣れない国際電話番号からの着信や、表示された番号が公的機関のものであっても、すぐに信用せず、一度電話を切って正規の番号にかけ直すなどの確認が必要です。特に「+」から始まる番号は国際電話ですので注意しましょう。
実在する警察署等の電話番号偽装
さらに悪質な手口として、実在する警察署や金融機関などの電話番号を偽装して、被害者の電話機に表示させる技術が悪用されるケースも確認されています。
これにより、被害者は正規の機関からの電話だと信じ込んでしまいやすくなります。
たとえ知っている番号が表示されたとしても、電話口で個人情報や金銭を要求された場合は、一度電話を切り、必ず自分からその機関の公式サイトなどで調べた正規の番号にかけ直して確認することが極めて重要です。

なぜ特殊詐欺は増加するのか?その原因と背景を分析
特殊詐欺の被害が後を絶たず、むしろ手口が巧妙化し増加傾向にあるのはなぜでしょうか。
この問題の根源を理解するためには、犯行グループ側の要因と、社会構造や被害者心理といった側面から多角的に分析する必要があります。
ここでは、特殊詐欺が増加する主な原因と、その背景にある社会的な要因について掘り下げていきます。
犯行グループの組織化と巧妙化
特殊詐欺の実行犯は単独で行っているわけではなく、多くの場合、高度に組織化された犯罪グループによって計画・実行されています。彼らは役割を分担し、効率的に詐欺行為を繰り返しています。
「受け子」「出し子」など役割分担の実態
特殊詐欺グループは、実際に被害者から現金やキャッシュカードを受け取る「受け子」、不正に得た現金をATMから引き出す「出し子」、被害者に電話をかける「かけ子」、グループ全体を統括する指示役など、役割を細かく分担しています。
これにより、個々のメンバーは全貌を知らされず、逮捕された際のリスクを分散させています。
「簡単に稼げるバイト」といった誘い文句で、若者などが知らず知らずのうちに末端の役割に加担してしまうケースも後を絶ちません。
社会構造の変化と被害者の心理
詐欺が増加する背景には、現代社会が抱える構造的な問題や、人間の普遍的な心理も深く関わっています。これらの要因が複雑に絡み合い、詐欺師にとって好都合な状況を生み出しています。
高齢化社会と孤独感
日本の急速な高齢化は、特殊詐欺のターゲットとなりやすい層を増やしている一因です。
高齢になると、判断力が低下したり、最新の情報に疎くなったりする傾向があります。また、核家族化や地域社会との繋がりの希薄化により、日中一人で過ごす高齢者が増え、孤独感や不安感を抱えている場合があります。
そのような状況下で、親族を名乗る電話がかかってくると、つい頼ってしまったり、冷静な判断ができなくなったりすることがあるのです。
情報格差と判断力の低下
インターネットやスマートフォンの普及は便利な反面、情報を使いこなせる人とそうでない人の間に「情報格差」を生み出しています。
詐欺師は、この情報格差を利用し、最新の手口や対策情報を知らない層を狙います。
また、加齢に伴う認知機能の低下や、日頃の疲労、ストレスなども、一時的に判断力を鈍らせる要因となり得ます。犯人は、そのような状況を見抜き、畳み掛けるように話を展開してくるため、普段はしっかりしている人でも騙されてしまうことがあるのです。
被害に遭いやすい人の特徴とは?
「自分は絶対に騙されない」と思っていても、特定の状況や心理状態にあるときは、誰でも被害に遭うリスクが高まります。
ここでは、詐欺被害に遭いやすいとされる人の特徴や心理的な隙について考察します。
心理的な隙を突く手口
詐欺師は、人の親切心、恐怖心、焦燥感、射幸心といった様々な感情を巧みに操ります。
例えば、「困っている息子を助けたい」という親心、「法的措置を取られる」という恐怖心、「今日中に手続きしないと損をする」という焦り、「簡単に儲かるかもしれない」という期待感などです。
これらの感情が高ぶっているときは、論理的な思考が働きにくくなり、犯人の言う通りに行動してしまう傾向があります。手口の巧妙さは、こうした人間の心理を深く理解し、悪用している点にあります。
「自分は大丈夫」という過信
皮肉なことに、「自分は詐欺になんて引っかからない」という過信が、かえって被害に遭うリスクを高めることがあります。
過信していると、詐欺に関する情報収集を怠ったり、いざ不審な電話がかかってきても「これは詐欺かもしれない」と疑う意識が働きにくくなったりする可能性があります。
過去に同じような手口で騙されかけた経験がある人が、「一度経験したからもう大丈夫」と思い込み、新たな手口に対応できないケースも見られます。
常に謙虚な姿勢で情報をアップデートし、警戒を怠らないことが重要です。
今日からできる!特殊詐欺から身を守るための徹底対策
特殊詐欺の手口は巧妙ですが、正しい知識と対策を講じることで、被害に遭うリスクを大幅に減らすことができます。
ここでは、個人で簡単に取り組める予防策から、家族や地域社会と連携した対策、さらには最新の防犯ツールの活用まで、具体的な対策方法を多角的にご紹介します。自分自身だけでなく、大切な家族や地域の人々を詐欺の魔の手から守るために、今日からできることを始めましょう。
個人でできる予防策
日常生活の中で少し意識を変えるだけで、特殊詐欺の被害を防ぐための第一歩を踏み出せます。まずは、個人で簡単に実践できる基本的な予防策を確認しましょう。
知らない電話番号には出ない・折り返さない
自宅の固定電話や携帯電話に知らない番号から着信があった場合、すぐに出るのは避けましょう。
特に、非通知や表示圏外、見慣れない市外局番や「+」から始まる国際電話番号からの電話は要注意です。
留守番電話機能を活用し、相手がメッセージを残した場合にのみ、内容を確認してから対応するかどうかを判断するのが賢明です。安易に折り返し電話をすると、詐欺グループに情報を提供してしまうことになりかねません。
個人情報を安易に教えない
電話口で、銀行口座の暗証番号、キャッシュカードやクレジットカードの番号、マイナンバー、家族構成など、個人情報を聞かれても絶対に教えてはいけません。
警察官や銀行員、役所の職員などが、電話でこのような重要な個人情報を尋ねることは原則としてありません。もし聞かれた場合は、詐欺を疑い、きっぱりと断りましょう。
相手が公的機関を名乗っていても、一度電話を切り、必ず自分で調べた正規の連絡先にかけ直して確認することが重要です。
ATMでの携帯電話操作の注意
「還付金があるからATMへ行ってください」「携帯電話で指示通りに操作してください」といった電話は、還付金詐欺の典型的な手口です。
ATMで還付金の手続きができることは絶対にありませんし、金融機関や役所の職員がATMの操作を電話で指示することもありません。

家族や地域で取り組む対策
特殊詐欺の被害防止には、個人の注意だけでなく、家族や地域社会の協力体制も非常に重要です。日頃からのコミュニケーションや連携が、いざという時の防波堤となります。
家族間のコミュニケーション強化
離れて暮らす高齢の親や祖父母がいる場合は特に、日頃からこまめに連絡を取り合い、コミュニケーションを密にすることが大切です。
家族構成や最近の出来事などを共有しておくことで、オレオレ詐欺の犯人が家族になりすまそうとしても、不審な点に気づきやすくなります。
また、特殊詐欺の手口や対策について家族で話し合い、万が一不審な電話があった場合の対応(合言葉を決めておく、すぐに相談するなど)を事前に決めておくと安心です。
地域社会での見守り活動
地域住民同士が互いに声をかけあい、見守り合うことも有効な対策です。
例えば、一人暮らしの高齢者宅を定期的に訪問したり、地域のイベントなどを通じて交流を深めたりすることで、異変に気づきやすくなります。
また、自治会や老人クラブなどが中心となって、特殊詐欺防止の啓発活動を行ったり、防犯情報を共有したりすることも重要です。地域全体で防犯意識を高め、詐欺グループが活動しにくい環境を作ることが求められます。
最新の防犯サービスやツールの活用
近年では、特殊詐欺対策に特化した様々な防犯サービスやツールが登場しています。これらを上手に活用することで、より効果的に被害を防ぐことができます。
迷惑電話防止機能付き電話機
ナンバーディスプレイ機能に加え、迷惑電話を自動で判別して着信を拒否したり、通話内容を録音する機能が付いた電話機が市販されています。
電話に出る前に相手に警告メッセージを流すことで、犯人が電話を切る効果も期待できます。
また、後から通話内容を確認できるため、万が一の際にも役立ちます。自治体によっては、高齢者向けにこのような電話機の購入補助制度を設けている場合もあるので、確認してみるとよいでしょう。
相談窓口の利用(警察、消費者センターなど)
少しでも「怪しいな」「これって詐欺かも?」と感じたら、一人で悩まず、すぐに専門の相談窓口を利用しましょう。

【特殊詐欺】Q&A よくある質問
Q1: 特殊詐欺と普通の詐欺の一番の違いは何ですか?
A1: 一番の違いは、犯行の手段と対面性の有無です。一般的な詐欺は、特定の相手に直接会ってだますことが多いのに対し、特殊詐欺は電話やメール、ハガキといった通信手段を使い、顔を合わせずに不特定多数の人をだますのが特徴です。また、特殊詐欺は、詐欺罪だけでなく、恐喝罪や窃盗罪にあたる手口も含む広い概念です。
Q2: 特殊詐欺の被害に遭いやすいのは高齢者だけですか?
A2: 以前は高齢者の被害が目立ちましたが、最近では手口が多様化し、若年層もターゲットになっています。特に、携帯電話やSNSを利用した手口では、20~30代の被害が急増しています。例えば、SNS型投資詐欺やロマンス詐欺などがその例です。年齢に関わらず、誰もが被害に遭う可能性があると認識し、注意が必要です。
Q3: もし特殊詐欺かもしれない電話がかかってきたら、どうすればいいですか?
A3: まず、慌てずに一度電話を切りましょう。そして、すぐに相手の言うことを鵜呑みにせず、事実確認をすることが重要です。例えば、家族を名乗る電話なら、必ず元の家族の電話番号にかけ直して確認します。公的機関を名乗る場合は、自分で調べた正規の電話番号にかけ直して問い合わせてください。そして、少しでも不審に思ったら、一人で判断せず、家族や警察(#9110)、消費者ホットライン(188)などに相談しましょう。
【特殊詐欺と詐欺の違い】《詐欺》の脅威を理解し、賢く対策しましょう
この記事では、「特殊詐欺と詐欺の違い」を基本から掘り下げ、特殊詐欺の10類型、最新の傾向、増加の原因、そして具体的な対策に至るまで、幅広く解説してきました。
特殊詐欺は、電話やメールといった非対面の手法で不特定多数を狙うのが特徴であり、その手口は年々巧妙化・多様化しています。
最近では、警察官をかたる手口や、SNSを利用して若年層を狙うケースも増加しており、被害額も依然として高水準です。
詐欺が増加する背景には、犯行グループの組織化やテクノロジーの悪用、高齢化社会や情報格差といった社会構造の変化、そして「自分は大丈夫」という過信を含む人間の心理的な隙が複雑に絡み合っています。
しかし、手口を知り、正しい対策を講じることで被害は防げます。
知らない番号には出ない、個人情報を安易に教えないといった個人の心がけに加え、家族や地域でのコミュニケーション、迷惑電話防止機能付き電話機などのツールの活用が有効です。
不審な点があれば、すぐに警察や相談窓口に連絡することが何よりも重要です。この記事が、あなたとあなたの大切な人を守るための一助となれば幸いです。