なぜ日本には入国税がない?出国税との違いとは

入国税と出国税の違い

海外旅行の航空券を予約すると、料金に「国際観光旅客税」という項目が含まれているのを見たことはありませんか?これがいわゆる「出国税」で、日本を出国する際に1人1,000円が徴収される税金です。

ところで、世界には「入国税」を導入している国もあるのに、なぜ日本には入国税がないのでしょうか。

そして、出国税と入国税、何が違うのでしょうか。 実は、この2つの税金には明確な違いがあり、課税のタイミングも対象者も異なります。

さらに、現在政府は出国税を3,000円に引き上げることを検討しており、「オーバーツーリズム対策なら、訪日外国人から取る入国税の方が筋では?」という議論も巻き起こっています。

この記事では、入国税と出国税の違い、なぜ日本が入国税を導入していないのか、そして最新の議論まで、わかりやすく解説します。

目次

入国税と出国税の決定的な違いとは?

入国税と出国税

「出国税」の基本:日本人も払う税金の正体

出国税とは、その名の通り、国を出る際に課される税金です。日本では「国際観光旅客税」という正式名称で、2019年1月7日から導入されています。飛行機や船で日本から出国する人すべてが対象で、日本人か外国人かを問いません。現在の税額は、1回の出国につき1人1,000円です。

この税金は、航空券や乗船券の代金に上乗せされる形で自動的に徴収されるため、支払っている実感がない人も多いかもしれません。

この制度により、政府は年間400億から500億円の税収を確保しており、2024年度は過去最大の524億円に達する見込みです。

この税金の目的は、日本の観光インフラを整備し、より快適な旅行環境を作るための財源確保です。

具体的には、空港の顔認証ゲート導入、無料Wi-Fiの拡充、文化財の多言語解説、国立公園の魅力向上などに使われています。

「入国税」とは?日本にこの制度は存在する?

一方、入国税国に入る際に課される税金です。結論から言うと、現在の日本に「入国税」という名称の税制度は存在しません。海外から日本へ入国する際に、持ち込む品物に対して「関税」や「消費税」がかかることはありますが、これらは入国という行為そのものに課される税金ではないため、入国税とは区別されます。

つまり、2つの税金の違いは明確です。

「入国税」は外国に入るときに払う税、「出国税」は自国を出るときに払う税という違いがあります。

世界には、観光客などを対象に事実上の入国税を課している国もありますが、日本では導入されていないのが現状です。

支払いのタイミングと方法の違い

入国税と出国税では、支払いのタイミングも異なります。

入国税は入国時や到着空港で支払うのが一般的です。一方、出国税は出国時に支払いますが、日本の場合は航空券に含まれることがほとんどです。

日本の出国税は、航空会社や船会社などの「国際旅客運送事業者」が特別徴収義務者となり、チケット代に上乗せする形で徴収される「オンチケット方式」を採用しています。このため、出国する人それぞれが別途に納税手続きをする必要はなく、知らず知らずのうちに税金を支払っていることになります。


なぜ日本は「入国税」ではなく「出国税」を取るのか?

出国税と入国税

出国税の目的は「観光先進国」の実現

日本政府が出国税(国際観光旅客税)を導入した最大の目的は、「観光立国」を実現するための財源確保です。

集められた税金は、主に以下の3つの分野に使われています。

  1. ストレスフリーで快適な旅行環境の整備(例:空港の顔認証ゲート導入、無料Wi-Fiの拡充)
  2. 日本の多様な魅力に関する情報発信の強化(例:文化財の多言語解説)
  3. 地域文化を生かした観光資源の整備(例:国立公園の魅力向上)

つまり、出国する日本人旅行者やビジネス客、そして帰国する外国人観光客から広く公平に税を徴収し、日本全体の観光価値を高めるための投資に充てる、という考え方が根底にあります。2025年現在、主要空港での顔認証搭乗手続きや、多言語案内の整備など、一部出国税による改善も見られるようになってきました。

「入国税」を導入しない背景にある考え方

では、なぜ訪日外国人観光客を主な対象とする「入国税」を導入しないのでしょうか。

これにはいくつかの理由が考えられます。一つは、徴収方法の課題です。

出国税は航空券に上乗せする「オンチケット方式」で効率的に徴収できますが、入国税を導入する場合、空港での徴収手続きが煩雑になり、入国時の混雑をさらに悪化させる懸念があります。

また、入国税の導入は「日本は観光客を歓迎していない」というネガティブなメッセージとして受け取られる可能性もゼロではありません。日本は「観光立国」を掲げて訪日外国人の誘致に力を入れてきた経緯があり、入国時に税金を課すことが、その方針と矛盾するという判断があったと考えられます。

これらの理由から、政府は出国するすべての人から徴収する「出国税」という形を選んだと考えられます。

専門家が指摘する「入国税」という選択肢

しかし、経済アナリストの森永康平氏や国民民主党などからは、より論理的な代替案として「入国税」が提唱されています。

入国税の最大の利点は、オーバーツーリズム対策という目的に完全に合致している点にあります。

つまり、問題の原因となっている訪日外国人観光客を直接の課税対象とするため、政策としての合理性が非常に高いのです。

現在、政府は出国税を3,000円以上に引き上げることを検討していますが、その理由として「オーバーツーリズム対策の財源確保」を掲げています。しかし、この税金が外国人観光客だけでなく、海外旅行や出張に出かける日本人にも課されるという点で、専門家から「もっと的を射た方法がある」との指摘が上がっています。


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