介護食の『ムース食』とは?メリット・デメリットをわかりやすく

やわらか食

介護職の『ムース食』とは、噛む力や飲み込む力が低下した高齢者のために開発された介護食です。

食材をペースト状にしてゲル化剤で固めることで、舌でつぶせるやわらかさを実現し、誤嚥リスクを大幅に低減します。

見た目も食材の形に近づけて成形できるため、食欲低下を防ぎながら安全に栄養補給できる点が最大の特徴です。

目次

介護食の『ムース食』とは?基本的な特徴

『ムース食』とは、通常の食材をミキサーでペースト状にした後、ゼラチンや寒天などのゲル化剤を使って固めた介護食です。 その食感は舌で簡単につぶせるほどやわらかく、プリンやゼリーに近い状態に仕上げられています。

日本介護食品協議会が定めるユニバーサルデザインフード(UDF)の分類では「区分3:舌でつぶせる」に該当し、客観的な安全基準を満たしています。

この基準により、介護現場や家庭で安心して提供できる食事形態として広く認知されています。

介護食『ムース食』5つのメリット

1. 誤嚥リスクの低減

ムース食の最大のメリットは、誤嚥(食べ物が気管に入ること)を防ぐ効果が高い点です。適度なまとまりとゲル状の粘性により、口の中でばらけにくく、飲み込む際に一つの塊として食道へスムーズに送り込めます。これにより、誤嚥性肺炎のリスクを大幅に低減できます。

2. 食欲を維持できる見た目

ムース食は、食材の色や形を再現する成型技術により、見た目がおいしそうに仕上がります。人参はオレンジ色の形に、魚は白い切り身の形に成形することで、「これはおいしそう」という視覚的な食欲喚起効果があります。ミキサー食のような単調なペースト状と比べ、食事の楽しみを維持しやすいのが特徴です。

3. 栄養バランスの確保

管理栄養士監修のムース食は、1食あたり200~280kcal程度にエネルギーやたんぱく質、ビタミン・ミネラルのバランスが調整されています。食べやすさと栄養価の両立により、低栄養状態を防ぐことができます。

4. 食事介助の負担軽減

ムース食はスプーンですくいやすく、噛まずに飲み込めるため、食事介助を行うスタッフや家族の負担が大幅に軽減されます。誤嚥のリスクが低いため、介助する側も安心して食事を提供できます。

5. 調理の手軽さ(市販品利用時)

市販の冷凍ムース食や宅配サービスを利用すれば、電子レンジで2分程度温めるだけで提供できます。調理時間を大幅に削減でき、毎日の介護負担を軽減できます。

介護食『ムース食』4つのデメリット

1. 調理の手間と時間

自宅でムース食を一から作る場合、食材の加熱、ミキサーでのペースト化、ゲル化剤の調整、型入れ、冷却固化という複数の工程が必要です。普通の食事よりも1~2時間ほど長く時間がかかり、毎日の調理は大きな負担となります。

食材ごとに水分量やゲル化剤の量を調整する必要があり、慣れるまでは試行錯誤が必要です。食材の形に成形する作業も時間がかかるため、調理スキルと経験が求められます。

2. コストの高さ

ムース食の調理には、ゲル化剤やフードプロセッサー、ミキサーなどの専用器具が必要で、初期投資がかかります。市販品や宅配サービスを利用する場合、1食あたり500~900円程度と通常食より割高になります。

継続的な利用には家計への負担が大きく、コスト面での工夫が必要です。

3. 食感の単調さと飽きやすさ

ムース食は全ての食材がやわらかく、似た食感になるため、食事が単調に感じられやすいというデメリットがあります。ふわっとした食感が続くと飽きてしまい、食欲が低下する可能性があります。

長期間同じ食事を続けることへの抵抗感を持つ利用者も多いという報告があります。

4. 栄養価の低下リスク

ムース食は調理過程で水分や出汁を加えるため、同じ体積の通常食と比べてカロリーやたんぱく質などの栄養価が低くなる傾向があります。食事摂取量が少ない方がムース食に移行すると、栄養不足や低栄養状態に陥るリスクがあります。

栄養補助食品の併用や、市販の高栄養設計ムース食の利用など、栄養面での配慮が必要です。

ムース食が適している人

ムース食は、以下のような症状や状態の方に適しています​

  • 噛む力(咀嚼機能)が著しく低下した方:歯がほとんどない、歯ぐきでつぶすことも難しい
  • 飲み込む力(嚥下機能)が低下した方:食事中にむせやすい、飲み込みに時間がかかる
  • 口の中で食べ物をまとめる力が弱い方:きざみ食では口の中でバラバラになってしまう
  • 脳梗塞などの後遺症で嚥下障害がある方

ただし、嚥下の状態は個人差が非常に大きいため、自己判断は危険です。必ず医師、歯科医師、管理栄養士、言語聴覚士などの専門家に相談し、その方の嚥下機能に適しているか評価してもらうことが重要です。

他の介護食との違い

ムース食 vs ミキサー食

ミキサー食は食材をミキサーにかけただけの液体状の食事で、水分量が多くむせやすいのが特徴です。一方、ムース食はゲル化剤で固めているため、適度なまとまりがあり、誤嚥リスクが低くなります。

ムース食 vs ソフト食

ソフト食は食材の原形を残したまま、長時間煮込んで歯ぐきでつぶせる程度にやわらかくした食事です。ムース食は食材の原形を残さず、一度ペースト化してから成形するため、ソフト食よりもさらにやわらかい位置づけになります。

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『ムース食』負担を軽減する方法

市販品の活用

スーパーの介護食品コーナーやドラッグストア、インターネット通販で、多種多様な冷凍・レトルトのムース食が購入できます。ユニバーサルデザインフード(UDF)の「舌でつぶせる」マークを確認し、栄養成分表示をチェックして選びましょう。

『ムース食』宅配サービスの利用

管理栄養士監修のムース食宅配サービスを利用すれば、栄養バランスが整った食事が定期的に届きます。1食あたり400~900円程度で、調理の手間が一切不要です。

​ニコニコキッチン宝塚西宮店のムース食

おかずのみ 797円(税込み)ご飯付き 880円(税込み)

ニコニコキッチン

【総括】介護食の『ムース食』とは?

ムース食は、噛む力・飲み込む力が低下した方にとって、安全性と食事の楽しみを両立できる優れた介護食です。 誤嚥リスクの低減、食欲維持、栄養バランスの確保という3つのメリットにより、高齢者の生活の質(QOL)向上に貢献します。

一方で、調理の手間、コスト、食感の単調さ、栄養価低下リスクというデメリットも存在します。

これらのデメリットは、市販品や宅配サービスの活用、作り置きの工夫により大幅に軽減できます。

導入にあたっては、必ず医師や管理栄養士などの専門家に相談し、ご本人の嚥下機能に適した食事形態を選択することが最も重要です。

ムース食を賢く活用し、介護される方も介護する方も、笑顔になれる食卓を目指しましょう。

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