食料品消費税ゼロで飲食店が潰れる?と言われる4つの残酷な理由

食料品消費税ゼロ 飲食店 潰れる

「食料品の消費税が2年間ゼロになる」——2026年1月、高市首相が衆院選公約として表明したこのニュースを聞いて、あなたはどう感じましたか・・・当然、消費者は歓迎するでしょう。

しかし飲食店経営者の多くは、背筋が凍る思いをしています。なぜなら、この政策は外食産業にとって「実質的な増税」となり、廃業の引き金になりかねない危険な側面を持っているからです。

杉山 制空

2025年の飲食業倒産は1,002件と過去30年で最多を記録し、すでに業界は瀕死の状態にあります。物価高と人手不足でギリギリの経営を続ける中、これ以上の負担は致命傷です。

本記事では、なぜ「消費税ゼロ」が飲食店を潰すのか、その複雑なメカニズムを4つの残酷な理由として徹底解説します。あなたの店を守るために、今すぐ知っておくべき真実がここにあります。

目次

食料品消費税ゼロで飲食店が潰れる?2026年の現状

過去最多の倒産ラッシュに追い打ちをかける政策

2026年現在、飲食業界はすでに瀕死の状態にあると言っても過言ではありません。

東京商工リサーチのデータによると、2025年の飲食業倒産件数は1,002件を記録しました。これはバブル崩壊後の1996年以降、30年間で初めて1,000件の大台を超え、過去最多を更新した衝撃的な数字です。

参考:東京商工リサーチ 飲食業倒産 2025年 統計データ

主な原因は止まらない「物価高」と深刻な「人手不足」によるものです。

特に資本金1千万円未満の小規模・個人経営店が全体の約9割を占めており、体力の弱い店から淘汰されています。このギリギリの状況下で打ち出された「食料品消費税ゼロ」政策は、救世主どころか、弱りきった飲食店にトドメを刺す「劇薬」になる可能性が高いのです。多くの経営者が「これ以上、何を削ればいいのか」と悲鳴を上げています。

「外食産業」だけが取り残される構図

この政策の最大の矛盾は、同じ「食」を扱いながら、スーパーや小売店は「減税(0%)」の恩恵をフルに受ける一方で、飲食店などの外食産業は「据え置き(10%)」のまま取り残される点にあります。

消費者は当然、価格に敏感です。給料が上がらない中、税率が0%になる食材を買って家で食べるか、10%の税金を払って外食するか。この選択を迫られたとき、天秤がどちらに傾くかは火を見るよりも明らかです。飲食店は単に料理を提供するだけでなく、空間やサービスを提供していますが、消費税ゼロによる「お得感」の格差は、それらの付加価値を無効化してしまうほどのインパクトを持っています。これは単なる税制変更ではなく、外食産業そのものの構造的な危機なのです。


【理由1】外食10% vs 中食0%の「1割価格差」が招く客離れ

コンビニ・スーパーへの顧客流出が加速する

最も分かりやすく、かつ即効性のある打撃が「価格差の拡大」です。

現状でも、店内飲食(10%)とテイクアウト(8%)には2%の差があり、軽減税率導入時には現場で混乱が起きました。しかし、今回の政策が実現すれば、その差は一気に「10%」へと広がります。

例えば、1,000円のランチを食べる場合を想像してください。店内で食べれば税込1,100円ですが、同じものをテイクアウト、あるいはコンビニで買えば1,000円ポッキリで済みます。この「100円の壁」は心理的に巨大です。「店内で食べるだけで損をする」という意識が消費者に刷り込まれれば、客足は確実に遠のきます。スーパーの惣菜や弁当といった「中食」へのシフトが劇的に加速し、飲食店の売上は構造的に減少せざるを得ません。

店内飲食の価値が問われる時代へ

野村総研や慶應義塾大学の専門家たちも、この価格差による消費者行動の変化に警鐘を鳴らしています。「時限措置であっても一度変わった消費者の行動は、すぐには元に戻らない」という指摘は非常に重い意味を持ちます。

飲食店が客離れを防ぐためには、10%の税率差を埋めるために、身銭を切って「実質値下げ」を行うか、あるいは「10%高くても店内で食べたい」と思わせる圧倒的な付加価値を提供するしかありません。しかし、原材料費が高騰している中で値下げをする余力のある店はごくわずかです。結果として、価格競争に巻き込まれた店舗から順に疲弊し、潰れていく未来が容易に想像できるのです。


【理由2】経営を直撃する「損税」と「仕入税額控除」の罠

免税か非課税かで天国と地獄が変わる

飲食店経営者にとって、最も恐ろしいのが「仕入税額控除」の問題です。

これは専門的な話になりますが、店の生存に関わる最重要ポイントです。

消費税ゼロの制度設計には「免税(税率0%)」と「非課税(税対象外)」の2パターンがあります。

「免税」であれば、仕入れにかかった税金を取り戻すことができますが、「非課税」になってしまうと、仕入れで払った(とみなされる)税金を経費として引くことができません。この場合、飲食店は「仕入れ分の消費税控除」を受けられなくなり、その分を自腹で負担することになります。これが「損税」と呼ばれるものです。高市首相は「ゼロ税率(免税)」を示唆していますが、制度の細部が決まるまでは予断を許さない状況です。

仕入税額控除が消滅するメカニズムとは

仮に最悪のケースである「非課税」扱いになった場合、何が起きるのでしょうか。

通常、飲食店は「お客様から預かった消費税」から「仕入れ業者に支払った消費税」を差し引いた差額を納税します。

しかし、食料品が非課税になると、仕入れ時の税金はゼロ(または控除不可)になります。一方で、店舗の家賃、電気・ガス代、厨房機器、広告費などには相変わらず10%の消費税がかかり続けます。売上に対する10%の消費税は預かっているのに、仕入れで差し引ける控除額が激減するため、結果として手元に残る利益が減り、国に納める税金だけが跳ね上がるという「増税」状態に陥るのです。これが、飲食店が潰れると言われる財務的なカラクリです。


【理由3】仕入れ値は下がらない?業者との力関係と実質値上げ

消費税分がそのまま利益に?業者の値下げ拒否リスク

「消費税がゼロになるなら、仕入れ値も8%下がるはずだ」と考えるのが普通ですが、現実はそう甘くありません。ここに「力の論理」が働きます。

農家やメーカー、卸売業者もまた、肥料代や燃料費の高騰に苦しんでいます。彼らにとって、消費税ゼロは「価格を据え置くことで、実質的な値上げをして利益を確保するチャンス」になり得ます。法律上、消費税分を必ず値下げしなければならないという強制力はありません。元静岡大学教授の湖東京至氏も指摘するように、力関係の弱い飲食店が「税金分安くしてくれ」と交渉しても、「いや、ウチも苦しいからこの値段で」と言われれば、飲むしかないのが現実です。

納税額だけが激増する「板挟み」の恐怖

もし仕入れ業者が値下げに応じず、税込価格を据え置いた場合、飲食店はどうなるでしょうか。

仕入れコスト(税込総額)は変わらないのに、税務上は「仕入れにかかる消費税はゼロ」とみなされます。

すると、先ほどの仕入税額控除の計算において、差し引ける金額が減ってしまいます。つまり、「仕入れ値は安くならない(コスト高止まり)」のに「納める税金は増える(増税)」という、往復ビンタのような状態になります。試算では、年間数百万単位で納税額が増えるケースもあり、利益率の低い飲食店にとっては即死級のダメージとなりかねません。


【理由4】現場を疲弊させる事務負担増と資金繰り悪化

2年限定措置によるシステム改修の二重苦

今回の政策案で特に厄介なのが、「2年間限定」という時限措置である点です。飲食店は、制度開始時にレジや会計システムを「0%対応」に改修し、2年後の終了時には再び元に戻す改修を行わなければなりません。

最近のPOSレジは複雑化しており、設定変更だけでも業者への依頼コストが発生します。インボイス制度対応で疲弊した現場に、さらなるコストと手間を強いることになります。特に高齢オーナーが経営する小規模店では、「もうついていけない」と、このタイミングでの廃業を決断するきっかけになりかねません。

一括納税によるキャッシュフローの圧迫

資金繰り(キャッシュフロー)への影響も見逃せません。これまで食材仕入れのたびに支払っていた消費税分が、もし手元に残る形になったとしても、それは「利益」ではなく、後でまとめて国に払うための「預かり金」です。

しかし、日々の資金繰りに追われる自転車操業の店では、手元の現金を運転資金に使ってしまいがちです。そして決算期になり、これまで見たこともないような高額の消費税納付書が届き、納税資金が足りずに黒字倒産する・・・そんなリスクが極めて高くなります。「後払い」の怖さを甘く見てはいけません。


《総括》食料品消費税ゼロで飲食店が潰れる?

「食料品の消費税がゼロになる」と聞いて喜んでいるあなたも、その裏で起きる副作用を知っておくべきです。この政策が実行されると、あなたの街のお気に入りのレストランや定食屋が、次々と姿を消すかもしれません。

理由はシンプルです・・・スーパーで買えば消費税0円、お店で食べれば10%上乗せとなるからです。

この圧倒的な価格差が、経営が苦しい飲食店から客足を奪います。さらに、お店側は税制の仕組み上、今まで以上に高い税金を国に納めなければならなくなるリスクがあります。

「客は来ないのに、税金は増える」これが食料品消費税ゼロが飲食店にもたらす残酷な現実です。

私たちは安さを求める一方で、外食という「楽しみ」や「文化」を失う岐路に立たされています。

2026年、この政策がどのように実行されるか、そしてそれが私たちの生活空間をどう変えてしまうのか・・・単なる「お得情報」としてではなく、社会全体の課題として注視していく必要があります。


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