介護食「やわらか食」とは?ソフト食との違いも解説

やわらか食

「最近、親の食事の様子が変わってきた…」「硬いものが食べにくそうで心配…」と感じていませんか?

噛む力や飲み込む力が弱くなったご家族のために、食事の準備に悩む方は少なくありません。

この記事では、そんなあなたのために「やわらか食(柔食)」の基本から、混同されがちなソフト食との違い、安全な選び方、家庭でできる調理のコツまで、専門知識をわかりやすく解説します。

この記事を読めば、介護食に関する不安が解消され、ご家族に安全で美味しい食事を提供できるようになります。

目次

やわらか食(柔食)とは?基本を徹底解説

やわらか食の定義と目的

見た目も美味しい「やわらか食」の定義

やわらか食とは、加齢や病気によって噛む力(咀嚼機能)や飲み込む力(嚥下機能)が低下した方向けに、食材を柔らかく調理・加工した食事のことです。

最大の特徴は、食材の本来の形や彩りをできるだけ保ちながら、歯ぐきや舌で簡単につぶせるほどの柔らかさを実現している点にあります。単に細かく刻んだり、ペースト状にしたりするのではなく、見た目にも配慮することで「何の料理か」が分かり、食べる方の食欲を刺激します。

例えば、ハンバーグならハンバーグの形のまま、魚の煮つけなら魚の形のまま提供されるため、食事の楽しみを損ないません。このように、安全性と食の楽しさを両立させることを目指した介護食が「やわらか食」なのです。

安全に栄養を摂り「食べる喜び」を支える目的

やわらか食の最も重要な目的は、食事中の誤嚥(食べ物が誤って気管に入ること)や窒息のリスクを減らし、安全に栄養を摂取できるようにすることです。

飲み込む力が低下すると、食べ物がバラバラになって気管に入りやすくなりますが、やわらか食は適度なとろみやまっとまりがあるため、スムーズに食道へ送ることができるのです。

また、硬いものが食べられないことで食事量が減り、低栄養に陥ることを防ぐ目的もあります。

そして、もう一つの大切な目的が「食べる喜び」を支えることです。美味しいと感じ、目で見て楽しめる食事は、生活の質(QOL)を大きく向上させます。安全なだけでなく、精神的な満足感も提供することが、やわらか食の大きな役割と言えるでしょう。

「柔食」の読み方と軟食との関係

「柔食」は「にゅうしょく」と読む

「やわらか食」は漢字で「柔食」と表記されることがあります。

この「柔食」の正しい読み方は「にゅうしょく」です。

介護施設や医療機関の献立表などで見かけることがありますが、「やわらかしょく」と読んでも意味は通じます。基本的には「やわらか食」と同じものを指す言葉として使われることがほとんどです。

ただし、文脈によっては後述する「軟食」と混同されるケースもあるため、具体的にどのような硬さの食事を指しているのか確認すると、より安心です。

ブログや情報サイトでは、より分かりやすい「やわらか食」というひらがな表記が一般的に用いられています。専門的な現場で「柔食」という言葉が出てきた際は、「やわらか食のことだな」と理解しておけば問題ないでしょう。

医療現場で使われる「軟食」との違い

「軟食(なんしょく)」は、主にお粥や柔らかく煮たうどんなどを中心とした、消化器系の手術後や体調不良時に提供される病院食の一種です。

目的は、胃腸への負担を軽減することにあり、消化の良い炭水化物がメインで、脂質や食物繊維は制限されます。

一方、「やわらか食(柔食)」は、消化機能だけでなく、噛む力や飲み込む力に配慮した食事です。そのため、肉や魚などのタンパク質源もしっかりと含まれており、栄養バランスが考慮されています。つまり、「軟食」が消化しやすさを最優先するのに対し、「やわらか食」は噛みやすさ・飲み込みやすさと栄養バランスを両立させることを目指している点に大きな違いがあるのです。

【徹底比較】やわらか食とソフト食の違い

やわらか食とソフト食との違いとは?

呼び方が違うだけで指すものは同じ

結論から言いますと、「やわらか食」と「ソフト食」は、厳密な定義上の違いはなく、ほぼ同じものを指す言葉として使われています。

どちらも「食材の形を保ちつつ、歯ぐきや舌でつぶせる柔らかさに調理したもの」という基本的なコンセプトは共通しています。

介護施設や食品メーカー、情報サイトによって呼び方が異なるだけで、利用者が混乱しないように「やわらか食(ソフト食)」と併記されることも多いです。

例えば、「ソフト食」という呼び方は、英語の”soft”から来ており、より現代的で分かりやすい表現として広まった側面があります。したがって、どちらの言葉を目にしても、「見た目は普通の食事に近いけれど、とても柔らかく調理された介護食」と理解しておけば、まず間違いありません。

【やわらか食&ソフト食】メーカーによる呼称の違い

「やわらか食」と「ソフト食」の使い分けは、主に介護食品を製造・販売するメーカーのブランド戦略や商品名に起因することが多いです。

例えば、あるメーカーは自社の柔らかい介護食シリーズを「やわらか食」として展開し、別のメーカーは「ソフト食」という名称で商品を販売しています。これは、各社が独自の技術やコンセプトをアピールするために、異なる呼称を用いているためです。また、介護施設ごとにも方針があり、施設内の献立表では「やわらか食」に統一している場合もあれば、「ソフト食」で統一している場合もあります。重要なのは名称の違いに惑わされず、その食事が食べる方の噛む力や飲み込む力に適した硬さであるかどうかを確認することです。

なぜ高齢者は「やわらかい食事」を必要とするのか?

噛む力(咀嚼機能)の低下

歯の喪失や筋力低下が原因

高齢者が柔らかい食事を必要とする最も大きな理由の一つが、噛む力、すなわち咀嚼機能の低下です。

これは加齢に伴う複数の要因が重なって起こります。まず、歯周病や虫歯によって自分の歯を失ってしまうと、硬いものを噛み砕くことが物理的に困難になります。入れ歯(義歯)を使用していても、自分の歯と同じように強く噛むことは難しく、痛みを感じることもあります。さらに、全身の筋力が衰えるのと同様に、口周りの筋肉(咀嚼筋)も弱くなります。これにより、食べ物を効率よくすり潰したり、長時間噛み続けたりすることができなくなるのです。

これらの複合的な要因が、硬いものを避け、無意識のうちに柔らかいものばかりを選ぶという食生活につながっていきます。

咀嚼機能低下がもたらす栄養不足リスク

噛む力が低下すると、食べられる食材の種類が限られてきます。

特に、肉類や根菜類といった、タンパク質や食物繊維が豊富な硬い食材を敬遠しがちになります。その結果、豆腐やおかゆ、パンなど、柔らかく食べやすい炭水化物中心の食事に偏ってしまい、タンパク質やビタミン、ミネラルといった重要な栄養素が不足しやすくなります。

この状態が続くと、筋肉量がさらに減少して活動性が低下する「サルコペニア」や、心身の活力が低下する「フレイル(虚弱)」といった、要介護状態につながる深刻な問題を引き起こすリスクが高まります。つまり、噛めないから食べない、食べないからさらに弱る、という悪循環に陥ってしまうのです。

飲み込む力(嚥下機能)の低下

誤嚥性肺炎につながる嚥下機能の衰え

飲み込む力、すなわち嚥下機能の低下も、高齢者が柔らかい食事を必要とする重要な理由です。

食べ物を飲み込む動作は、喉の筋肉や神経が連携する複雑な反射運動ですが、加齢によりこれらの機能も衰えてきます。すると、食べ物や唾液が食道ではなく、誤って気管に入ってしまう「誤嚥」が起こりやすくなります。誤嚥した際に、食べ物に含まれる細菌が肺で炎症を起こすのが「誤嚥性肺炎」であり、高齢者にとっては命に関わることもある非常に危険な病気です。パサパサしたものや、サラサラした液体、細かくバラバラになるものは特に誤嚥しやすいため、適度なとろみがあり、口の中でまとまりやすい「やわらか食」が安全な食事として求められるのです。

食事を安全に楽しむための配慮

嚥下機能が低下すると、食事のたびに「むせる」ことが増え、本人にとって食事が苦痛な時間になってしまいます。食べることが怖くなり、食事量が減ってしまうことも少なくありません。

やわらか食は、喉をスムーズに通過しやすいように工夫されているため、むせる回数を減らし、安心して食事に集中することができます。家族や介護者にとっても、食事介助中のヒヤリとする場面が減るため、精神的な負担が軽減されます。

このように、やわらか食は、単に栄養を摂るための手段ではなく、ご本人が食事の時間を「怖いものではなく、楽しいもの」と感じられるようにするための重要な配慮なのです。

安全が確保されて初めて、人は心から食事を楽しむことができるのです。

やわらか食の選び方|UDF区分と市販品

基準となる「ユニバーサルデザインフード(UDF)」

4つの区分「容易にかめる」から「かまなくてよい」

市販の介護食を選ぶ際に、非常に重要な目安となるのが「ユニバーサルデザインフード(UDF)」のロゴマークです。

これは日本介護食品協議会が定めた自主規格で、食べる方の状態に合わせて商品を選びやすいように、食品の硬さや粘度に応じて4つの区分が設定されています。区分は「容易にかめる」「歯ぐきでつぶせる」「舌でつぶせる」「かまなくてよい」の4段階です。このマークがある商品は、どのメーカーのものであっても統一された基準で作られているため、安心して選ぶことができます。パッケージを見れば一目でどのくらいの硬さなのかが分かるため、介護食選びに迷った際の信頼できる指標となります。

やわらか食は「歯ぐきでつぶせる」が目安

本記事で解説している「やわらか食(ソフト食)」は、主にUDFの区分2「歯ぐきでつぶせる」に相当します

これは、「硬いものや大きいものは食べづらいが、ある程度の固形物は歯ぐきでつぶして食べられる」という方向けの区分です。

例えば、ご飯であれば全粥、卵料理であればだし巻き卵くらいの硬さが目安とされています。もし、これでも食べにくそうな場合は、区分3「舌でつぶせる」を試してみると良いでしょう。逆に、まだ噛む力がある程度残っている方なら区分1「容易にかめる」から始めるなど、食べる方の状態をよく観察し、最適な区分を選ぶことが重要です。まずは「歯ぐきでつぶせる」を目安に選び、様子を見ながら調整していくのがおすすめです。

介護者の負担を軽減する市販品の活用

毎日の食事をやわらか食で手作りするのは、非常に時間と手間がかかり、介護者にとって大きな負担となります。そこで積極的に活用したいのが、市販のレトルトや冷凍の介護食です。

市販品には、温めるだけですぐに食べられる、栄養バランスが計算されている、衛生管理が徹底されており安全性が高い、といった多くのメリットがあります。特に、一品だけ市販品に置き換えたり、疲れている日や時間がない日に活用したりするだけでも、介護者の心と身体の負担を大きく軽減できます。最近では、味や見た目にこだわった美味しい商品が数多く販売されており、メニューのマンネリ化を防ぐ意味でも非常に役立つ存在です。

ニコニコキッチン宝塚西宮店の『やわらか食』

杉山 制空

高齢者専用配食サービスのニコニコキッチン宝塚西宮店では、『やわらか食』の販売と宅配を行っており、ご利用者様からご好評を頂いております。因みに、冷凍での販売も可能ですので、ぜひご注文下さい。

選ぶ際は「UDF区分」「栄養」「アレルギー」を確認

市販のやわらか食を選ぶ際には、3つの重要なポイントを確認しましょう。

第一に、前述した「UDF区分」です。食べる方の状態に合った硬さかどうか、パッケージのロゴマークで必ず確認してください。

第二に、「栄養成分表示」です。特に、不足しがちなタンパク質やエネルギー(カロリー)がしっかりとれるかチェックしましょう。持病などで塩分や糖質の制限がある場合は、その数値も確認が必要です。

そして第三に、「アレルギー表示」です。アレルギー体質の方の場合は、原材料を細かく確認し、アレルゲンが含まれていないか必ずチェックすることが不可欠です。

この3点を押さえることで、より安全で、その方に合った商品を選ぶことができます。

【介護食「やわらか食」とは?】よくある質問(Q&A)

Q1. やわらか食とソフト食は全く同じものですか?

A1. はい、基本的には同じものを指す言葉として使われています。「やわらか食」も「ソフト食」も、食材の形を保ちながら歯ぐきや舌でつぶせるほど柔らかく調理した食事、というコンセプトは共通しています。食品メーカーや介護施設によって呼び方が違うだけで、厳密な定義上の区別はありません。名称に惑わされず、食べる方の状態に合った硬さかどうかを「ユニバーサルデザインフード(UDF)」の区分などを参考に確認することが大切です。

Q2. 毎食手作りは大変です。市販品だけでも大丈夫ですか?

A2. はい、市販品を上手に活用することは全く問題ありません。むしろ、介護者の負担を軽減するために推奨されます。現在の市販介護食は、栄養バランスや味、見た目に非常にこだわって作られており、品質も高いです。毎食市販品にすることに抵抗がある場合は、「主菜は手作りで、副菜は市販品にする」「疲れている日だけ市販品に頼る」など、無理のない範囲で取り入れるのがおすすめです。手作りと市販品を組み合わせることで、メニューの幅も広がり、介護生活にゆとりが生まれます。

Q3. 柔らかいものばかり食べていると、噛む力がさらに弱くなりませんか?

A3. その可能性は否定できません。使わない機能は衰えるため、必要以上に柔らかい食事を続けると、残っている咀嚼機能が低下してしまうことがあります。大切なのは、その方の「現在の噛む力で、安全に食べられるギリギリの硬さ」を見極めることです。歯科医師や管理栄養士、言語聴覚士などの専門家に相談し、定期的に食事形態が合っているか評価してもらうのが理想的です。また、食事以外の時間に噛む力を鍛える「口腔体操」などを取り入れることも、機能の維持・向上に繋がります。

【総括】介護食「やわらか食」とは?

本記事では、介護食である「やわらか食」について、その定義から他の食事形態との違い、選び方などを解説させて頂きました。

やわらか食とは、噛む力や飲み込む力が低下した方向けに、食材の形を保ちつつ歯ぐきでつぶせる柔らかさに調理した食事のことを言います。

市販品を選ぶ際は「ユニバーサルデザインフード(UDF)」の「区分2:歯ぐきでつぶせる」を目安に、栄養成分やアレルギー表示を確認することが重要です。

杉山 制空

ニコニコキッチン宝塚西宮店でも販売、宅配を行っておりますので、お試しください。

食事の悩みは一人で抱え込まず、やわらか食という知識を武器に、ご家族との楽しい食事の時間を取り戻してください。

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